Letter 気候:熱帯低気圧が引き起こす海洋熱ポンプ現象の観測的証拠 2007年5月31日 Nature 447, 7144 doi: 10.1038/nature05785 海洋内の混合過程は、海洋のもつ熱や栄養分を輸送し蓄える能力と密接な関係があるため、全球の気候と海洋生物圏に影響を及ぼす。観測によって、特定の過程に伴う海洋上層の混合の規模はある程度まで絞り込まれたが、直接測定された混合速度は収支解析から推測される値よりもかなり小さく、他の過程が重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。熱帯低気圧に伴う風が海洋上層において局所的混合をもたらすことは知られているが、熱帯低気圧が全球的規模で混合の主要因となるとする仮説は、これまで検証されていなかった。本論文では、暴風雨の通過前後で海洋表面水温を比較して、熱帯低気圧が海洋表面水温に及ぼす影響を計算し、さらにこの結果を用いて、熱帯低気圧の活動により引き起こされる鉛直混合を計算した。熱帯低気圧は、熱帯域の海洋表層の大規模な冷却と鉛直混合の原因となっていることが示された。混合されて下方に送られる熱の全量が、両極に向かう熱輸送と釣り合っていると仮定すると、海洋の熱輸送の最大値の約15パーセントが熱帯低気圧によって引き起こされた鉛直混合に伴うものである可能性が算出される。さらに、今回の解析では、こうした混合の規模が海表面水温と強く関連することが明らかになった。これは、将来起こる熱帯域の海表面水温の変化が、海洋循環と海洋の熱輸送に、現在の気候モデルでは考慮されていない重要な影響を及ぼす可能性を示している。 Full Text PDF 目次へ戻る