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細胞:キイロショウジョウバエでは特殊な細胞が性別と種別の標識付けを行う

Nature 461, 7266 doi: 10.1038/nature08495

社会的相互作用は個体による互いの識別に依存しており、そうした状況では、多くの生物が種や性を示すのに化学シグナルを用いている。クチクラの炭化水素シグナルは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)などの昆虫が、同種個体を他種個体と識別するのに使っている。またこれらの化合物は、同種内での求愛や交尾にも使われる。しかし、性別、種別の同定が共通の化学シグナル伝達機構によって結びついているのかについては、きちんと調べられていない。本論文では、単一の化合物が、キイロショウジョウバエの種内で雌であることを知らせるのに使われ、またキイロショウジョウバエと同胞腫との生殖隔離障壁を規定するのにも使われていることの直接的証拠を示す。遺伝子組み換え操作によって、このような化学シグナルの発現に必要な特殊化された細胞であるエノサイト(扁桃細胞)をなくして、クチクラの炭化水素を除去した。このエノサイトをもたない(oe)雌は、雄に一連の正常な求愛行動を起こさせ、求愛中の雄は野生型の雌よりもこのような雌のほうを選ぶことがわかった。さらに、野生型の雄がoeの雄に対して交尾を試みた。したがって、炭化水素をもたないショウジョウバエは強い性的誘引力を発揮する。未交尾の雌に、雄に対する忌避フェロモンであるcis-vaccenyl acetate(cVA)を投与すると、oe型の雌の交尾が野生型の雌に比べて著しく遅れた。このoe型と野生型の違いは、cVAと雌が作る対雄催淫物質(7Z,11Z)-ヘプタコサジエン(7,11-HD)の混合物をoe型に投与すると消失したことから、雌の催淫性化合物が雄忌避フェロモンの効果を弱めることがわかった。また、7,11-HDが異種との出会いにも重要な役割を果たしていることも明らかになった。キイロショウジョウバエのoeの雌には、ショウジョウバエ属の他種の雄も求愛し、オナジショウジョウバエ(D. simulans)の雄は例外なく交尾することから、種間障壁が消失していることが示された。しかし、oeの雌を7,11-HD処理すると種間障壁が復活するので、単一の化合物によって種別が示されていることがわかる。これらの結果は、クチクラの炭化水素によって制御される、性と種の識別のための共通の機構を明らかにしている。

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