Letter 物理:原子ボーズ-ハバード系における、位相スリップに誘起された散逸 2008年5月1日 Nature 453, 7191 doi: 10.1038/nature06920 位相スリップは多くのボーズ粒子系の散逸を支配しており、超流体ヘリウムの臨界速度や超伝導細線における抵抗の発生を決定する。技術的関心は主に、量子位相スリップ接合を使った標準器など、ナノスケールの超伝導回路素子などの応用に向けられている。高温の熱ゆらぎから生じる位相スリップはよく理解されているが、小さいスケールの超伝導体における位相スリップの役割については、まだ議論が続いている。固体では、制御できない雑音源や無秩序性などの問題があるため、位相スリップの研究と技術応用は容易ではない。本論文では、光格子中にトラップされた超低温原子の輸送を実験的に調べることで、清浄で特性がよくわかったボーズ-ハバード系に位相スリップから散逸が生じることを示す。我々は、既存の研究とは異なり、不安定性に影響されない、三次元ボーズ-ハバードモデルで記述される低速度領域を調べ、温度が散逸の強さに与える効果を測定した。放物線形の閉じ込めポテンシャルの中での原子運動の減衰速度(固体の電気抵抗に対応する量)は、有限の減衰を取り入れた絶対零度のモデルでうまく説明することができる。この低温の挙動は位相スリップの量子トンネリングの理論と合い、高温では、位相スリップの熱活性化への転移と合うクロスオーバーを示すという明瞭な証拠が得られた。位相スリップに伴う渦や渦輪と似た運動から生じる特徴も、飛行時間画像化で観測された。これらの結果から、超流体系における位相スリップの役割が明らかになる。今回の結果は、薄膜で観測されている金属相の起源を理解する上でも重要であると思われ、また、このボーズ-ハバードモデルを修正してボソン散逸の理論を検証する試験台にも使える。 Full Text PDF 目次へ戻る