Where I Work

Nathalie Cabrol

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200552

原文:Nature (2019-12-03) | doi: 10.1038/d41586-019-03706-x | Where I Work: Nathalie Cabrol

Josie Glausiusz

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Andrea Frazzetta/INSTITUTE.

自分のことは「地に足が着いた神秘主義者」だと思っています。砂漠の中にいると、そう感じるのです。この宇宙を理解し、生命探査の手法を見いだそうと努力しているのが「地に足が着いている」の部分で、「神秘主義者」の部分は、宇宙に心をさまよわせるのを恐れないところです。

私は惑星科学を専門とする宇宙生物学者です。初期の火星に似た環境を調べています。当時の火星には、生命が存在できた可能性があります。私のチームは、35億年前の火星に似た、極めて過酷な環境で生きる生物の分布と存在量を明らかにして、強烈な紫外線が降り注ぐ環境で生物がどのように生き抜いてきたかを突き止めようとしています。そして、このような生物を検出し、同定する方法を探っています。

私は南米アンデス山脈の高原、アルティプラノの不毛な大地を愛しています。砂漠では自分自身と向かい合わなければなりません。他に何もないからです。砂漠は考え事をするのに必要な空間を与えてくれます。制限も制約も境界もありません。

2019年の秋に、その南西端に当たるチリのサラル・デ・パホナレスを訪れ(写真)、微生物の分布パターンの理解に重点を置いた調査をしました。生物の分布は本質的にフラクタル的で反復性がありますが、始まりのパターンを理解する必要があります。私たちは、極限微生物をどこで探せばよいかを読み解く方法を学んでいるところです。それが分かれば、将来の火星ミッションに応用できます。

2006年に、チリとボリビアの国境にあるリカンガブール山の火口湖でスキューバダイビングをしていたときのことです。私は完全に透明な水の中にいました。水の色は薄い青から濃い青になり、水中に差し込む光の筋が1本1本くっきりと見えました。突然、私と湖の間の境界が消え去ったような気がしました。安らぎだけがありました。

科学の世界では理由を見つけなければなりません。私たちは常に「なぜ?」「どのように?」「何が?」「いつ?」を探っています。けれどもあの瞬間には、時間も空間もありませんでした。私は湖に受け入れられ、湖と私の間に隔たりはありませんでした。

(翻訳:三枝小夜子)

Nathalie CabrolはSETI研究所 カール・セーガン宇宙生命体研究センター長 (米国カリフォルニア州マウンテンビュー)。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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