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神経変性疾患のCRISPR–Cas9:ヒト細胞および初代ニューロンにおけるCRISPR–Cas9スクリーニングからC9ORF72ジペプチドリピートタンパク質の毒性を調節する因子が明らかになる

Nature Genetics 50, 4 doi: 10.1038/s41588-018-0070-7

C9ORF72遺伝子の6塩基反復配列の伸長は、筋萎縮性側索硬化症および前頭側頭型認知症(c9ALS/FTD)の最もよく見られる原因である。この塩基反復配列の伸長は、ジペプチドリピート(DPR)タンパク質に翻訳される。このタンパク質は凝集傾向があり、神経変性に関与する可能性がある。本論文では、CRISPR–Cas9系を用いて、ヒト細胞においてC9ORF72のDPR毒性を抑制する因子および増強する因子について、ゲノム規模での遺伝子ノックアウトスクリーニングを行った。また、初代マウスニューロンにおいて二次的にCRISPR–Cas9スクリーニングを行うことで、ヒットした遺伝子を確認した。これらにより、DPR毒性の調節に強く影響する因子が明らかになった。それらの遺伝子産物は、核と細胞質間の輸送、小胞体(ER)、プロテアソーム、RNAプロセシング経路、クロマチン修飾において機能した。調節因子のうちの1つであるTMX2は、ニューロンにおいてC9ORF72 DPRによって引き起こされるERストレスのシグネチャーを調節し、また、C9ORF72 ALSの患者由来のヒト誘導運動ニューロンの生存を改善した。我々の結果を総合すると、神経変性疾患の機構を明らかにする際にCRISPR–Cas9スクリーニングが有効であることが実証された。

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