Letter 物理:固体における電子スピンコヒーレンスを最適ダイナミカルデカップリングによって維持する 2009年10月29日 Nature 461, 7268 doi: 10.1038/nature08470 量子コンピューティングなどの将来技術に固体中の電子スピンの量子コヒーレンスを使用するためにまず重要なのは、ノイズの多い環境とのカップリングによるスピンデコヒーレンスの問題を克服することである。ダイナミカルデカップリングは、ストロボスコピックなスピン反転を使って環境とのカップリングを平均化し事実上ゼロにするものだが、量子ゲートなどの望まれるほかの機能と自然に統合できるので、特に有望なデコヒーレンス対処法である。スピン反転ごとにエラーが必然的に生じるため、所定レベルの精度のダイナミカルデカップリングを実現するために用いる制御パルスの数は最小限にすることが望ましい。そのような最適ダイナミカルデカップリング・シーケンスが、最近探究されてきている。しかし、固体系における最適ダイナミカルデカップリングの実験的実現は、依然として困難である。今回我々は、パルス電子常磁性共鳴を使って、照射処理したマロン酸結晶における電子スピンコヒーレンスを維持するのに最適なダイナミカルデカップリングを、50 Kから室温までの温度で実験的に実証している。7パルスの最適ダイナミカルデカップリング・シーケンスを用いて、スピンコヒーレンス時間を約30 µsまで延ばした。制御を行わなければスピンコヒーレンス時間は約0.04 µsに、1パルス制御では6.2 µsになるだろう。実験結果と微視的理論との比較によって、固体における妥当な電子スピンデコヒーレンス機構が特定された。最適ダイナミカルデカップリングは、窒素-空孔中心をもつダイヤモンドなど、ほかの固体系に応用できる可能性がある。したがって、これは室温の固体におけるスピンの量子コヒーレンス制御の基礎を築くものになるかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る