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Nature Human Behaviour に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。

Letter: 古代マヤ文明で総力戦が起きていたことを示す古環境的、碑文的、考古学的な証拠

Palaeoenvironmental, epigraphic and archaeological evidence of total warfare among the Classic Maya

doi: 10.1038/s41562-019-0671-x

マヤ文明において、これまで考えられていたより早い時期に高い頻度で総力戦に近い戦闘が起きていたことを示唆する古環境的、碑文的、考古学的な証拠が得られた。

Letter: 欺瞞と自己欺瞞

Deception and self-deception

doi: 10.1038/s41562-019-0666-7

人がしばしば自信過剰になる原因はどこにあるのか? 人は他者を説得することで利益を得られる機会があれば自身の心を欺いて自信を深められること、また、より深い自信は説得に役立つことが明らかとなった。

Letter: 仕事を奪う人間とロボットに対する心理的反応

Psychological reactions to human versus robotic job replacement

doi: 10.1038/s41562-019-0670-y

自分の仕事を奪われるなら、ロボットと他の人間のどちらがいいだろうか? 人間の仕事を奪う主体として人間を好む心は、自身の仕事を考慮する際には逆転することが明らかになった。自身のことになると、人はロボットに仕事を奪われることを望むのである。

Letter: 親の同席は子どもの回避学習を誘引学習へと切り替える

Parental presence switches avoidance to attraction learning in children

doi: 10.1038/s41562-019-0656-9

幼い子どもは、親の同席時に学習が獲得される際には、嫌悪条件刺激を好むようになる。この結果は、早期教育システムが、親の同席による改変を可能とするように構築されることを示唆している。

Article: 同族親和性と小規模集団のサイズが社会的ネットワーク内における認知バイアスを説明する

Homophily and minority-group size explain perception biases in social networks

doi: 10.1038/s41562-019-0677-4

社会的な認識にみられるバイアスは、単純にその社会ネットワークの構造によって説明可能であり、認知の偏りを仮定する必要はないことが明らかとなった。社会的な認知バイアスは、パーソナルネットワークの同族親和性(ホモフィリー)および小規模集団のサイズによって説明することができる。

Article: 不同意と運動の勢いの物理学

The physics of dissent and the effects of movement momentum

doi: 10.1038/s41562-019-0665-8

抗議運動の勢い(運動量)が、運動への参加者数(質量)と、一定期間内の抗議行動の密度(速度)の積で表されることが報告される。抗議運動の勢いの大きさは、指導者の変則的な退陣の確率の高さと関連する。

Article: 目標達成のための認知的人工装具

Cognitive prostheses for goal achievement

doi: 10.1038/s41562-019-0672-9

人工知能を利用して、「やることリスト」を生産性向上ゲームへと再設計することが試みられた。この方法が、よりよい意思決定、先延ばしの克服、より適切な優先順位付けを可能にすることが、4つの実験から示唆される。

Article: 声道の解剖学的形状から生じる弱いバイアスが母音の反復的な伝達を形づくる

Weak biases emerging from vocal tract anatomy shape the repeated transmission of vowels

doi: 10.1038/s41562-019-0663-x

解剖学的構造は言語間の差に影響を与えるだろうか。声道のコンピューターモデルによって、母音が学習されて世代間で伝達される仕組みのモデル化が試みられた。シミュレーションの結果、硬口蓋の多様性が、音声学的な多様性に寄与する仕組みが明らかとなった。

Article: 服薬なしの気分・不安障害患者における不確実な条件下での学習の変化

Altered learning under uncertainty in unmedicated mood and anxiety disorders

doi: 10.1038/s41562-019-0628-0

不安は、不確実な条件下における反応の変化を特徴とする。そうした反応変化は、不安を感じている人が、不安のない人に比べて、否定的な結果に対する自身の振る舞いを速やかに更新することに起因していることが示された。

Perspective: 課題に関連した機能的脳画像法で個人差を評価する

Assessing inter-individual differences with task-related functional neuroimaging

doi: 10.1038/s41562-019-0681-8

課題に関連した機能的MRIでみられる個人差の解析の理論的および統計的な基盤について論じ、機能的MRI上の個人差の統計的妥当性および解釈可能性を改善するための提案を行う。

Letter: 歴史を予測する

Predicting history

doi: 10.1038/s41562-019-0620-8

米国国務省の保管する1970年代の約200万件の国際通信文に機械学習予測モデルを用いた結果、「人工公文書保管人(artificial archivist)」の開発は可能であるものの、歴史的な重要性の予測は極めて難しいことが判明した。

Letter: 銃乱射事件後のメディア報道と銃器入手

Media coverage and firearm acquisition in the aftermath of a mass shooting

doi: 10.1038/s41562-019-0636-0

Porfiriらは、米国における銃器の入手が銃乱射事件の発生に伴って増加しており、銃乱射事件を受けて銃器規制に関するメディアの報道が増加すると、規制の厳格化を見越した市民が銃器購入に走る可能性があることが判明した。

Article: 道徳的立場と道徳的主張の結びつきが意見の変化を促す道徳的立場と道徳的主張の結びつきが意見の変化を促す

The connection between moral positions and moral arguments drives opinion change

doi: 10.1038/s41562-019-0647-x

イデオロギーと道徳的意見との結びつきを説明するモデルを提案し、44年分の投票データによってモデルを検証したところ、リベラル派においては危害および公正と結びつく立場が一般的であり、時とともにそうした立場が一般的になってゆくことが確認された。

Article: 公の場での議論において科学の否定に反論するための有効な戦略

Effective strategies for rebutting science denialism in public discussions

doi: 10.1038/s41562-019-0632-4

科学の否定に対して、トピックやテクニックを用いてその場で対抗することで、科学の否定が人々の態度や振る舞いに及ぼす影響を小さくできることが示された。

Article: 向社会的行動と反社会的行動の原因を遺伝に帰する傾向の非対称性

Asymmetrical genetic attributions for prosocial versus antisocial behaviour

doi: 10.1038/s41562-019-0651-1

人は、良い振る舞いや悪い振る舞いの原因が遺伝にあると考えているのだろうか?人々は、向社会的行動は反社会的行動に比べて遺伝の影響を強く受けていると考えていることが明らかになった。この非対称性は、不正行為を非難したいという欲求から生じているものと思われる。

Article: 新たなアルコール関連遺伝子群は神経精神障害と共通の遺伝的機序を示唆する

New alcohol-related genes suggest shared genetic mechanisms with neuropsychiatric disorders

doi: 10.1038/s41562-019-0653-z

アルコール摂取と関連する46の新たな遺伝子座が遺伝的関連研究で同定された。個々の遺伝子座の機能および潜在的な多面発現性の評価から、統合失調症などの神経精神障害と共通する遺伝的機序が示唆された。

Article: 動機づけされた視覚の基盤となる神経計算メカニズム

Neurocomputational mechanisms underlying motivated seeing

doi: 10.1038/s41562-019-0637-z

人はなぜ、自分が見たがっているものを見たと報告することが多いのだろうか? 知覚判断に対する動機付け効果が反応と知覚の両方におけるバイアスを反映していることが、神経計算的手法によって示された。

Article: 皮質での発話の符号化は課題に関連した音響情報を強化する

Cortical encoding of speech enhances task-relevant acoustic information

doi: 10.1038/s41562-019-0648-9

発話の神経処理は、目的指向型の振る舞いに適応する。この神経処理は既に一次聴覚皮質で行われていて、言語音中の課題に関連した音響情報が選択的に強化されていることが判明した。

Article: 精神医学的および神経学的な脳障害にみられるコネクトームの変化に共通する脆弱性

Shared vulnerability for connectome alterations across psychiatric and neurological brain disorders

doi: 10.1038/s41562-019-0659-6

12の精神障害および神経障害における白質の結合の異常の比較から、大域的な情報伝達およびネットワークの統合に最も重要な接続は、多くの脳障害にみられる変化に対して特に脆弱であることがわかった。

Perspective: 認知革命以降の認知科学に何が起きたか?

What happened to cognitive science?

doi: 10.1038/s41562-019-0626-2

計量文献学と社会制度の指標を用いた検証により、認知革命以降の認知科学が、成熟した、一貫性のある、学際的な分野へと変化できていないことが明らかとなった。

Letter: 狩猟採集民のアグタ族では農業への従事は余暇の短縮と相関する

Engagement in agricultural work is associated with reduced leisure time among Agta hunter-gatherers

doi: 10.1038/s41562-019-0614-6

狩猟採集生活から農耕生活への移行により人々の仕事はきつくなるのだろうか? フィリピンの伝統的な狩猟採集民では、農業への従事の度合の大きさが、仕事に費やす時間の長さと余暇の少なさと相関することが判明した。

Letter: ピア効果は警察の不正行為の原因となる

Causal peer effects in police misconduct

doi: 10.1038/s41562-019-0612-8

ロンドン警視庁の35000人の警官と職員の不正行為に関するデータから、同僚の過去の不正行為は警官自身の現在の不正行為を増加させることが示された。

Letter: 注意と作業記憶が同時に失われることがリアルタイム・トリガー法により判明

Real-time triggering reveals concurrent lapses of attention and working memory

doi: 10.1038/s41562-019-0606-6

注意と作業記憶はいずれも経時的に変動する。異なる課題において注意と記憶の変動が同期していることが示され、これらの認知過程が緊密に統合されていることのさらなる証拠が得られた。

Letter: 顔の記憶のモデル化から異なる課題に一般化できる表現が明らかに

Modelling face memory reveals task-generalizable representations

doi: 10.1038/s41562-019-0625-3

私たちが親しい人を認識するとき、顔のどの面を用いているのだろうか? 同僚に関する記憶のなかの顔を表現する3次元情報要素がモデル化された。この情報は、異なる視点、年齢、性別の人物の認識において重要である。

