Letter

工学:合成「樹木」(synthetic tree)における負圧での水の蒸散

Nature 455, 7210 doi: 10.1038/nature07226

植物科学の分野では、蒸散(維管束植物を介する土壌から空気中への水の移動)は、受動的な吸い上げ機構によって起こると考えられている。この機構は、凝集-張力理論によって説明される。つまり、蒸発によって水が失われると、葉内の液体水の圧力が大気圧よりも低下する。この圧力低下によって、液体水が土壌から引き出され、木部を上って、水分補給が維持される。特筆すべきことに、木部内の水の絶対圧力は負であることが多く、つまり液体は張力を受け、蒸気相に対して熱力学的に準安定となっている。定性的には、この機構は合成ウイック(芯)を通して流体を駆動する機構と同じで、合成ウイックは熱伝達、燃料電池、携帯化学システム向けの技術における重要な要素である。定量的には、植物中で生じ流れを駆動する圧力差は、合成ウイックで生じる圧力差の100倍以上になりうる。本論文では、合成ヒドロゲル中に形成したマイクロ流体システムの設計と動作について報告する。この合成「樹木」(synthetic ‘tree’)は、植物の蒸散の主要な性質を備えている。すなわち、水蒸気相未飽和状態から液体相負圧状態への水の変換、大きな負圧(−1.0 MPa以下)下での液体水の安定化と流動、負圧下での液体水の蒸発に伴う連続的熱伝達、および未飽和水供給源からの液体水の連続的抽出である。今回の開発結果は、張力下の水の工学的利用や液体状態の水に関する新しい実験的研究の機会を開くものである。

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