Letter 遺伝:ユダヤ人の全ゲノム構造 2010年7月8日 Nature 466, 7303 doi: 10.1038/nature09103 現代のユダヤ人は、民族的および宗教的な多数の共同体からなる集合体であり、世界各地の共同体のメンバーは、共有するさまざまな宗教的、歴史的および文化的伝統によって互いを識別している。歴史的証拠から、ユダヤ人の共通起源が中東にあり、その後の移住で、ヨーロッパ、アフリカおよびアジアに「ユダヤ人ディアスポラ」とよばれるユダヤ人共同体が確立されたと考えられている。この複雑な人口動態史は、ユダヤ人の遺伝的構造解析を試みるうえで特に難しい問題となっている。多くの遺伝学的研究によって、ユダヤ人の起源や、ユダヤ人共同体の間に広く認められる疾患を解明する手がかりが得られており、その中には、片親または両親から受け継がれたマーカーに注目した研究などが含まれる。しかしながら、ユダヤ人ディアスポラ共同体とその近隣集団という広い地理的範囲にわたる全ゲノム変異パターンの解析は、まだ行われていなかった。今回我々は、高密度ビーズアレイを用いて14のユダヤ人ディアスポラ共同体に属する個人の遺伝子多型解析を行い、それらの全ゲノム多様性パターンを、これまで未発表の25集団を含む69の旧世界非ユダヤ人集団のものと比較した。これらの標本は、ディアスポラにおけるユダヤ人集団と非ユダヤ人集団の間の包括的な比較解析を行うのに加え、中東および北アフリカの非ユダヤ人集団との比較も行うために、慎重に選択された。主成分分析およびstructure様分析から、中東の集団でこれまで知られていなかった遺伝的下部構造が明らかになった。ユダヤ人の標本のほとんどは、ドゥルーズおよびキプロスの標本と重複する著しく密なサブクラスターを形成するが、その他のレバントの集団、または対を成すディアスポラの受け入れ集団の標本とは形成しない。これとは対照的に、エチオピアのユダヤ人(ベタ・イスラエル)およびインドのユダヤ人(ベネ・イスラエルおよびコーチン)は、ベネ・イスラエルとレバントとの間に明確な父系性の関連があるにもかかわらず、それぞれ隣接するエチオピアおよびインド西部に原住する集団とクラスターを形成する。今回の結果は、中東の人々の変化に富んだ遺伝子構造を解明する手がかりとなり、ユダヤ人ディアスポラ共同体の大半の起源がレバントまでさかのぼることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る