Letter: 視覚的作業記憶は知覚を直接変容する

Visual working memory directly alters perception

doi: 10.1038/s41562-019-0640-4

バラの花を心に思い浮かべると、世界はバラ色のメガネ越しに見えてくるのだろうか? 作業記憶と知覚意思決定の課題を組み合わせることで、内的表象が環境の知覚に影響を及ぼす可能性があることが3つの実験から判明した。

Article: 複雑な置換系におけるスケーリングの出現

Emergence of scaling in complex substitutive systems

doi: 10.1038/s41562-019-0638-y

置換系にみられる初期の発展パターンは、指数関数ではなくべき乗則に従うことがわかった。ビッグ・データ分析は、置換を支配する重要な機序を明らかにし、べき乗則に従う初期の発展パターンが観察される理由の説明に役立つ。

Article: 社会的相互作用場モデルは静的および動的な社会集団形成を正確に特定する

A social interaction field model accurately identifies static and dynamic social groupings

doi: 10.1038/s41562-019-0618-2

人は他者がある集団の一員であることをいかにして知るのだろうか? 他者の相互作用に対する人の知覚を支配する原理を定量することで、静的および動的な社会的場面における社会集団形成に関する人の判断を正確に予測する社会相互作用場モデルが紹介される。

Registered Report: 外因性テストステロンは道徳的ジレンマの判断における道徳的規範に対する感受性を高める

Exogenous testosterone increases sensitivity to moral norms in moral dilemma judgements

doi: 10.1038/s41562-019-0641-3

テストステロンが道徳的ジレンマにおける反応を変化させるか否かは長年の疑問であった。Registered Reportにおいて、予想に反して、外因性テストステロンが道徳的ジレンマにおいて規範に対する感受性を高めることが報告される。

Registered Report: 情緒能力と認知能力への自己洞察は高い適応と関連しない

Self-insight into emotional and cognitive abilities is not related to higher adjustment

doi: 10.1038/s41562-019-0644-0

自身の能力をわかっている人は、わかっていない人よりも心理学的によく適応しているのだろうか? Registered Reportにおいて、強い関連を示す証拠はないことが明らかとなり、昔からある考え方に疑問が投げかけられた。

Perspective: 行動経済学と主流派経済学の統合

A synthesis of behavioural and mainstream economics

doi: 10.1038/s41562-019-0617-3

新古典派経済学と行動経済学における議論と洞察は互いにどのように関連するのだろうか? この2つのアプローチを規則合理性の概念に基づいて統合することが提案されている。

Letter: 拘禁刑が地域社会の暴力に及ぼす影響に関する自然実験研究

A natural experiment study of the effects of imprisonment on violence in the community

doi: 10.1038/s41562-019-0604-8

ミシガン州のデータを用いた研究では、拘禁刑が出所後の暴力犯罪による逮捕または有罪判決に影響を及ぼすことを示す確かなエビデンスは得られなかった。拘禁刑による無能力化効果を解析に含めると、拘禁刑は暴力をわずかに抑制した。

Letter: 低コストの情報ナッジは低所得移民における市民権申請率を高める

A low-cost information nudge increases citizenship application rates among low-income immigrants

doi: 10.1038/s41562-019-0572-z

スタンフォード大学移民政策研究所による無作為化現場実験から、低収入の移民に米国市民権申請費用免除措置を受ける資格があることを教える低コストのナッジが彼らの市民権申請率を高めることが明らかとなった。

Letter: 前向きな子育ては青年期における健康とウェルビーイングを多面的に改善する

Positive parenting improves multiple aspects of health and well-being in young adulthood

doi: 10.1038/s41562-019-0602-x

Growing Up Today研究1および2で得られたデータの解析から、前向きな子育てが、情緒的ウェルビーイングの大きさ、ならびに精神疾患、摂食障害、肥満、マリファナ使用のリスクの低さと相関することが明らかとなった。

Letter: アメリカのABCD研究ではバイリンガルの実行機能に優位性があることのエビデンスは見出されなかった

No evidence for a bilingual executive function advantage in the nationally representative ABCD study

doi: 10.1038/s41562-019-0609-3

実行機能は思考と行動の自発的コントロールにとって重要な認知能力である。このほど、4,500人の9~10歳児について得られたデータの解析から、バイリンガルの児童が実行機能において有利であることを示すエビデンスはないことが判明した。

Letter: ゆっくりした逃避の決定は特性不安の影響を受ける

Slow escape decisions are swayed by trait anxiety

doi: 10.1038/s41562-019-0595-5

実験参加者の特性不安が、ゆっくり接近してくる脅威に直面したときの、より早い段階での逃避の決定と関連していることが明らかとなった。不安は、逃避決定課題によって駆動される、認知的恐怖回路の血中酸素濃度依存性の活動と相関する。

Article: 異質な個人間におけるニュースの拡散にみられる異常な構造および動態

Anomalous structure and dynamics in news diffusion among heterogeneous individuals

doi: 10.1038/s41562-019-0605-7

人がオンラインで有するつながりの数は、ニュースの拡散にいかに影響を与えるのだろうか? つながりの少ないユーザーは、つながりの多いユーザーよりも効率的にニュースを拡散する場合があり、長い樹状構造の拡散経路とノード距離の非ガウス分布を生じることが示された。

Article: 意思決定時の正の報酬予測誤差は記憶の符号化を強化する

Positive reward prediction errors during decision-making strengthen memory encoding

doi: 10.1038/s41562-019-0597-3

偶発的な記憶の符号化中に誘発される正の報酬予測誤差は、エピソード記憶の形成を高めることが明らかとなった。

Article: 発見的で最適な方針による脅威の最小化は海馬と内側前頭前野を動員する

Minimizing threat via heuristic and optimal policies recruits hippocampus and medial prefrontal cortex

doi: 10.1038/s41562-019-0603-9

探索する機会と脅威を避ける必要性のトレードオフを見極めなければならないときに、ヒトは最適な意思決定と発見的な方法を混ぜて用いることが明らかとなった。その際の計算は、海馬と内側前頭前皮質の活動に反映される。

Article: 閉ループのデジタル瞑想は若年成人の注意力の持続を改善する

Closed-loop digital meditation improves sustained attention in young adults

doi: 10.1038/s41562-019-0611-9

瞑想にヒントを得た閉ループアプリ(MediTrain)を6週間にわたって使用した健常若年成人において、注意力持続と作業記憶の両方に改善がみられた。

Perspective: 集団的意思決定における共同責任

Shared responsibility in collective decisions

doi: 10.1038/s41562-019-0596-4

人はなぜ集団的意思決定を行うのか? 共同での意思決定は、責任を共有することで、難しい意思決定の結果が思わしくないものになった場合の後悔やストレスの低減や罰の回避を可能にし、個人を守っていることが論じられる。

Letter: 古英詩の伝承の大規模な定量的プロファイリング

Large-scale quantitative profiling of the Old English verse tradition

doi: 10.1038/s41562-019-0570-1

現存するすべての古英詩の文体が解析され、英文学史における長年の問題に関して、「ベオウルフ」の書き手が1人であることと、「アンドレアス」がキネウルフによって書かれたことを示す定量的な証拠が得られた。

Letter: ミクロレベルの引用パターンの大規模解析から明らかとなった微妙な選択基準

Large-scale analysis of micro-level citation patterns reveals nuanced selection criteria

doi: 10.1038/s41562-019-0585-7

156,558報の論文のデータ主導型の解析から、引用文献の選択には論文のセクションを超えて普遍的なパターンが存在すること、ならびにミクロレベルの引用パターンには、引用を行う論文自体の最終的なインパクトを明らかにする重要な差があることが判明した。

Letter: 健康、行動、達成の遺伝学と地理学

Genetics and the geography of health, behaviour and attainment

doi: 10.1038/s41562-019-0562-1

米国と英国の青少年コホートのデータから、十代での妊娠と学業達成度の遺伝的リスクおよび近隣リスクに相関がみられることが明らかとなったが、肥満や統合失調症のリスクの間には弱い相関がみられるか、あるいは相関はみられなかった。

Letter: ヒトの好奇心の多様な動機

Diverse motives for human curiosity

doi: 10.1038/s41562-019-0589-3

人は、選択肢が多数の属性によって定義されると、全体的な不確実性とは無関係に個々の属性に興味を抱くことが明らかとなり、好奇心を形づくる期待効用には異なるタイプがあることが判明した。

Letter: 価値観アラインメント介入はフード・マーケティングの影響から青少年を守る

A values-alignment intervention protects adolescents from the effects of food marketing

doi: 10.1038/s41562-019-0586-6

8年生に対して価値観アラインメント介入を行い、青少年が重視する自律や社会正義といった価値観をジャンクフード・マーケティングがいかに損なっているかを学ばせた結果、青少年の食事の好みが不健康な選択から遠ざかり、健康的な選択に近づく方向に変化した。

Article: 連結された社会における進化のモデリングへのゲーム的アプローチ

A potential game approach to modelling evolution in a connected society

doi: 10.1038/s41562-019-0571-0

下位集団を解析の基本単位として扱い、ゲーム的アプローチを使用するモデリングの枠組みが、連結された集団における行動と移動の進化的動態の研究を容易にする方法を与えることが明らかになった。

Article: 小児期の長期に及ぶポケモン経験から偏心度が視覚野の組織化を駆動することが示唆される

Extensive childhood experience with Pokémon suggests eccentricity drives organization of visual cortex

doi: 10.1038/s41562-019-0592-8

幼児期のポケモンによる視覚刺激経験は新たな脳内表象につながり、高次視覚皮質中でのその位置は、小児期のものの見方が皮質の機能的構成を決定することを示唆している。

Article: 注視バイアスの差が個人の選択行動を捉える

Gaze bias differences capture individual choice behaviour

doi: 10.1038/s41562-019-0584-8

単純な選択は注視行動によってバイアスがかかる。こうした注意バイアスにみられる個人差を4つのデータセットについて調べた結果、注視バイアスには個人差があること、またその強度から選択の個人差を高い信頼度で予測できることが明らかとなった。

