Letter 化学:力学的な力で反応経路にバイアスをかける 2007年3月22日 Nature 446, 7134 doi: 10.1038/nature05681 化学反応の過程において、反応物分子が生成物に変わるにはエネルギー障壁を乗り越えなければならない。この過程に必要なエネルギーは通常、熱、光、圧力や電位から得られる。これらは、基底状態のポテンシャルエネルギー面上にある反応物の分布状態を変えるか、励起状態のポテンシャルエネルギー面へと移動させる働きによって、エネルギー障壁を越える動きを促進する。反応を開始し加速するための、これらとは根本的に異なる方法として、力を使って反応分子を反応座標の特定方向に変形させるというやり方がある。実際に、力学的な力によるポリマー中の共有結合の活性化が示されたことはあるものの、通常は鎖の切断という結果に終わる。今回我々は、力学的に敏感な化学基が、ポリマー溶液への超音波照射により発生した力学的な力を利用可能にし、これにより転位反応が加速され反応経路にバイアスがかかり、純粋な熱反応や光誘起反応では得られない生成物が作られることを示す。1,2-二置換ベンゾシクロブテンのトランス異性体とシス異性体を長いポリマー鎖内に置くと、超音波に誘起された電子環状開環を受け、それぞれ形式的には同旋的過程あるいは逆旋的過程を経て、同一の生成物を生じることが見いだされた。これは、光のみまたは熱のみによる反応開始と対照的であり、光または熱による場合は異性体が相互排他的な経路をたどり異なる生成物を生じる。したがって、超音波によって生じた力学的な力は、これがない場合には禁制または低速となる反応過程が温和な条件下で進行するように、ポテンシャルエネルギー面の形状を変えうることが明らかである。このとき、力学的な力の方向特異的な性質によって、化学的または物理的パラメーターの調節によって実現される反応制御とは根本的に異なる反応制御が実現される。我々の系における転位は鎖切断の前に起こるため、今回報告した作用によって、力学的な応力場によって活性化される材料の開発が可能になるかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る