Letter

気候:熱帯の水循環における雨の蒸発と大陸上の対流の重要性

Nature 445, 7127 doi: 10.1038/nature05508

大気中の水分の循環は地球の気候システムの重要な側面の1つであるが、大気の湿度を決める過程についてほとんどわかっていない。例えば、雨の直接蒸発は雲の熱収支と水分収支に大きく影響するが、この過程の観測はほとんど行われていない。同様に、局所的な蒸発や海洋起源の湿気が陸上の大気中の水分に与える相対的な寄与もはっきりしていない。水蒸気の同位体は軽いものほど蒸発しやすく、重いものほど凝縮しやすい。一方、海水の同位体組成は既知である。本論文では、こうした情報を地球観測衛星Auraに搭載された対流圏放射分光計(TES)から得られた対流圏水蒸気の同位体組成の全球観測データと組み合わせて、降水や大気中の水蒸気量の観測からはうまく特定できない大気の水循環の性質について調べた。熱帯の雲近傍の水蒸気同位体組成を測定した結果、降雨の蒸発が対流圏下層の湿度に大きく影響し、対流雲の近傍では、通常は20%、最大では50%に達する割合で降雨が蒸発していると考えられた。熱帯の大陸上では、対流圏水蒸気の同位体特徴が降水の同位体の特徴と異なっており、これは、海洋を起源とする水蒸気の対流と蒸発散が主要な水分源であることを示唆している。我々の観測によって、現在の水循環の強さを見積もることが可能となり、将来起こるいかなる変化を特定する際にも役立つだろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度