NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、2023年も最高の天体画像を撮影して私たちを驚かせてくれました。地上では写真家や研究者たちが、未知の生物種や、顕微鏡によらなければ見ることができない光景を捉えました。宇宙塵から空飛ぶヤモリまで、Nature編集部の目を釘付けにした写真を紹介します。
宇宙のモネジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によるこの神秘的な画像は、地球から最も近い星形成領域であるへびつかい座ρ分子雲領域で恒星が形成される様子を捉えたものだ。えも言われぬ質感は、印象派の絵画を思わせる。若い星々から噴出する水素ガスのジェット(赤)は、星間ガスを明るく照らし出している。その下に見えている輝く「洞穴」は、1つの若い星から吹き出す恒星風によって形成されたもの。 Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Klaus Pontoppidan (STScI) Image Processing: Alyssa Pagan (STScI) 終末のオレンジ色 2023年6月、米国北東部は、激しい森林火災が多発するカナダから流れ込んでくる煙に窒息しかけていた。ニューヨークのブルックリン橋の背景の空も、不気味なオレンジ色に染まった。科学者によると、気候変動の影響で、高温で、乾燥し、風の強い天気が増えているという。 Credit: Dave Sanders/New York Times/Redux/eyevine 溶けゆく氷の警告 北極圏のノルウェー領ノードアウストランネ島のアウストフォンナ氷帽で、融解した水が海に流れ落ちる様子。この写真は、2023年ドローン写真賞自然部門の第1位に輝いた。写真家のThomas Vijayanは、「私は過去にも数回ここを訪れていますが、この写真を撮影した2022年6月には早くも海氷が溶けていて、暗澹(あんたん)たる気持ちになりました」と語った。 Credit: Thomas Vijayan 太陽のヘビ 天体写真家のEduardo Schaberger Poupeauが太陽の表面に浮かぶ巨大なヘビのようなフィラメントを捉えた写真は、2023年天文写真家コンテストの太陽部門で第1位となった。太陽フィラメントは太陽表面から噴出したプラズマからなり、磁場によって細長い形をとっている。 Credit: Eduardo Schaberger Poupeau 種をまくもの ショウジョウバエの精子の長さは2 mmもあり、自然界で最も長い部類に入る。精巣の中で成長するショウジョウバエの精子を捉えたこの画像は、2023年MITコッホ研究所写真賞を受賞した。個々の成熟した精子(青)は幹細胞(上)として始まり、伸長してゆく。白いものは細胞核。赤と黄色は、精子の発生に不可欠なRNAの発現を示している。 Credit: Jaclyn Fingerhut, Yukiko Yamashita - MIT Department of Biology, Whitehead Institute はじめまして! 2023年、科学者たちは新種の空飛ぶヤモリGekko mizoramensisを発見した。このヤモリはインド北東部のミゾラム州に生息していて、脚や足にある翼のようなフラップを使って森の木から木へと滑空する。今回の発見は、インド北東部の動植物についてはほとんど明らかになっておらず、科学者が知らない種がまだまだたくさん潜んでいる可能性があることを示唆している。 Credit: Lal Muansanga スノーフレーク酵母 星々をちりばめたような酵母クラスターの写真は、多細胞生物の進化を探る実験において撮影されたもの。研究者たちはスノーフレーク酵母の中から大型の細胞を選択していくことで、枝分かれした巨大な塊を形成させることに成功した。 Credit: Anthony J. Burnetti 渦巻くサイクロン NASAの木星探査機ジュノーは、木星の周りを54回目に周回したときに、木星の北極を取り巻く嵐をクローズアップで撮影した。市民科学者のBrian Swiftは、そのうちの1枚の画像を処理し、サイクロンを強調したハイコントラスト画像を作った。 Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Brian Swift 漂流 この愛らしいアオイガイ属(Argonauta sp.)のタコは、フィリピン沖の太平洋の海中で木の棒にヒッチハイクしていた。タコの周囲でカメラのライトを浴びてきらきらと輝いているのは、火山噴火による堆積物。 Credit: Jialing Cai/Ocean Photographer of the Year シロップの鋭いエッジ シロップは常にドロドロしているわけではない。結晶化したシロップを偏光顕微鏡下で倍率25倍で観察すると、ぱりっとした層状の構造が見える。この不思議な写真は2023年ニコンスモールワールド顕微鏡写真コンテストで入賞した。 Credit: Dr. Diego García/Courtesy of Nikon Small World ロケットを印刷 2023年3月、レラティビティー・スペース社(Relativity Space、米国カリフォルニア州ロングビーチ)のロケット「テラン1(Terran 1)」が初めて打ち上げられ、フロリダの夜空を明るくした。テラン1のほとんどの部品は3Dプリンターで製作されている。 Credit: Relativity/John Kraus
