2013年1月号Volume 10 Number 1

論文撤回理由の43%が、詐欺的行為!

論文撤回について広範な調査研究が行われ、非常に残念なことに、生命科学系学術誌における最多の撤回理由は、ミスや重複発表ではなく、データの改竄や捏造を含む詐欺的行為であることが明らかになった。しかも、撤回論文数トップ10には、NatureSciencePNAS といった超一流誌がまくらを並べた。研究費から終身雇用権まで、科学者にとって、一流誌への投稿は高いインセンティブがあり、それゆえに不正行為を誘発している可能性がある。今回の調査をした研究者は、詐欺的行為への誘惑を下げる方策が必要だと指摘している。

Editorials

2009年のラクイラ地震で300人以上の死者が出た責任をめぐる裁判で、今回、科学者を含む被告7人全員の有罪判決が出された。イタリアの裁判は、明らかに科学を軽視している。

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Research Highlights

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News

異常のあるミトコンドリアを持った卵から核を取り出し、正常なミトコンドリアを持った卵に移し替える技術は、サルにおいて確立されていたが、ヒトでも適応可能であることが示された。 この技術により、ヒトのミトコンドリア病と呼ばれる遺伝性難病のリスクを低減できる。

南アフリカの洞穴で7万1000年前の地層から高度な小石刃が見つかった。細石器が見つかった層は1万1000年分もあり、人類が世代を越えて石刃作製技術を伝承していたことが示唆される。

Free access

古典期マヤ文明圏における詳細な雨量記録が明らかになった。乾燥した気候が長期にわたって続いたことが、マヤ文明の衰退の一因となったらしい。

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News Features

研究者たちはこれまで「現代の都市生活によるストレスと精神疾患の関連」を示そうとしてきたが、有効なデータはなかった。だが、2003年に公表された英国の「キャンバーウェル調査」の結果は世界に衝撃を与え、これをきっかけに、さまざまな方法で検証が進められている。

化学物質の安全基準の大原則は、「曝露量が少なければ危険性も少ない」というものだ。ところが、環境ホルモン(内分泌攪乱物質)はこの原則から外れていると科学者たちは主張する。ただ、100%の確証があるわけではなく、規制当局も対応するまでには至っていない。

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Japanese Author

動物細胞の細胞小器官である中心体。細胞分裂時に染色体を引っ張る「手」を形作る役割は知られていたが、それ以外はあまり注目されてこなかった。だが最近、繊毛との関係がクローズアップされたり、細胞分裂や分化の「司令塔」としての働きが示唆され、脚光を浴びている。34歳の若き細胞生物学者、北川大樹氏は、中心体の分子構造を明らかにし、中心体研究に大きな突破口を開いた一人である。

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News & Views

妊娠した女性の免疫系が、胎児の持つ父親由来の抗原に対して寛容となる仕組みに、「抑制性」の免疫細胞がかかわっていることが実証された。 胎児抗原に特異的に反応して増殖するこの細胞は、出産後も一部が維持されていて、2回目以降の妊娠を助けていた。

天の川銀河の1つの球状星団の中から、これまでの常識に反して、2つのブラックホール候補天体が発見された。この新事実は、球状星団にはもっとたくさんのブラックホールが含まれている可能性を示している。

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News Scan

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