Letter 進化:アカシカでは適応度に関して雌雄で拮抗する遺伝的変動がみられる 2007年6月28日 Nature 447, 7148 doi: 10.1038/nature05912 進化理論からは、選択作用の結果として自然個体群内の遺伝的変動が枯渇すると予測されているが、それにもかかわらず、方向性選択あるいは安定化選択の下にある多くの形質には遺伝的変動が多く存在している。進化遺伝学では総じて、突然変異と選択の均衡につながる仕組みでこのパラドックスを説明しようとしている。しかしながら、突然変異と選択の均衡の下で平衡している遺伝的変動の理論的予測値は、観察値よりも低いことが一般的であり、この理由はわかっていない。この議論において、遺伝的変動を維持する上で雌雄で拮抗する選択がどのような役割を果たしうるかについては、ほとんど注意を払われてこなかった。これは、雌雄異体の生物では雌雄で拮抗する選択が普遍的であることを考えると意外である。適応度に関連する遺伝子座では、ある与えられた遺伝子型が雌雄で逆方向の選択を受ける可能性がある。そのような雌雄で拮抗する選択は、それがない場合に予測されるような雄と雌の適応度の間にみられる正の遺伝的相関を減少させるはずである。理論と実験データの両方から、同一種の雌雄は互いに異なる遺伝的最適値をもっている可能性が示唆されているが、野生個体群でこれを支持するデータはまだ少ない。今回我々は、アカシカ(Cervus elaphus)の長期研究データを用い、1つの自然個体群において雌雄で拮抗する適応度変動に関する証拠を提出する。相対的に適応度の高い雄のアカシカは、平均して、相対的に適応度の低い娘の父親となっていることがわかった。これは、雌雄の適応度推定値の間に負の遺伝的相関があるためだった。特に、雌の適応度に低い繁殖価をもたらす雄が、選択上有利であった。我々の結果は、雌雄で拮抗する選択は、雌雄それぞれにとって最適な遺伝子型の間にトレードオフ関係を生じさせうることを実証している。この仕組みは、自然個体群における選択作用および遺伝的変動の維持に大きな影響をもっているだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る