Letter 細胞:性決定には、Sox9特異的エンハンサーに対するSRYとSF1の相乗作用がかかわっている 2008年6月12日 Nature 453, 7197 doi: 10.1038/nature06944 哺乳類のY染色体は、Sryという1個の遺伝子の作用によって優性の雄性決定因子として働く。性決定におけるこのSry遺伝子の役割は、性的両能性をもつ初期の生殖腺から、卵巣ではなく精巣を発生させることである。Sryは、誘導シグナルがなければ濾胞細胞になるはずの支持細胞前駆体からセルトリ細胞への分化を引き起こすことによって、これを行う。関連する常染色体遺伝子Sox9も、マウスやヒトでの機能喪失変異から、同様にセルトリ細胞の分化に不可欠であることが知られている。また、XX生殖腺でのSox9の異常な発現によって、Sryがなくても雄への発生が可能となる。これらの遺伝学的データと、SRYの発現開始直後にセルトリ細胞前駆体でSox9が上方制御されるという知見とを考え合わせ、Sox9がSRYによって直接調節されているのではないかと考えられていた。しかし、SRYの作用がどのような仕組みでSox9の発現に影響を与えるのかはわからなかった。今回我々は、SRYが、マウスのSox9生殖腺特異的エンハンサー内にある複数の要素に結合することを明らかにする。このときSRYは、核内オーファン受容体の1つであるSF1(steroidogenic factor 1、Nr5a1(Sf1)遺伝子によってコードされる)と共に結合する。変異研究、同時導入研究、性転換研究のすべてから、SF1とSRYが協同してSox9を上方制御し、次いでSRYによる作用が終わった後も、SOX9がSF1と共にエンハンサーに結合して、自身の発現維持を助けるという、フィードフォワード型の自己増強経路の存在が示唆される。これらの知見によって、性決定を制御する分子レベルの機構とその進化の過程、さらに性転換例では、この機構にどのような異常が起こるのかを解明する道が開かれた。 Full Text PDF 目次へ戻る