Article: 瞳孔関連覚醒過程による証拠蓄積の調節

Regulation of evidence accumulation by pupil-linked arousal processes

doi: 10.1038/s41562-019-0551-4

人は時間をかけて情報を統合することで判断を下すが、最適に行うことはできない。今回、瞳孔信号の異なる側面が、知覚意思決定における個別の準最適性とどのように関連しているかが明らにされた。

Perspective: 社会的世界の不確実性を小さくする

Resolving uncertainty in a social world

doi: 10.1038/s41562-019-0590-x

人は社会的相互作用における不確実性をどのようにして減らそうとするのだろうか?(1)自動的な印象形成、(2)努力を要する視点取得、(3)予測を更新する補足情報の探索と学習、という3段階からなるモデルが提案される。

Perspective: 正確な神経調節のためのプロセスベースの枠組み

Process-based framework for precise neuromodulation

doi: 10.1038/s41562-019-0573-y

ニューロフィードバック・トレーニングは、精神医学的介入の有望なツールの1つと見なされている。ニューロフィードバックに対する期待を現実のものとするために、将来の研究および介入の指針となる、過程に基づくニューロフィードバックの枠組みが導入された。

Letter: 文化的に進化する技術の改良に因果関係の理解は必要ない

Causal understanding is not necessary for the improvement of culturally evolving technology

doi: 10.1038/s41562-019-0567-9

複雑な技術は優れた因果関係推論能力の結果である必要はなく、むしろ世代から世代へと改良が蓄積された結果として出現し、当該技術の仕組みを理解している必要はないことが実験から明らかになった。

Letter: 対面式の簡単な防災指導は文化の違いを超えて複数の災害に対する家庭の備えを高める

The Fix-it face-to-face intervention increases multihazard household preparedness cross-culturally

doi: 10.1038/s41562-019-0563-0

2つの文化において、地震や火災に対する家庭の備えを高めさせる簡単な防災指導について報告される。防災指導を受けた人では家庭での備えに長期的な変化が見られ、結果への期待が高く、住居を所有している人ほど備えができていた。

Letter: ヒトの注視は記憶された視覚空間における注意の焦点化を追跡する

Human gaze tracks attentional focusing in memorized visual space

doi: 10.1038/s41562-019-0549-y

記憶に保持された視覚表現への焦点化は、その記憶された位置に注視を向けさせることが明らかとなった。この結果は、記憶された空間内における注視制御と注意焦点化に同じシステムが関わっていることを示唆している。

Letter: 日本人165,436人を対象とした喫煙行動のGWASから7つの新たな遺伝子座と共通の遺伝的構造が明らかとなった

GWAS of smoking behaviour in 165,436 Japanese people reveals seven new loci and shared genetic architecture

doi: 10.1038/s41562-019-0557-y

日本人集団の喫煙行動の遺伝的因子が調べられ、喫煙行動に関連する7つの遺伝子座と、喫煙行動と遺伝的基盤を共有する11の疾患が同定された。

Letter: 複雑な感情ダイナミクスは心理的幸福感の予測にわずかな情報しか付加しない

Complex affect dynamics add limited information to the prediction of psychological well-being

doi: 10.1038/s41562-019-0555-0

感情ダイナミクスと幸福感の研究において、情動変化を捉えるために用いられる動態尺度は増え続ける一方である。こうした尺度が、感情の平均およびその分散がもたらす情報に追加するものはほとんどないことが明らかとなった。

Article: 睡眠不足は投票率をはじめとする向社会的行動を減少させる

Insufficient sleep reduces voting and other prosocial behaviours

doi: 10.1038/s41562-019-0543-4

観察研究、自然実験、無作為化実験により、睡眠不足が、投票率、チャリティーへの寄付、請願書への署名などの向社会的行動を減少させることが示された。

Article: ヒトの非嗅覚認知は吸入と位相同期する

Human non-olfactory cognition phase-locked with inhalation

doi: 10.1038/s41562-019-0556-z

視覚空間課題を遂行中のヒトには、課題開始時に息を吸い込む傾向がみられる。課題の神経処理は、参加者が課題開始時に息を吸い込むか吐き出すかによって異なり、この差は課題の成績と相関する。

Article: ゲノム構造方程式モデリングから複雑な形質の多変量の遺伝的構造に関する手がかりが得られる

Genomic structural equation modelling provides insights into the multivariate genetic architecture of complex traits

doi: 10.1038/s41562-019-0566-x

複雑な形質の多変量の遺伝的構造を解析する多変量法が開発され、〈ゲノム構造方程式モデリング〉と命名された。この方法について、5つの精神医学的形質の同時解析など複数の応用が紹介されている。

Resource: 行動変容理論を表現する形式システムの開発

Development of a formal system for representing behaviour-change theories

doi: 10.1038/s41562-019-0561-2

行動変容理論は、より精密に規定される必要がある。5つの主要理論は、(1)構成概念のラベル、(2)構成概念の定義、(3)構成概念間で定義される二項関係を含むシステムを用いることで形式的に表現されうる。

Letter: 分極化した群衆の知恵

The wisdom of polarized crowds

doi: 10.1038/s41562-019-0541-6

チーム内のイデオロギーの分極化がチームの能力に及ぼす影響が調べられた。ウィキペディアの数百万件の編集の解析から、政治的に多様な編集者からなるチームは、均質な編集者からなるチームや穏健な編集者からなるチームと比較して質の高い記事を執筆していることが判明した。また、そうした優れた記事が作成される機序も明らかとなった。

Letter: 第二次大戦の避難民の統合に伴う出生率と社会的地位の間のトレードオフ

Integration involves a trade-off between fertility and status for World War II evacuees

doi: 10.1038/s41562-019-0542-5

移民として受け入れられた社会で現地民と結婚してその地に留まる避難者は、社会経済的な利益を得られるが、出生率は低い。この事実は、移民の統合には、集団内の結束を強める社会ネットワークと集団間の橋渡しをする社会ネットワークの間のトレードオフが伴うことを示唆している。

Letter: タンザニア北西部における「児童婚」は親子間の利益相反では説明しにくい

Parent–offspring conflict unlikely to explain ‘child marriage’ in northwestern Tanzania

doi: 10.1038/s41562-019-0535-4

タンザニア農村部の女性の早婚(18歳未満)が、両親と娘の双方の戦略上の利益にかなっている可能性があることを示唆するデータが示された。この結論は、世界的に高まりつつある「児童婚根絶」への機運の一般的な考え方とは対照的である。

Letter: 純粋な協力の効果の実験的証拠

Experimental evidence for a pure collaboration effect

doi: 10.1038/s41562-019-0530-9

人間が他者のために自己の利益を進んで犠牲にしようとする条件は何だろう?実験の結果、協力は、責任や内集団ひいきや格差とは別に、犠牲を受け入れる意思を強めることがわかった。

Letter: 最小限の探索-搾取課題における準最適性の源

Sources of suboptimality in a minimalistic explore–exploit task

doi: 10.1038/s41562-018-0526-x

人間は探索行動と搾取行動のどちらをとるべきかをどれほどうまく判定できるのだろうか?そうした判断の本質を捉えた課題から、参加者がとりうる判断の順序と関連した、最適性からの系統的な逸脱の存在が明らかとなった。

Article: 発話の韻律として表現される12種類の感情の2つの文化の間での認識におけるカテゴリーの優位性

The primacy of categories in the recognition of 12 emotions in speech prosody across two cultures

doi: 10.1038/s41562-019-0533-6

感情に文化の違いを超えた普遍性があるか否かは、心理学研究における中心的な問題である。このほど、2つの異なる文化で認識される少なくとも12種類の感情を、発話の韻律によって伝えられることが明らかとなった。

Article: 量と時間は異時点間選択に独立に影響を及ぼす

Amount and time exert independent influences on intertemporal choice

doi: 10.1038/s41562-019-0537-2

すぐに少額の金銭を受け取るか、あとで高額の金銭を受け取るかを判断する際、慎重な選択をする人は、量と時間に関する情報を連続的に処理していて、得られる量に先に集中していることが判明した。

Article: スペクトル・時間変調は聴覚皮質の非対称性に統一的な枠組みを与える

Spectrotemporal modulation provides a unifying framework for auditory cortical asymmetries

doi: 10.1038/s41562-019-0548-z

スペクトル・時間変調空間を利用する聴覚皮質の非対称性の枠組みが考案された。精神物理、脳磁図(MEG)、皮質脳波記録(ECoG)のデータは、シグナル処理に基づいて側性化を考えるのに役立つ。

Perspective: 経済的不平等はいかにして不遇な若者に流動性への期待と行動を形成させるか

How economic inequality shapes mobility expectations and behaviour in disadvantaged youth

doi: 10.1038/s41562-018-0523-0

社会経済的に不遇な若者がもつ流動性への期待に対して不平等が及ぼす影響についての実証研究と理論研究の検討から、経済学的視点と心理学的視点を統合する枠組みが示される。

Perspective: 理論上の問題

A problem in theory

doi: 10.1038/s41562-018-0522-1

心理学における再現性をめぐる問題を解決するためには、詳細かつ包括的な理論的枠組みを構築することも必要であることが論じられる。心理学分野で採用されうるそうした理論枠組みの一例として、二重継承理論について概説される。

Letter: 世界の音楽ストリーミングデータから嗜好される音楽の情緒的傾向の日周変化と季節変化のパターンがわかる

Global music streaming data reveal diurnal and seasonal patterns of affective preference

doi: 10.1038/s41562-018-0508-z

51か国の百万人が選択した7億6,500万件のオンライン音楽再生データから、嗜好される音楽の激しさに関して、文化や人口層の違いを超えた日周変化と季節変化が明らかになった。また、文化および年齢の差により、音楽の激しさに対するベースラインの嗜好に差がみられることも報告される。

