Letter 細胞:トポイソメラーゼIによるDNAの解きほぐしを妨げる抗癌剤 2007年7月12日 Nature 448, 7150 doi: 10.1038/nature05938 化学療法薬の癌細胞を殺す活性を高めようとしても、作用機序がはっきりわからないためにうまくいかないことが多い。トポテカンなどのカンプトテシン類は、DNAの超らせんを除去する働きをする酵素DNAトポイソメラーゼIを阻害して、細胞死を引き起こす。トポテカンは、トポイソメラーゼとDNAの共有結合性複合体を安定化して、これをDNA複製フォークにとっての障害物にしてしまうと考えられている。今回我々は、単分子ナノ操作技術を用いて、トポテカンの存在下でのヒトトポイソメラーゼIの動態を観察した。その結果、1個のトポテカン分子の結合と解離をリアルタイムで検出し、トポテカンが引き起こすトポイソメラーゼのDNA上での停止を定量化できた。意外なことに、トポテカンがトポイソメラーゼによるDNAの解きほぐしを著しく妨げることもわかった。この作用は、負の超らせんよりも正の超らせん(巻き過ぎ)の除去で顕著だった。このことから、トポイソメラーゼIに対するカンプトテシンの阻害作用によって転写や複製の際に正の超らせんが集積するだろうと予測され、出芽酵母を使ったin vivo実験でそれが確認された。しかし、触媒活性をもつカンプトテシン耐性トポイソメラーゼ変異体を発現する細胞に薬剤を投与しても、正の超らせんは誘導されなかった。単分子操作実験とin vivo実験のデータを総合すると、複製装置の前方に正の超らせんが集積することによって、致死的になりうるDNA損傷が生じるというのが、カンプトテシンの細胞毒性の機序と考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る