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リサイクルされる古代の地殻

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130710

原文:Nature (2013-04-25) | doi: 10.1038/496410a | Ancient crust rises from the deep

かつて地表にあった岩石は、マントルの中に沈み込み、長い年月をかけて地球内部を循環した後、再び地表に浮上する。今回、そのことを示す証拠が得られた。

地球は自らの物質を長い時間をかけてリサイクルしている。地球表面を覆う固いプレートが、沈み込み帯でマントル(地殻の下の溶融した岩石の層)中にもぐり込み、その一部が遠く離れた火山島で再浮上することがある。Nature 2013年4月25日号で発表された論文によると、このプロセスには20億年以上の時間がかかるかもしれないという1

カンラン石の結晶には、その起源の手がかりとなる化学物質が含まれている。

Credit: J. M. D. DAY

研究者らは、南太平洋のある島で約2000万年前に噴出した火山岩を分析し、その岩石の成分が、最初に地表を離れて地球深部への旅を始めた時期に関する手がかりを発見した。カーネギー研究所(米国ワシントンD.C.)の地球化学者Steven Shireyによると、今回の知見は、地球深部で地殻がゆっくりとリサイクルされていることの「動かぬ証拠」であり、「否定するのは困難です」という。

この論文の共著者であるボストン大学(米国マサチューセッツ州)の地球化学者Rita Cabralによると、火山岩の研究から、地球のマントルの化学組成と同位体組成は、場所によって大きく異なることがわかっているという。一部の研究者は、このようなばらつきがあるのは、かつて地表にあった地殻の破片がマントルの一部に混入したからだと提案してきた2,3。しかし、地殻のリサイクルのスピードを推定しようとしても、これまではコンピューター・モデルに頼らざるを得なかったし、かつて地殻を構成していた物質が地球深部を通って再利用されていることを示す確実な証拠も存在しなかった。

Cabralらは今回、地殻のリサイクルが実際に起きていることを裏づけ、そのプロセスにかかる時間を明らかにする、説得力ある証拠を手に入れた1。研究チームは、ポリネシアのクック諸島の最南端に位置するマンガイア島から採取した岩石サンプルを分析した。その岩石は、約2000万年前の火山活動によって形成された後に、風化作用を受けている。しかし、火山から噴出する前に地下数kmのところで固化・形成されたカンラン石の中で、その結晶中に閉じ込められて風化を免れた硫化物があり、それが今日でも噴火前の組成を保持しているとCabralは言う。

その組成は、歴史を雄弁に物語る。Cabralによると、マンガイア島の岩石サンプルに含まれる各種の硫黄同位体の比率を典型的な地殻と比較すると、33Sの比率がかなり低いという。生物過程によって33Sの比率が低くなる場合、34Sの比率が異常に高くなるはずだが、マンガイア島の岩石サンプルにはそのような傾向が見られないのだ。

研究チームによると、33Sの比率が低い岩石の供給源として最も有力なのは、少なくとも24億5000万年前、すなわち、光合成生物が大気を酸素で満たす前の時代に、地表から沈み込んだり押し込まれたりした岩石を含むマントル物質であるという。大気中の酸素濃度が低かった時代には、33Sの比率が普通より低い硫化物が光化学反応で作られていたが、その後、大気中の酸素の増加によってオゾン層ができたことで、この反応が抑制されるようになったと考えられるからだ。

コア−マントル境界にある物質は、いつかは「ホットスポット」から浮上する、とCabralは主張する。1970年代に流行した「ラバランプ」というインテリア照明器具があるが、あの容器では、底の方からふわりとロウが浮かび上がる。それを巨大にしたようなものがホットスポットなのだ(「核からの帰還」参照)。33Sの比率が低いマントル物質は、このようにして地表に戻ってきたと考えられる。

Credit: PAUL JACKMAN/NATURE

Cabralによると、今回の知見は、地殻のリサイクル時間についてヒントを与えてくれるだけでなく、地球の深部で激しい混合プロセスがほとんど起きていないことも示唆しているという。33Sの比率が低い硫化物を含む古代の地殻の破片は、「マントルの中に沈んでいる間ずっと、あまり変化しなかったと考えられるからです」と彼女は言う。もしかすると、深部マントルは古代の地殻の墓場になっているのかもしれない。

Shireyは、今回の知見にもっと大きな意味を見いだしている。それは、少なくとも24億5000万年前に、今日と同じプレートテクトニクスが機能していたということだ。しかし、一部の研究者はこの見解に否定的で、若い地球の内部は高温すぎて、今日のように表面のプレートがマントル内部に沈み込むことはできなかったはずだ、と主張する。

テキサス大学ダラス校(米国)の地球科学者Robert Sternは、「これは非常に興味深い知見であり、古代の物質がリサイクルされていることは疑いようがありません」と言う。けれども彼は、33Sの比率の低い物質は、地表ではなく大陸地殻の下面で形成されたものがマントル内に「したたり落ちた」のかもしれないと指摘する。実際、地震探査によると、ある領域では、今日、そのようなプロセスが起きているように見える。

古代のプレートテクトニクスについての論争は、まだ決着がついていない。「プレートテクトニクスがいつ始まったのか、そして、それ以前にはどのようなことがあったのか、まだ明らかになっていないのです」とSternは言う。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Cabral, R. A. et al. Nature 496, 490-493 (2013).
  2. Hofmann, A. W. & White, W. M. Earth Planet. Sci. Lett. 57, 421-436 (1982).
  3. White, W. M. & Hofmann, A. W. Nature 296, 821-825 (1982).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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