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ヒトのパンゲノム参照配列が得られた

遺伝的多様性をグラフで記述する

参照ゲノムはゲノム解析に必須の座標系である。しかし、現在、科学者がヒトを研究する際に参照しているのは、ヒトゲノムのドラフト配列1と、T2T-CHM13と呼ばれるギャップがない完全版2で、どちらもほぼ1人のゲノムに由来している(2022年9月号「正確かつ完全なヒトゲノム塩基配列が完成」参照)。このような「直線的」なゲノム配列では、ヒトの遺伝的多様性を適切に表現することはできない。このような多様性は、分岐と合流の経路を有するグラフ理論に基づいたシステムを使うことで、より正確に記述できる。Nature 2023年5月11日号の312ページでは、ヒトパンゲノム参照コンソーシアム(HPRC)が初めてのヒトのパンゲノム参照配列(複数個体のゲノム配列を1つに集積し、単一のデータとして構築したものをパンゲノムと呼ぶ)について報告している3

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翻訳:藤山与一

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 8

DOI: 10.1038/ndigest.2023.230836

原文

Human pangenome supports analysis of complex genomic regions
  • Nature (2023-05-11) | DOI: 10.1038/d41586-023-01490-3
  • Arya Massarat & Melissa Gymrek, Brian McStay & Hákon Jónsson
  • Arya Massaratは、カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国ラホヤ) バイオインフォマティクス・システム生物学大学院課程に在籍。Melissa Gymrekは、同校医学部、計算機科学・計算機工学部、医療情報学部に所属。Brian McStayは、ゴールウェイ大学(アイルランド)染色体生物学センターに所属。Hákon Jónssonは、デコード・ジェネティクス社(deCODE genetics、アイスランド・レイキャビク)に所属。

参考文献

  1. Lander, E. S. et al. Nature 409, 860–921 (2001).
  2. Nurk, S. et al. Science 376, 44–53 (2022).
  3. Liao, W.-W. et al. Nature 617, 312–324 (2023).
  4. Sherman, R. M. et al. Nature Genet. 51, 30–35 (2019).
  5. Ebert, P. et al. Science 372, eabf7117 (2021).
  6. Guarracino, A. et al. Nature 617, 335–343 (2023).
  7. Vollger, M. R. et al. Nature 617, 325–334 (2023).
  8. McStay, B. Annu. Rev. Genom. Hum. Genet. https://doi.org/10.1146/annurev-genom-101122-081642 (2023).
  9. Fiddes, I. T. et al. Cell 173, 1356–1369 (2018).