Letter 医学:非ヒト霊長類を用いたハンチントン病トランスジェニックモデルの開発 2008年6月12日 Nature 453, 7197 doi: 10.1038/nature06975 非ヒト霊長類は、ヒト疾患モデルとして重要であり、治療法の開発にも役立つ。しかし、非ヒト霊長類を用いてヒト疾患のトランスジェニックモデルを作製する研究はほとんど報告されていない。ハンチントン病(HD)は、常染色体優性遺伝神経変性疾患であり、運動機能障害、認知機能低下および精神障害を特徴とし、発症後10〜15年以内に患者は死に至る。HDの原因は、ヒトのハンチンチン(HTT)遺伝子の第1エキソンにおけるシトシン-アデニン-グアニン(CAG、グルタミンへ翻訳される)トリヌクレオチドリピートの伸長である。伸長ポリグルタミン(polyQ)をもつ変異HTTは、脳と末梢組織で広く発現するが、それによって選択的に生じる神経変性は脳の線条体と皮質に最も顕著にみられる。HDのげっ歯類モデルは既に作製されているものの、これらのモデルは、HD患者に認められる脳の変化並びに行動的特徴が十分類似しているとはいえない。ヒトと高等霊長類は生理的、神経的、遺伝的類似性が強いために、ヒトの生理や疾患の研究にサルは非常に有用なモデルとなる。我々はポリグルタミン伸長HTTを発現するアカゲザルでHDのトランスジェニックモデルの開発を行っており、今回その成果について報告する。HDトランスジェニックサルの脳には、核内封入体およびニューロピルの凝集体など、HDの典型的な特徴が認められた。さらに、このトランスジェニックサルは、失調症や舞踏病などのHDの重要な臨床的特徴を示した。HDトランスジェニックサルモデルにより、HDの基礎となる生物学的性質の解明が進み、治療法への道を開かれるかもしれない。さらに本研究のデータは、HDやおそらく他のヒト遺伝病でも、有用性の高い非ヒト霊長類モデルの作成が可能であることを示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る