海底の粗度(roughness)は世界中の海盆で大きく異なっており、海洋における熱の循環と混合の制御と、渦の力学的エネルギーの散逸に重要である。活動している大洋中央海嶺の解析から得られたモデルは、海洋底の粗度は大洋中央海嶺とマントルプリュームやコールドスポットとの局所的相互作用に加えて、海底拡大速度に依存し、片側拡大速度閾値である30〜35 mm yr−1以下でより粗度の高い海底が形成されることを示している。本論文では、白亜紀から新生代の海嶺斜面の海洋重力から得られた粗度、堆積層の厚さ、海底のアイソクロンおよび過去の拡大速度を全球にわたって解析した結果を示す。それにより、拡大速度と堆積層の厚さに関連した影響を取り除くと、5〜20 mGalの粗度の異常が残差として海底の広い帯状の地域に存在することがわかった。過去の拡大方向とアイソクロンの方向の関数として粗度をみると、観測された過剰な粗度のほとんどは拡大方向の傾きとは関係していないことがわかった。それは、この影響は拡大方向の傾きが極めて大きい(> 45°)比較的まれな場合に限定されているからである。白亜紀の大西洋の海底は、それ以前はパンゲア超大陸によって覆われていたマントルから形成され、マントルプリュームから離れていて粗度が異常に低く、拡大速度とは関係がない。この観測結果は、パンゲア超大陸の下の温度異常によって、ジュラ紀後期と白亜紀の大西洋の地殻が通常よりやや厚くなり、脆性破壊が減少し、より滑らかな海洋基盤の地形ができたためと考えられる。対照的に、太平洋大海膨の上に形成された海洋地殻はおそらく、ほんのわずかだけ温度が高いマントルが下にあり、交代作用を受けたリソスフェアを表していて、海洋基盤の粗度異常とは関連がない。この結果は、超大陸下と超海洋下ではマントル大規模上昇流の性質が根本的に異なり、海洋地殻集積に影響を与えていることを明らかにしている。