Letter 生理:金属の高度集積の進化には、HMA4のシス調節の変化と3倍化が必要であった 2008年5月15日 Nature 453, 7193 doi: 10.1038/nature06877 生物種特異的な形質の進化の原因となる変異については、ほとんど解明されていない。金属を高度に集積する植物ハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri)は、重金属汚染土壌で生息できる珍しい能力をもち、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の姉妹種で極限環境植物であることから、適応研究の強力なモデルとなっている。ハクサンハタザオは自然に金属を蓄積し、乾燥バイオマスで亜鉛とカドミウムの葉中濃度がそれぞれ2.2%、0.28%という高濃度になっても耐えられる。トランスクリプトーム研究に基づき、ハクサンハタザオでの金属の高度集積に関係するとされる遺伝子の候補がこれまでに30個以上明らかにされており、これらはシロイヌナズナよりもハクサンハタザオで多く発現している。これらの遺伝子の一部は4〜24 cMの広い染色体領域に位置し、ZnとCdに対する強い耐性と共分離することが、遺伝学的に判明している。しかし、金属の高度集積や耐性亢進に個々の候補遺伝子が寄与していることを示すために必要な、in planta機能喪失実験は今日まで行われていない。今回我々は、RNA干渉を用いてHMA4(HEAVY METAL ATPASE 4)の発現を下方制御することにより、ハクサンハタザオにみられるZnの高度集積やCd、Znに対する完全な耐性が、金属ポンプHMA4に依存していることを明らかにする。金属の高度集積にかかわる多数の遺伝子の高レベル発現を支配するのは、おそらく広い範囲に働くトランス調節因子であろうとの予測に反し、ハクサンハタザオにおけるHMA4遺伝子発現の亢進は、シス調節配列の修飾と遺伝子のコピー数増加の両方が組み合わさったためであることが、シロイヌナズナとの比較から明らかになった。シロイヌナズナにハクサンハタザオのHMA4遺伝子を導入すると、木部道管へのZnの分配と、Zn高度集積植物に特徴的なZn欠乏応答遺伝子の構成的転写亢進が再現される。今回の結果は、自然選択された複雑な極限環境適応形質の進化に、シス調節因子の変異と遺伝子コピー数の増加が重要な役割を果たしていることを示している。金属の高度集積を実現する自然界の戦略の解明によって、金属汚染土壌の浄化や生物の有用形質の強化のための合理的な技術設計が可能になるだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る