Letter: 大気汚染は中国の都市住民がソーシャルメディア上で表現する幸福感を低下させる

Air pollution lowers Chinese urbanites’ expressed happiness on social media

doi: 10.1038/s41562-018-0521-2

中国の144都市について、ミニブログ「新浪微博(シナ・ウェイボー)」上の2億1,000万件のつぶやきに表現された感情にもとづく日々の都市レベルの幸福度指標を構築したところ、高レベルの大気汚染は、中国の都市住民がソーシャルメディア上で表現する幸福感を有意に低下させていることが明らかとなった。

Letter: 過去200年間のアメリカ文化の緩みは創造性-秩序のトレードオフと相関する

The loosening of American culture over 200 years is associated with a creativity–order trade-off

doi: 10.1038/s41562-018-0516-z

アメリカにおける規範が1800~2000年の間に緩くなったことが、数理言語学を援用した手法によって明らかとなった。アメリカの規範の経時的な緩みは、社会の創造性と正に相関し、秩序とは負に相関していた。

Letter: 遺伝子組換え食品に対する最も過激な反対者は最も知識がないにも関わらず自分では最もよく知っていると思っている

Extreme opponents of genetically modified foods know the least but think they know the most

doi: 10.1038/s41562-018-0520-3

米国、フランス、ドイツでは、遺伝子組換え(GM)食品に対する人々の反対はさらに過激になっており、そうした人々の遺伝子組換えに関する理解は、自己評価によれば高くなっているものの、客観的には、遺伝子組換えの背景にある科学に関する知識は乏しくなっている。

Letter: NIH R01助成金申請の一次評価に関する実験では人種や性差による差別はほとんどみられなかった

Little race or gender bias in an experiment of initial review of NIH R01 grant proposals

doi: 10.1038/s41562-018-0517-y

助成金審査委員が代表研究者の人種や性別に基づいて差別をしているか否かが検討された。現役研究者412人が参加した実験から、現実に重大な偏見の存在を示す証拠は認められなかった。

Letter: 肯定的な記憶の具体性はうつへの脆弱性の低さと関連する

Positive memory specificity is associated with reduced vulnerability to depression

doi: 10.1038/s41562-018-0504-3

肯定的な人生経験を具体的に想起することは、否定的な自己関連思考の低さおよびストレスホルモンレベルの低さと関連することが、うつのリスクを有する若者427人を対象とした試験で明らかとなった。

Letter: 睡眠中の人は多話者環境において情報量の多い発言を追跡している

Sleepers track informative speech in a multitalker environment

doi: 10.1038/s41562-018-0502-5

私たちはなぜ、睡眠中に、無反応ながらも外界の出来事の処理を続けているのか?脳波記録から、睡眠中の人が「スタンバイ・モード」に入り、重要なシグナルの追跡を一過的ながら続けていることが明らかとなった。

Article: ヒトのパブロフ型学習において結果に感受性のシステムと非感受性のシステムが並行して存在していることの行動学的証拠

Behavioural evidence for parallel outcome-sensitive and outcome-insensitive Pavlovian learning systems in humans

doi: 10.1038/s41562-018-0527-9

パブロフ型条件付けには異なる種類の反応の学習が関与しており、結果の価値の変化に柔軟に適応するものと、結果が学習者にとって有用でなくなっても持続するものがあることが判明した。

Article: 統計学習における個人の意思決定戦略の予測因子が脳の接続性の多モード画像化から明らかとなった

Multimodal imaging of brain connectivity reveals predictors of individual decision strategy in statistical learning

doi: 10.1038/s41562-018-0503-4

行動モデリングと脳の機能的・構造的な接続性を組み合わせる研究から、人は変動する環境の構造を、異なる脳内ネットワークが関与する代替的な意思決定戦略を用いて学ぶことが明らかとなった。

Review Article: 進化的視点から見たパラノイア

An evolutionary perspective on paranoia

doi: 10.1038/s41562-018-0495-0

パラノイアは精神障害の症状であるだけでなく、ヒトの正常な心理の一部として機能している可能性がある。ここでは、進化的視点からパラノイアを見て、集団間の競争が社会的脅威を回避するための心理的メカニズムの発達を促すとする説明の根拠について概説する。

Letter: 情報の流れから明らかになるネット上の社会的活動の予測限界

Information flow reveals prediction limits in online social activity

doi: 10.1038/s41562-018-0510-5

個人の社会的つながりには、その人の社会的活動について95%もの精度で予想できるだけの情報が含まれている。原理的には、個人データにアクセスしなくても、個人のソーシャルプラットフォームの社会的つながりのみから、その人物像を明らかにすることができる。

Letter: 戦争は信仰心を強める

War increases religiosity

doi: 10.1038/s41562-018-0512-3

紛争を経験した3種類の社会から得られたデータから、戦争への曝露の度合いが大きい人々は、その数年後に宗教的な団体や儀式に参加する可能性が高いことが判明した。この結果から、暴力的な紛争と信仰心の間に関係があることがわかる。

Letter: 知的な人は認知操作を外在化して問題を解決する

Intelligent problem-solvers externalize cognitive operations

doi: 10.1038/s41562-018-0509-y

定評あるレーヴン知能検査の別バージョンの方法が紹介される。問題を解決するための認知操作を外在化できる新たな検査法では、学生の知能検査の成績の良さと学業成績の良さとの間に相関が見られた。

Letter: ヒトのエピソード記憶における時間圧縮型の順方向再生の速度は柔軟に変化する

Speed of time-compressed forward replay flexibly changes in human episodic memory

doi: 10.1038/s41562-018-0491-4

ヒトがエピソード記憶中の情報を検索する機序を脳磁図によって調べた結果、順方向の記憶再生は速く、その速度は課題に応じて柔軟に変化することが明らかとなった。

Article: 全ウィキメディアプロジェクトにおける集合知の形成時には早い段階で構造的不均衡が出現する

Early onset of structural inequality in the formation of collaborative knowledge in all Wikimedia projects

doi: 10.1038/s41562-018-0488-z

全てのウィキメディアプロジェクトの解析から、集合知の形成において、少数の編集者が不釣り合いに大きな影響を及ぼしていることが判明した。

Article: ヒトの行動変化に関連したオントロジーのスコーピングレビュー

A scoping review of ontologies related to human behaviour change

doi: 10.1038/s41562-018-0511-4

ヒトの行動変化に関連した15のオントロジーがスコーピングレビューによって同定、要約、評価された。ヒトの行動変化の全域をカバーする既存のオントロジーは存在せず、行動変化介入のオントロジーを構築する必要があることが明らかとなった。

Article: 青年期の心の健康とデジタル技術利用との相関

The association between adolescent well-being and digital technology use

doi: 10.1038/s41562-018-0506-1

青少年はデジタル技術を日常的に利用しているが、心の健康への影響は不明である。3つの大規模データセットの調査からは小さな負の関連しか見つからず、デジタル技術の利用は心の健康への悪影響のせいぜい0.4%しか説明できなかった。

Article: 社会的学習戦略が群知能と集合愚を制御する

Social learning strategies regulate the wisdom and madness of interactive crowds

doi: 10.1038/s41562-018-0518-x

集団はどのような場合に「集合知」を示し、どのような場合に適応的でない「群衆行動」を示すのだろうか。モデリングおよび実験から、群知能か集合愚のいずれになるかは、与えられる課題と用いられる社会的学習戦略から予測できることが明らかとなった。

Perspective: データ科学はメンタルヘルス研究をどのように進歩させるか

How data science can advance mental health research

doi: 10.1038/s41562-018-0470-9

データサイエンスのメンタルヘルス研究への多様な応用法について考察し、ビッグデータを利用して疾患の検出、診断、治療、医療提供、疾患管理を改善する将来の展開について検討する。

Review Article: 自然フィールド実験はいかにして失業に関する理解を深めたか

How natural field experiments have enhanced our understanding of unemployment

doi: 10.1038/s41562-018-0496-z

自然フィールド実験では、無作為化対照と観察者効果の不在を組み合わせることができる。この手法が失業などの重要な労働市場現象の調査に利用されるようになったのは2000年初頭以降である。本総説では既存の文献の評価を行い、自然フィールド実験が失業の理解にもたらした洞察をまとめる。

Letter: 物体に割り当てられる注意は現実世界で推定される物体の大きさに応じて変わる

Attention scales according to inferred real-world object size

doi: 10.1038/s41562-018-0485-2

知覚される物体の大きさと現実の物体の大きさとの間には解離があり、近くにある小さな物体は遠くにある大きな物体よりも大きく見える。今回、物体に対する空間的注意は、物体の真の大きさの推定に応じて決まることが示された。

Letter: 自身の遺伝的リスクを知ると実際の遺伝的リスクに関わらず生理的変化が生じる

Learning one’s genetic risk changes physiology independent of actual genetic risk

doi: 10.1038/s41562-018-0483-4

肥満の遺伝的リスクの高低を無作為に知らされた人々には、実際の肥満の遺伝的リスクに関わらず、その遺伝子に関連した生理機能や主観的経験に予想されるリスクと矛盾しない変化が生じた。

Letter: 恣意的な規範も倫理的な意思決定に影響を及ぼす

Even arbitrary norms influence moral decision-making

doi: 10.1038/s41562-018-0489-y

社会規範が恣意的に決定されたものであり、人々の実際の嗜好を反映したものではないことを理解していても、人はそれに従うことが明らかとなった。規範の効果に関する合理性にもとづく有名な説明では、そうした結果を説明することはできない。