宇宙のモネジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によるこの神秘的な画像は、地球から最も近い星形成領域であるへびつかい座ρ分子雲領域で恒星が形成される様子を捉えたものだ。えも言われぬ質感は、印象派の絵画を思わせる。若い星々から噴出する水素ガスのジェット(赤)は、星間ガスを明るく照らし出している。その下に見えている輝く「洞穴」は、1つの若い星から吹き出す恒星風によって形成されたもの。 Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, Klaus Pontoppidan (STScI) Image Processing: Alyssa Pagan (STScI)
終末のオレンジ色 2023年6月、米国北東部は、激しい森林火災が多発するカナダから流れ込んでくる煙に窒息しかけていた。ニューヨークのブルックリン橋の背景の空も、不気味なオレンジ色に染まった。科学者によると、気候変動の影響で、高温で、乾燥し、風の強い天気が増えているという。 Credit: Dave Sanders/New York Times/Redux/eyevine
溶けゆく氷の警告 北極圏のノルウェー領ノードアウストランネ島のアウストフォンナ氷帽で、融解した水が海に流れ落ちる様子。この写真は、2023年ドローン写真賞自然部門の第1位に輝いた。写真家のThomas Vijayanは、「私は過去にも数回ここを訪れていますが、この写真を撮影した2022年6月には早くも海氷が溶けていて、暗澹(あんたん)たる気持ちになりました」と語った。 Credit: Thomas Vijayan
太陽のヘビ 天体写真家のEduardo Schaberger Poupeauが太陽の表面に浮かぶ巨大なヘビのようなフィラメントを捉えた写真は、2023年天文写真家コンテストの太陽部門で第1位となった。太陽フィラメントは太陽表面から噴出したプラズマからなり、磁場によって細長い形をとっている。 Credit: Eduardo Schaberger Poupeau
種をまくもの ショウジョウバエの精子の長さは2 mmもあり、自然界で最も長い部類に入る。精巣の中で成長するショウジョウバエの精子を捉えたこの画像は、2023年MITコッホ研究所写真賞を受賞した。個々の成熟した精子(青)は幹細胞(上)として始まり、伸長してゆく。白いものは細胞核。赤と黄色は、精子の発生に不可欠なRNAの発現を示している。 Credit: Jaclyn Fingerhut, Yukiko Yamashita - MIT Department of Biology, Whitehead Institute
はじめまして! 2023年、科学者たちは新種の空飛ぶヤモリGekko mizoramensisを発見した。このヤモリはインド北東部のミゾラム州に生息していて、脚や足にある翼のようなフラップを使って森の木から木へと滑空する。今回の発見は、インド北東部の動植物についてはほとんど明らかになっておらず、科学者が知らない種がまだまだたくさん潜んでいる可能性があることを示唆している。 Credit: Lal Muansanga
スノーフレーク酵母 星々をちりばめたような酵母クラスターの写真は、多細胞生物の進化を探る実験において撮影されたもの。研究者たちはスノーフレーク酵母の中から大型の細胞を選択していくことで、枝分かれした巨大な塊を形成させることに成功した。 Credit: Anthony J. Burnetti
渦巻くサイクロン NASAの木星探査機ジュノーは、木星の周りを54回目に周回したときに、木星の北極を取り巻く嵐をクローズアップで撮影した。市民科学者のBrian Swiftは、そのうちの1枚の画像を処理し、サイクロンを強調したハイコントラスト画像を作った。 Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Brian Swift
漂流 この愛らしいアオイガイ属(Argonauta sp.)のタコは、フィリピン沖の太平洋の海中で木の棒にヒッチハイクしていた。タコの周囲でカメラのライトを浴びてきらきらと輝いているのは、火山噴火による堆積物。 Credit: Jialing Cai/Ocean Photographer of the Year
シロップの鋭いエッジ シロップは常にドロドロしているわけではない。結晶化したシロップを偏光顕微鏡下で倍率25倍で観察すると、ぱりっとした層状の構造が見える。この不思議な写真は2023年ニコンスモールワールド顕微鏡写真コンテストで入賞した。 Credit: Dr. Diego García/Courtesy of Nikon Small World
ロケットを印刷 2023年3月、レラティビティー・スペース社(Relativity Space、米国カリフォルニア州ロングビーチ)のロケット「テラン1(Terran 1)」が初めて打ち上げられ、フロリダの夜空を明るくした。テラン1のほとんどの部品は3Dプリンターで製作されている。 Credit: Relativity/John Kraus
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翻訳:三枝小夜子
Nature ダイジェスト Vol. 21 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2024.240230