28Oの初観測で示された魔法性の消失
宇宙の目に見える全ての物質は原子で構成されており、原子は中心にある原子核とその周りを回る電子からなる。原子核はさらに、陽子と中性子で構成されており、これらは異なるエネルギーを持つ複数の軌道(殻)を占有している1,2。陽子や中性子が1つの殻を完全に満たし、その殻が大きなエネルギーギャップによって次の殻から隔てられていると、原子核は陽子や中性子を極めて強く束縛した状態となり、安定な性質を示す。このときの陽子や中性子の数は「魔法数」と呼ばれ、陽子数と中性子数が共に魔法数の原子核は「二重魔法数核」と呼ばれる。8個の陽子と20個の中性子を持つ酸素(O)の同位体「酸素28(28O)」は、長く二重魔法数核の候補と考えられてきたが、これまでは観測が難しかった。そんな中、東京工業大学の近藤洋介(こんどう・ようすけ)をはじめとする国際共同研究チーム3はこのたび、複数の最先端技術を集結させることで28Oの初観測に成功し、この同位体がほんの一瞬しか存在せず、すぐに束縛核である酸素24(24O)と4個の中性子に崩壊することをNature 2023年8月31日号965ページで報告した。観測された非束縛状態は「共鳴」として知られるもので、今回の結果は、中性子が非常に過剰な原子核において20が本当に中性子の魔法数なのか、疑問を投げ掛けている。
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翻訳:藤野正美
Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 12
DOI: 10.1038/ndigest.2023.231247
原文
Heaviest oxygen isotope is found to be unbound- Nature (2023-08-31) | DOI: 10.1038/d41586-023-02485-w
- Rituparna Kanungo
- セント・メアリーズ大学(カナダ)に所属。
参考文献
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