Letter: 扁桃体の電気的指紋はストレスレジリエンスのためのニューロフィードバック訓練の指針となる

Electrical fingerprint of the amygdala guides neurofeedback training for stress resilience

doi: 10.1038/s41562-018-0484-3

軍事訓練を受けているコホートにおいて、EEGニューロフィードバック(「電気的指紋」)による扁桃体の自己調節訓練が、ストレスレジリエンスの神経行動学的指標につながることの証拠が得られた。

Letter: チーム競技では過去の成功の共有が勝利を予言する

Prior shared success predicts victory in team competitions

doi: 10.1038/s41562-018-0460-y

4つの主要スポーツリーグと1つのマルチプレーヤーオンラインゲームの結果の解析から、チームとして過去の成功を共有することが、各プレーヤーの能力によって説明される以上に勝率を大きく高めることが明らかとなった。

Article: 集合的な記憶と注意の普遍的な減衰

The universal decay of collective memory and attention

doi: 10.1038/s41562-018-0474-5

科学論文、特許、歌、映画、伝記などの文化的作品に向けられる注意は2つの指数関数の和に従って減衰することから、集合的記憶は普遍的なパターンに従うことが示唆される。

Article: ネット上の感情の分スケールのダイナミクスから感情ラベリングの効果が明らかとなる

The minute-scale dynamics of online emotions reveal the effects of affect labeling

doi: 10.1038/s41562-018-0490-5

Twitterユーザーがネット上で感情を表現する前後での感情の変化を追跡したところ、感情は表現される前に急速に大きくなり、表現された後に急速に小さくなることが明らかになり、〈感情は言葉にされると強度が弱まる〉という過去の感情ラベリング研究の結果が裏付けられた。

Perspective: 神経科学および行動研究における準実験による因果関係の立証

Quasi-experimental causality in neuroscience and behavioural research

doi: 10.1038/s41562-018-0466-5

因果関係の立証は全ての科学分野において中心的な課題である。ここでは、実証経済学に由来する準実験による因果関係の立証方法と、心理学や神経科学など幅広い分野における因果関係の立証への適用の仕方が示される。

Review Article: 精神的な労働

Mental labour

doi: 10.1038/s41562-018-0401-9

知的努力は長く心理学研究の主題であった。ここでは、知的努力の研究に行動経済学の概念を援用することで、知的努力をするという選択がどのような費用便益分析に導かれているかを解明するための最近の試みについて論じられる。

Letter: 匿名のやりとりの経験は直観的な協力を減少させる

Experience with anonymous interactions reduces intuitive cooperation

doi: 10.1038/s41562-018-0454-9

自己の評判への配慮は、社会的状況における本能的な協力を強化する。匿名での一回限りのやりとりにおいて、協力しなくても自己の利益が損なわれないことを学ぶと、協力の習慣が崩れる場合があることが明らかとなった。

Letter: 汎化は広大な決定空間におけるヒトの探索の指針となる

Generalization guides human exploration in vast decision spaces

doi: 10.1038/s41562-018-0467-4

複雑で不慣れな環境において報酬を探索する際、すべての選択肢を探索することは不可能な場合が多い。汎化と楽観的なサンプリングの組み合わせが、複雑な環境で効率よく探索を行うための指針となる仕組みが明らかとなった。

Letter: 選択肢過多は背側線条体と前帯状皮質における選択肢集合の価値の神経指標を小さくする

Choice overload reduces neural signatures of choice set value in dorsal striatum and anterior cingulate cortex

doi: 10.1038/s41562-018-0440-2

選択肢が多すぎると、かえって不利な選択をしてしまう「選択肢過多」になることがある。線条体と前帯状皮質の活動は、意思決定への被験者の関与を選択肢の大きさの関数として反映していて、選択肢過多の指標となりうることが明らかとなった。

Letter: ネットワークは確率的な運動順序の学習可能性に制約を与える

Network constraints on learnability of probabilistic motor sequences

doi: 10.1038/s41562-018-0463-8

学習者は、ネットワーク・トラバースに基づく確率的な運動順序を学ぶ際に、高次のトポロジー的特性を利用していることが明らかとなった。

Letter: ヒトゲノム上にみられる同類交配の痕跡

Imprint of assortative mating on the human genome

doi: 10.1038/s41562-018-0476-3

理論に基づく予測から1世紀を経て、約400,000人の現代人のゲノムにおいて同類交配のゲノムシグネチャーが検出・定量され、身長および学業成績に関する同類交配の新たな遺伝的証拠が報告された。

Article: ヒトの知覚に基づく意思決定の行動指標と神経指標における年齢変化の折り合いをつける

Reconciling age-related changes in behavioural and neural indices of human perceptual decision-making

doi: 10.1038/s41562-018-0465-6

意思決定の基礎となるヒトの脳内信号の測定値をコンピューターモデリングと組み合わせることで、知覚に基づく意思決定の年齢による相違を探る。

Perspective: 社会科学と集団健康科学の方法によってヒトマイクロバイオームを理解する

Social and population health science approaches to understand the human microbiome

doi: 10.1038/s41562-018-0452-y

社会科学者と集団健康科学者が協力してヒトマイクロバイオームと社会環境との相互作用や共発展の仕組みを解明するための枠組みを提案する。

Letter: 言語ファミリーの進化は中立的浮動を超えて環境の影響を受けている

The evolution of language families is shaped by the environment beyond neutral drift

doi: 10.1038/s41562-018-0457-6

46の言語ファミリーの6,000以上の系統樹における環境因子と集団の大きさの系統的シグナルが推定され、環境は言語ファミリーの進化に中立的浮動を超えて影響を及ぼしていることが判明した。

Letter: Sardex通貨ネットワークにみられる循環的モチーフ

Cyclic motifs in the Sardex monetary network

doi: 10.1038/s41562-018-0450-0

新たな通貨制度(Sardex地域通貨)における取引の解析から、サイクル取引の普及率が時間の経過とともに高まることと、このサイクル内の経済活動がネットワークを介した線形取引よりも活発であることが判明した。

Letter: アラブ文化にみられる自己主張的な相互依存

Self-assertive interdependence in Arab culture

doi: 10.1038/s41562-018-0435-z

アラブは主要な文化的集団であるにもかかわらず、文化心理学において比較的軽視されている。「東洋」対「西洋」という支配的なパラダイムを越えることで、アラブ文化独特の自己主張的な相互依存がみられることが示唆される。

Article: 痛みに関する自己強化的な期待効果の行動学的・神経学的証拠

Behavioural and neural evidence for self-reinforcing expectancy effects on pain

doi: 10.1038/s41562-018-0455-8

痛みに関する事前の信念が、知覚する痛みの強さや、痛みの強さに関する学習の程度に影響を及ぼすことが明らかとなった。この知見は、信念が経験によって更新されにくい理由を説明する一助となる。

Article: 犯罪の種類と証拠が有罪の判断に及ぼす影響のモデル化

Modelling the effects of crime type and evidence on judgments about guilt

doi: 10.1038/s41562-018-0451-z

ハイスループットの実験計画および統計モデリングによって、陪審員や弁護士が、被告人の有罪の評価に際して、各種の犯罪や証拠の重さをどのようにはかっているかが明らかとなった。

Article: 若年期の非認知能力が学業・心理社会・認知・健康アウトカムに及ぼす影響の系統的レビューとメタ解析

A systematic review and meta-analysis of effects of early life non-cognitive skills on academic, psychosocial, cognitive and health outcomes

doi: 10.1038/s41562-018-0461-x

非認知能力が学業・心理社会・健康アウトカムの改善と関連することを示すエビデンスはあるものの、そうしたエビデンスは弱く、異質性が高いことが明らかとなった。この分野のより厳密な研究が求められる。

Perspective: 科学的発見やイノベーションにおいてジェンダー・ダイバーシティーを生かす

Making gender diversity work for scientific discovery and innovation

doi: 10.1038/s41562-018-0433-1

ジェンダー・ダイバーシティーを高めることは、研究や社会に大きな利益をもたらす可能性がある。チームの構成だけでなく、研究方法や研究の対象となる問いにおいてもジェンダー・ダイバーシティーを高めるための枠組みが提案される。

Letter: ロバストなデータ駆動型アプローチにより4つの大規模データセットから同定された4つの性格タイプ

A robust data-driven approach identifies four personality types across four large data sets

doi: 10.1038/s41562-018-0419-z

ビッグデータを利用して、人間をいくつかの性格タイプに確実に分類することができるのか、そして、性格タイプはいくつあるのかという問題が探られ、データセットから浮かび上がってきた4種類の性格タイプが同定された。

Letter: 行動科学を援用して作成された手紙はメディケア受益者のインフルエンザワクチン接種率を高める

Letters designed with behavioural science increase influenza vaccination in Medicare beneficiaries

doi: 10.1038/s41562-018-0432-2

228,000人の参加者を対象とした5群試験の結果、1通の手紙が郵送されることで、66歳以上のインフルエンザワクチン接種率が約1%上昇することが判明した。また、作成された手紙の構成は結果に有意差をもたらさなかった。

Letter: 悪人に関する見解は変わりやすい

Beliefs about bad people are volatile

doi: 10.1038/s41562-018-0425-1

道徳的な印象形成について、非対称なベイズ的更新機序が明らかとなった。この結果は、素行の悪い者に対する見解は、素行の良い者に対する見解に比べて不確かであり、それゆえ柔軟性が高いことを意味している。

Letter: 省エネルギーの予測に二次的な規範的信念が果たす重要な役割

The critical role of second-order normative beliefs in predicting energy conservation

doi: 10.1038/s41562-018-0434-0

211の独立の無作為化対照試験(N=16,198,595)のデータの解析から、二次的な規範的信念、すなわち、エネルギーの節約は環境のためになるという共同体構成員の信念は、省エネルギーの促進に重要な役割を果たすことが判明した。

