Letter 物理:反転非対称性に引き起こされた表面のキラル磁気秩序 2007年5月10日 Nature 447, 7141 doi: 10.1038/nature05802 キラリティは興味深い現象で、それ自身はそれとなく現れる。例えば、生化学では生体分子で片方だけの掌性が観察され、素粒子物理学では電弱相互作用で荷電とパリティの対称性の破れが起こる。凝縮物質では、磁性材料が片方だけの掌性、あるいはホモキラルスピン構造がみられることがある。これは、反転非対称な結晶場中での電子のスピン-軌道散乱から生じるジャロシンスキー・守谷相互作用が原因となって起こると考えられる。この効果は、バルク金属ではそれら結晶が反転対称になるため、通常は問題とされない。しかし、低次元系は構造反転対称性を欠き、そのためホモキラルなスピン構造が生じることがある。本論文では、タングステン(110)基板上のマンガンの単一原子層に特有なキラリティの磁気秩序を観測した結果を報告する。スピン分極走査型トンネル顕微鏡法により、隣接するスピンは完全に反強磁性ではなくて少し傾斜しており、その結果、周期が約12 nmのスピン螺旋構造が生じることが明らかになった。定量的な理論により、このキラル秩序はジャロシンスキー・守谷相互作用によって生じて、左回転するスピンサイクロイドができることを示す。これらの結果は、低次元の磁性体でこの相互作用が重要であることを確証している。ナノスケール磁性体のキラリティは、電子の電荷ではなくスピンを使ってデータの伝送と操作が行われるスピントロニクスデバイスで重要な役割を果たす。例えば、キラルな磁気構造中を流れるスピン分極流はこの磁気構造にスピントルクを及ぼし、その結果、さまざまな磁化の励起、あるいは操作を引き起こし、またマイクロ波放出、磁化スイッチング、あるいは磁気モーターができる。 Full Text PDF 目次へ戻る