Letter: コネクターハブ、モジュール性、認知の機構モデル

A mechanistic model of connector hubs, modularity and cognition

doi: 10.1038/s41562-018-0420-6

脳内ネットワークは、脳の領域内および領域間の情報の流れを決定するノードとハブを特徴とする。今回、ハブとノードの結合性に対する課題駆動型の変化がモジュール性を高め、認知能力を改善することが明らかとなった。

Article: 前思春期の子どもの身体活動を変化させるネットワーク介入

Network interventions for changing physical activity behaviour in preadolescents

doi: 10.1038/s41562-018-0436-y

7週間にわたる学校ベースの現場実験の結果、前思春期の子どもの身体活動は社会的報酬スキームによって高まること、また、女子は相互的スキームに対する感受性が高く、男子はチーム報酬スキームに対する感受性が高いことが明らかとなった。

Perspective: 社会的な脳を育てる

Growing a social brain

doi: 10.1038/s41562-018-0384-6

アロスタシスを保つために世話をしてくれる人々に依存する幼児は、社会的な環境を必要とする。自分の生理的変化を調節するために他者を必要とすることが、幼児の社会性の発達だけでなく脳の発達も左右することが提案される。

Letter: 2010~2015年に『Nature』と『Science』に発表された社会科学実験の再現性を評価する

Evaluating the replicability of social science experiments in Nature and Science between 2010 and 2015

doi: 10.1038/s41562-018-0399-z

Nature』と『Science』に発表された社会科学実験の再現が試みられ、21件のうち13件(62%)の再現に成功した。再現実験の効果サイズは当初の実験の約半分であった。

Letter: 通りやすい経路の形状によって都市の交通の流れを捉える

Communicability geometry captures traffic flows in cities

doi: 10.1038/s41562-018-0407-3

4つの都市の交通の流れの特性が数学的に解析され、文字どおりの最短経路ではなく、「全経路」の流れを前提とした、通りやすい最短経路の交通量が多いことが判明した。

Letter: 気候変動の緩和における差異ある責任と向社会的行動

Differentiated responsibilities and prosocial behaviour in climate change mitigation

doi: 10.1038/s41562-018-0418-0

一部の参加者にゲーム前の優位性を付与する複雑な気候変動のジレンマにおいては、有利なゲーム参加者は公益を維持するために後に向社会的に行動するが、不利な参加者は反社会的に行動し、協力による成功を減じる対立が生じる。

Letter: 幼児は勝者を好むが力による勝者は好まない

Toddlers prefer those who win but not when they win by force

doi: 10.1038/s41562-018-0415-3

人形どうしの争いを見せられた幼児は勝ったほうの人形を好むが、それはその勝利が力づくで得られたものではない場合に限られることがわかった。この結果は、幼児が社会的評価を行う際に社会的地位を考慮することを示唆している。

Letter: 脳磁図の解読から統合的決定過程には構造的な差があることが判明した

Magnetoencephalography decoding reveals structural differences within integrative decision processes

doi: 10.1038/s41562-018-0423-3

課題の複雑さや時間的制約への対処の仕方には個人差がある。そうした差が神経情報統合過程の時間的統合によって説明できることが、脳磁図を用いて明らかにされた。

Article: 意味特性ネットワークの初期の成長にみられる知識の空白

Knowledge gaps in the early growth of semantic feature networks

doi: 10.1038/s41562-018-0422-4

子どもの成長とともに言語の知識も増えていく。幼児の成長途中の意味ネットワークにおいて、知識の空白はトポロジカルな穴として顕在化することがわかった。こうした空白は、子どもが言葉を学ぶ順序とは無関係に、同じように進行する。

Article: N400脳電位を意味の確率的表現の変化としてモデル化する

Modelling the N400 brain potential as change in a probabilistic representation of meaning

doi: 10.1038/s41562-018-0406-4

N400誘発電位は脳内での意味の表現に至る窓であるが、不明な点も多い。今回、言語における意味への古典的な手法に頼らない、神経ネットワークモデルにおけるN400に関する統一的な説明が提案された。

Perspective: 更新世ホモ・サピエンスの「ジェネラリスト・スペシャリスト」のニッチを定義する

Defining the ‘generalist specialist’ niche for Pleistocene Homo sapiens

doi: 10.1038/s41562-018-0394-4

ヒト族のなかで最終的にヒトが生き残ってきた理由は、その生態学的な可塑性によって説明できるかもしれない。30万~1万2000年前のヒトの分散の証拠が再検討され、ヒトが特異な「ジェネラリスト・スペシャリスト」の生態学的ニッチを占めることで繁栄してきた可能性が提案される。

Review Article: 人生における「蓄え」の形成と高齢期における脆弱性の発生

Development of reserves over the life course and onset of vulnerability in later life

doi: 10.1038/s41562-018-0395-3

人生を通じて形成される生物学的、心理学的、認知的、情動的、経済的、関係的な「蓄え」は、逆境に対する緩衝としても逆境からの回復にも必要とされ、高齢期における脆弱性を理解するための枠組みとなる。

Letter: キリスト教は小規模で政治的に構造化された社会では速やかに広がった

Christianity spread faster in small, politically structured societies

doi: 10.1038/s41562-018-0379-3

キリスト教の拡散に関する複数の学説が、70のオーストロネシア文化を対象とした異文化間比較と歴史的データによって検証された。改宗に要した時間は、小規模で政治的に構造化された社会で最も短く、社会の不平等性の影響はなかった。

Letter: 比較的平等で出生力の高い集団における配偶者間の暴力と出生力

Marital violence and fertility in a relatively egalitarian high-fertility population

doi: 10.1038/s41562-018-0391-7

ボリビアの狩猟-農耕民であるチマネ族のパートナー間暴力の研究から、男性による暴力は、好ましい家族の大きさに関する意見が配偶者間で異なる場合に、配偶者間の出生力と男性の個人としての適応度を高めるように作用していることを示す証拠が得られた。

Letter: 社会的な決定の影響の不確かさは向社会的行動を増やす

Uncertainty about the impact of social decisions increases prosocial behaviour

doi: 10.1038/s41562-018-0372-x

経済ゲームと仮想的な感染症シナリオを用いた実験から、自分の決定がもたらす結果の不確かさは向社会的行動を減少させるが、決定が他者に及ぼす影響が不確かである場合には向社会的行動が増加することが判明した。

Letter: 感情の概念的知識は表情の表象的な構造を予測する

Conceptual knowledge predicts the representational structure of facial emotion perception

doi: 10.1038/s41562-018-0376-6

ヒトは表情から感情を認識することができる。感情の概念的表象と視覚認識との関連が調べられ、概念的に類似したものとして表象される感情は同等であると知覚されることが明らかとなった。

Article: 世界の憲法の進歩の仕組みを推測する

Inferring mechanisms for global constitutional progress

doi: 10.1038/s41562-018-0382-8

世界の憲法改正に関する競合する仕組みを解明、理解、定量化するために、時間的、ネットワーク的、階層的な影響が分析された。

Perspective: 弱いシグナルの社会的な意味

The social significance of subtle signals

doi: 10.1038/s41562-018-0298-3

ヒトの協力ネットワークの長期的な維持について理解するには、寛大さにかかわる弱いシグナルを研究することが重要である。例えば、マルトゥ族の女性たちの間にみられる低コストの食べ物の分かち合いは、コミットメントの姿勢を示し、協力による結びつきを強固にしている可能性がある。

Review Article: ヒトの協力の規範的基礎

Normative foundations of human cooperation

doi: 10.1038/s41562-018-0385-5

社会規範はヒトの協力の原動力であり、協力に関連したおもな規則性の説明となるという見方を裏づける有力な証拠が得られた。規範はピア懲罰の指針にもなり、人々は規範の形成を支える制度を強く好む。

Review Article: 直接互恵性におけるパートナーとライバル

Partners and rivals in direct reciprocity

doi: 10.1038/s41562-018-0320-9

社会的ジレンマにおけるゼロ行列式戦略と「ライバル」対「パートナー」戦略に関する最近の理論研究を組み合わせることで、進化の過程で利己的な戦略や協力的な戦略が現れる環境が明らかとなった。

Letter: 世界の人口密度の再現から農業の始まりを可能とする力が明らかになる

Hindcasting global population densities reveals forces enabling the origin of agriculture

doi: 10.1038/s41562-018-0358-8

21,000~4,000年前の世界の人口密度がモデル化され、環境条件が向上して人口増加の可能性が高まったことが、動物の家畜化や植物の栽培化の出現を促したことが明らかとなった。

Letter: ヒトの移動に保存量があることを示す証拠

Evidence for a conserved quantity in human mobility

doi: 10.1038/s41562-018-0364-x

約40,000人の移動の痕跡が高分解能で解析され、人々が日常的に訪れる場所は典型的には25か所だが、そうした場所は時間とともに変化し、個々人の社会的領域のサイズに比例していることが判明した。

Letter: 非協力的な社会どうしを相互に結びつけることが協力の進化を促す

Conjoining uncooperative societies facilitates evolution of cooperation

doi: 10.1038/s41562-018-0368-6

数学的解析、シミュレーション、現実世界の社会ネットワークの事例から、互いに隔絶した非協力的な社会の間に形成されるまばらな相互接続が全体的な協力関係の進化を支える仕組みが明らかとなった。

Letter: 網膜特異的なカテゴリー学習

Retinal-specific category learning

doi: 10.1038/s41562-018-0370-z

カテゴリー学習はこれまで、知覚系に依存しない高次の認知過程であるとされてきた。今回、手続き的なカテゴリー学習が、実際には低次の視覚表現に依存することが判明した。

Letter: 固定化と再固定化は行動学的・神経化学的な機序を共有している

Consolidation and reconsolidation share behavioural and neurochemical mechanisms

doi: 10.1038/s41562-018-0366-8

固定化された記憶は、検索の直後は再び不安定な状態となり、その間に変更されうる。この再固定化段階が、最初の固定化段階と同じ行動上・神経上の特性を示すことが明らかとなった。

Letter: 小児期・青年期に共起する素行面・情緒面の問題の遺伝学

Genetics of co-developing conduct and emotional problems during childhood and adolescence

doi: 10.1038/s41562-018-0373-9

小児期から青年期にみられる素行面と情緒面の問題の共起に対して遺伝因子が大きな影響を及ぼすことが、双生児とゲノムデータの解析から判明した。共起する症状がみられる者は、遺伝リスクが高い臨床的サブグループと見なしうる。

Letter: 経験的な影響モデルにおける社会的影響の最大化

Social influence maximization under empirical influence models

doi: 10.1038/s41562-018-0346-z

現実世界の社会的ネットワークの現実的な特性を組み込んだ、経験的に動機付けされた影響最大化モデルが特定され、従来のモデルより格段に大きい影響の広まりが予測された。

Letter: 「容認された盗み」理論と「資源交換による互恵的なリスク低減」理論の実験的検証

Experimental tests of the tolerated theft and risk-reduction theories of resource exchange

doi: 10.1038/s41562-018-0356-x

入手可能な資源量にばらつきがあるバーチャルな採集環境では、時間の経過とともに、リスクを減らそうとする参加者たちが内因的に相互交換関係を築くようになり、他者のもつ余剰資源を抵抗されずに持ち去る「容認された盗み」が少なくなることが明らかとなった。

Letter: ソーシャルネットワークにおけるモラル化と暴力的抗議行動の出現

Moralization in social networks and the emergence of violence during protests

doi: 10.1038/s41562-018-0353-0

2015年にボルティモアで発生した抗議行動に関するツイート文の解析と行動学的実験から、抗議行動の争点のモラル化が暴力行使への支持を強め、暴力的な抗議行動の増加を招くことが明らかとなった。

Article: 好ましい特性や善行を隠す理由を「シグナル埋め込みゲーム」で説明する

The signal-burying game can explain why we obscure positive traits and good deeds

doi: 10.1038/s41562-018-0354-z

評判の構築と間接的な互恵性に関する標準的なモデルにおいて、さりげなさ、慎み深さ、匿名の善行といった振る舞いがどのように維持されうるかを説明するゲーム理論モデルが作られた。

Article: 偶発的な社会的排斥は単純な学習機構から現れる

Incidental ostracism emerges from simple learning mechanisms

doi: 10.1038/s41562-018-0355-y

個人の社会的排斥は、初期の集団構造に基づいて偶発的に現れる場合があり、単純な強化学習機構によって広まる。この機構は、偶発的な社会的排斥を減らすために利用することができる。

Article: 「好みの問題」をめぐる社会的学習戦略

Social learning strategies for matters of taste

doi: 10.1038/s41562-018-0343-2

選択の根拠となる普遍的・客観的な事実がない「好みの問題」をめぐる社会的学習戦略の研究と、大規模データに基づく成績の検証が行われ、学習戦略の成功が、人々の経験レベルと、自分の好みを他者の好みと関連付ける様式の両方に依存する理由が明らかとなった。

Letter: 戦利品の分配ルールが自然群間の攻撃性を形成する

Spoils division rules shape aggression between natural groups

doi: 10.1038/s41562-018-0338-z

自然群間での競争実験の結果、競争で得た戦利品の不平等な分配が、既存の集団間関係の影響をくつがえし、特権を有する個人にかなり攻撃的な戦略を選択させる一方で、不利な立場の集団の構成員には防御的な戦略をとらせる場合があることが明らかとなった。

Letter: 自然言語による個性の発達

Personality development through natural language

doi: 10.1038/s41562-018-0329-0

ワシントン大学文章完成テストに対する約44,000件の回答の言語学的分析をもとに、自我の発達(成人期を通じた個性の発達)の構成概念について調べられ、それぞれの発達レベルに固有の言語学的マーカーが同定された。

Letter: 親の誤解を介入の標的とすることで不登校数が大幅に減る

Reducing student absences at scale by targeting parents' misbeliefs

doi: 10.1038/s41562-018-0328-1

個人宛ての手紙により子どもの不登校に対する親の誤解を補正する介入法は、現時点で最良の介入法と比較して、長期的な不登校を10%減らすことができ、費用効果もかなり高かった。

Letter: 国籍に関する素朴理論と移民排斥姿勢

Folk theories of nationality and anti-immigrant attitudes

doi: 10.1038/s41562-018-0334-3

米国とインドでは、国籍に対する人々の素朴な概念に柔軟性があり、シナリオによって、国籍を生物学的で生まれつき固定されたものと見たり、文化的で流動的なものと見たりしている。国籍は流動的なものであるとする考えからは、移民に対する肯定的な態度が予測される。

Article: 「共有地の悲劇」を乗り越えるために子どもがとりうる戦略

An investigation of children's strategies for overcoming the tragedy of the commons

doi: 10.1038/s41562-018-0327-2

共有資源実験の結果、6歳児の集団は共有資源の崩壊を回避することができ、成人と似た戦略を用いることが明らかとなった。

Article: 若年成人では覚醒は青斑核-ノルアドレナリン系を介した神経利得を高めるが高齢者ではそうではない

Arousal increases neural gain via the locus coeruleus–noradrenaline system in younger adults but not in older adults

doi: 10.1038/s41562-018-0344-1

若年成人は高覚醒状態では顕著な刺激を検出しやすくなる。高齢者では、覚醒はあらゆる刺激の処理を高める。この差は、青斑核-ノルアドレナリン系が皮質の注意ネットワークと相互作用する機構が加齢によって変化することで説明できる。

Perspective : 幸福の社会科学を発展させるために

Expanding the social science of happiness

doi: 10.1038/s41562-018-0308-5

幸福の社会科学にとって必要なことは、人間の幸福には社会的なつながりと向社会的な行動が重要であることを認め、社会科学者と政策立案者との広範な協調などにより、もっと学際的になることである。

Review Article: 主観的幸福感に関する研究の進展

Advances in subjective well-being research

doi: 10.1038/s41562-018-0307-6

文化の違いを越えた主観的幸福感に関する心理学研究と経済学研究の知見を考え合わせることで、いくつかの重大な疑問、今後の研究の優先順位、施策実施への道筋が見えてくる。

Letter: 中年期の自己報告による社会的支援は小児期の虐待に関連した早期死亡リスクに対する緩衝装置となる

Midlife self-reported social support as a buffer against premature mortality risks associated with childhood abuse

doi: 10.1038/s41562-018-0316-5

小児期に受けた虐待は早期死亡のリスクを高める。MIDUS研究で得られたデータから、成人期に社会支援を受けることが、小児期に受けた虐待の有害な影響を和らげる可能性があることが判明した。

Letter: ソ連時代とソ連崩壊後のエストニアにおいて遺伝が社会的アウトカムに及ぼす影響

Genetic influence on social outcomes during and after the Soviet era in Estonia

doi: 10.1038/s41562-018-0332-5

ソ連崩壊前後のエストニアで遺伝が学歴や就業に及ぼす影響を分析したところ、能力主義社会では遺伝が社会的アウトカムに及ぼす影響が格段に大きくなることが明らかとなった。

Letter: 世論調査による選挙結果予想の精度の時間的・空間的比較

Election polling errors across time and space

doi: 10.1038/s41562-018-0315-6

1942~2017年に45か国で実施された351の総選挙に伴う3万件の全国世論調査の解析から、一般に言われていることとは逆に、投票前の世論調査が外れる事例は増えていないことが判明した。

Letter: ソーシャルネットワークにおける単一属性親和性から「友だちの友だち」の類似性が生じる

Monophily in social networks introduces similarity among friends-of-friends

doi: 10.1038/s41562-018-0321-8

ソーシャルネットワークには「単一属性親和性(monophily)」と称するべき属性選択の過分散が認められ、この性質を利用して個人に関する隠れた属性情報を予測できることが明らかとなった。

Letter: イベントの分節化は短い時間内に符号化された競合経験から情動記憶を保護する

Event segmentation protects emotional memories from competing experiences encoded close in time

doi: 10.1038/s41562-018-0317-4

恐怖条件付けにおいてイベントの境界を作るためには、刺激の流れの小休止によりエピソード内の刺激の認識速度を調節するだけで足りる。

Letter: 道具の各部位を制御するために複数の運動記憶が学習される

Multiple motor memories are learned to control different points on a tool

doi: 10.1038/s41562-018-0324-5

道具の各部位は異なる扱われ方をすることが多い。ヒトが同じ物体の異なる部位に対して個別の運動記憶を構築する仕組みを説明する計算モデルが提案された。

Review Article: 青年期以降の男性にみられる反社会的行動

Male antisocial behaviour in adolescence and beyond

doi: 10.1038/s41562-018-0309-4

男性の反社会的行動は青年期にピークを迎え、その後は収まっていくとする年齢犯罪曲線は、異なる原因から犯罪に走る2つの別々の集団を一緒にしてしまっているという仮説を裏づける最近の証拠がまとめられた。

Letter: 知人の投票行動についての質問で選挙の予想が改善する

Asking about social circles improves election predictions

doi: 10.1038/s41562-018-0302-y

世論調査の回答者に対し、自らの投票意向に加えて知人の投票意向についても質問すると、2016年の米国大統領選挙と2017年のフランス大統領選挙における得票数の予想が改善することが明らかとなった。

Letter: ヒトの顔の意識の決定要因

The determinants of consciousness of human faces

doi: 10.1038/s41562-017-0266-3

ヒトの顔の意識的処理の決定要因がコンピュータ・データに基づく手法によって調べられ、ある顔が意識にのぼるまでの速さは、顔から知覚される力/優位性に依存することが判明した。

Letter: 流動性知能は言語システムではなくマルチデマンドのシステムによって支えられている

Fluid intelligence is supported by the multiple-demand system not the language system

doi: 10.1038/s41562-017-0282-3

健康な対照者のfMRIデータを使って、脳内のマルチデマンド領域と言語選択的領域の確率地図を構築し、患者の脳損傷を分類した結果、マルチデマンドによって重みづけされた損傷の容積のみから流動性知能の欠損が予測されることが判明した。

Article: 民族間の相互作用が有益な場合における少数民族文化の持続可能性

Sustainability of minority culture when inter-ethnic interaction is profitable

doi: 10.1038/s41562-018-0306-7

少数民族集団と多数民族集団の間の相互作用のモデルから、少数民族の成員は自由に行き来できるが、大きな力をもつ多数派の成員にはそれができないような境界を両集団の間に築くことで、少数民族の文化的な慣習を均質化から守れることが明らかとなった。

Article: バイアス-バリアンスのトレードオフは予測不能な環境でのオンライン学習にみられる個人差を左右する

A bias-variance trade-off governs individual differences in on-line learning in an unpredictable environment

doi: 10.1038/s41562-018-0297-4

ノイズを含む証拠からの学習にみられる個人差には、最適な推計を近似するサンプリング・アルゴリズムを用いるモデルによって最もうまく説明できるようなバイアス-バリアンスのトレードオフが関与していることが明らかとなった。

Article: 想像上の発声は音の大きさの知覚に影響する

Imagined speech influences perceived loudness of sound

doi: 10.1038/s41562-018-0305-8

心象-知覚パラダイムを用いることで、想像上の発声が音の大きさの知覚に影響を及ぼすことが判明した。初期の神経反応は、外部刺激がなくても音の大きさの評価と相関することも明らかとなった。

Letter: 英国バイオバンクのデータにおける教育と健康転帰との因果関係

The causal effects of education on health outcomes in the UK Biobank

doi: 10.1038/s41562-017-0279-y

1972年の学業終了の最低年齢の引き上げを自然実験として、学業の継続と健康との因果関係が調べられた。英国バイオバンクの大規模データから、学業の継続が糖尿病のリスクと死亡率を低下させることが判明した。

Letter: 少人数の議論から集められた知識は群衆の知恵より優れている

Aggregated knowledge from a small number of debates outperforms the wisdom of large crowds

doi: 10.1038/s41562-017-0273-4

集合知から得られる答えは個人の判断よりも優れていることが多い。群衆を多数の小規模な討議グループに分ける大規模実験の結果、個々の答えの平均よりも正確な答えが得られた。

Letter: 扁桃体の構造と、現状の社会システムを正当で望ましいものと見る傾向との関係

Amygdala structure and the tendency to regard the social system as legitimate and desirable

doi: 10.1038/s41562-017-0248-5

2つの脳画像研究から、扁桃体の体積が、社会の現状の(変化ではなく)維持を好む傾向と相関していることが判明した。

Article: ソーシャルネットワークの中に隠れる個人とコミュニティー

Hiding individuals and communities in a social network

doi: 10.1038/s41562-017-0290-3

ソーシャルネットワークのつながりの簡単な変更により、インターネット上の個人やコミュニティーが標準的なソーシャルネットワーク解析ツールによる検出を逃れられることが示された。

Article: 懲罰傾向の非対称性が文明化過程を推進する可能性

Asymmetries in punishment propensity may drive the civilizing process

doi: 10.1038/s41562-017-0278-z

暴力と衛生に関する社会規範が時代とともに厳格化する「文明化過程」の数学モデルが考案され、実証的に検証された。

Article: 機能と解剖学的ネットワークとの整合は認知の柔軟性と相関する

Functional alignment with anatomical networks is associated with cognitive flexibility

doi: 10.1038/s41562-017-0260-9

fMRIシグナルが、その基盤となる解剖学的ネットワークに対応しているか否かをグラフ信号処理によって調べた結果、機能シグナルと解剖学的構造との整合が、認知柔軟性の大きさと相関していることが明らかとなった。

Letter: 3つの大規模自然実験における内なる群衆の知恵

The wisdom of the inner crowd in three large natural experiments

doi: 10.1038/s41562-017-0247-6

現実社会で実施された大規模な推定コンテストのデータを用いて、同一人物が何度も推定を行った結果を集計した場合に精度が向上するか否かが検証された。その結果、推定の精度は向上するものの、別々の人の推定の結果を集計する場合に比べて、その幅はかなり小さいことが判明した。

Letter: 経頭蓋磁気刺激による音楽的報酬感受性の亢進・低下の調節

Modulating musical reward sensitivity up and down with transcranial magnetic stimulation

doi: 10.1038/s41562-017-0241-z

音楽を聴いている参加者の脳の前頭線条体路を交互に興奮させたり阻害したりすることで、この系が音楽に対する情緒的反応と動機付け反応の両方に介在するという証拠が得られた。

Letter: 世界における幸福感、収入の充足、ターニングポイント

Happiness, income satiation and turning points around the world

doi: 10.1038/s41562-017-0277-0

ギャラップ社による世界世論調査「ギャラップワールドポール」のデータの解析から、幸福感は収入の上昇とともに無制限に高まるわけではないことが判明した。世界的に、生活満足度に関しては約95,000米国ドルで、情緒的幸福に関しては60,000~75,000米国ドルで「収入の充足」がみられる。

Letter: 魔法使いというレッテルによって構造化される集団

Population structured by witchcraft beliefs

doi: 10.1038/s41562-017-0271-6

現地実験およびネットワークデータから、中国南西部の村落の大規模ネットワークでは、「魔法使い(zhu)」であるというレッテルが、労働の分担や結婚に影響を及ぼしていることが明らかとなった。このレッテルは向社会性の指標ではなく、ライバルをいじめたり傷つけたりする役割を果たしている可能性がある。

Article: 就学前小児とチンパンジーは反社会的な他者が罰を受けるのを見るためにコストを負う

Preschool children and chimpanzees incur costs to watch punishment of antisocial others

doi: 10.1038/s41562-017-0264-5

チンパンジーと6歳児は、罰を受けるに値する反社会的な他者が罰せられる状況を見るために自ら進んでコストを負うことが明らかとなった。この結果は、チンパンジーにも6歳児にも、正当な罰が下されるところを見たいという動機があることを示唆している。

Article: 課題依存性から明らかになったピッチ知覚の多様性

Diversity in pitch perception revealed by task dependence

doi: 10.1038/s41562-017-0261-8

11種類の実験の結果、従来「ピッチ知覚」と見なされてきた感覚には、複数の異なる機構が関与していることが明らかとなった。

Article: 乳児は左脳半球ではなく右脳半球で他者の顔を識別する

Right but not left hemispheric discrimination of faces in infancy

doi: 10.1038/s41562-017-0249-4

顔識別課題遂行中の磁気共鳴画像法および脳波記録から、生後半年以内の乳児では、脳梁が左右の脳半球の間で視覚情報をやり取りするのに十分なだけ成熟しているにもかかわらず、顔処理に片側化がみられることが判明した。

Article: ヒトの前頭前野における持続的な神経活動は知覚と行動を結びつける

Persistent neuronal activity in human prefrontal cortex links perception and action

doi: 10.1038/s41562-017-0267-2

多様な行動課題中のてんかん患者の頭蓋内記録から、ヒトの脳が、前頭前野ならびにこれと機能的に連結した脳領域での持続的な神経活動を介して知覚と行動を関連づけていることが、時間・空間的に極めて詳細に明らかとなった。

Perspective: 3つの現代的な研究プログラムにおける文化社会学と認知心理学の橋渡し

Bridging cultural sociology and cognitive psychology in three contemporary research programmes

doi: 10.1038/s41562-017-0242-y

認知的な帯域幅、道徳判断の二重過程、潜在的連合という3つの現代的な認知心理学研究において、行為者が様々な社会的状況で用いる文化的なスキーマ、枠組み、ナラティブ、スクリプト、境界によって定義される「文化的レパートリー」を考慮することが提案される。

Letter: 道徳的価値観とワクチン接種への躊躇との関連

Association of moral values with vaccine hesitancy

doi: 10.1038/s41562-017-0256-5

米国の親たちの大規模コホートを対象とした2つの調査で、純粋さと自由という道徳的価値観に関わる懸念が、ワクチン接種への躊躇と強く関連することが明らかとなった。この結果は、予防接種を呼びかける運動において、純粋さと自由に訴えかけることで、運動の効果が高まる可能性があることを示唆する。

Letter: 言語知識の増大は多次元的情動表現の発達をもたらす

Increasing verbal knowledge mediates development of multidimensional emotion representations

doi: 10.1038/s41562-017-0238-7

情動概念の表現は、小児期には正負の方向性を示す感情価に一次元的に集中し、成人期には多次元的に組織化されていることが明らかになった。情動表現の発達は、言語知識の増大によって促される。

Letter: 地域の気温は性格と関連する

Regional ambient temperature is associated with human personality

doi: 10.1038/s41562-017-0240-0

性格特性は地理的地域によって異なり、環境因子の影響が示唆されているが、中国と米国で実施された2つの大規模な研究により、地域の気温と性格が関連することが判明した。

Article: デフォルト・ネットワークと自己生成思考を生じる認知過程群

The default network and the combination of cognitive processes that mediate self-generated thought

doi: 10.1038/s41562-017-0244-9

4つの機能的MRI実験の結果、自己生成的な精神活動中には複数の認知過程が同時に機能していることが明らかとなった。

Article: 自殺関連概念や情動概念の神経表現の機械学習によって希死念慮のある若者を同定する

Machine learning of neural representations of suicide and emotion concepts identifies suicidal youth

doi: 10.1038/s41562-017-0234-y

生と死に関連する概念の神経表現に機械学習を適用し、希死念慮のある若者を見つける高精度の生物学的分類法が開発された。

Article: パターンから逸脱したものへの嫌悪を社会的烙印や偏見と関連づける

Relating pattern deviancy aversion to stigma and prejudice

doi: 10.1038/s41562-017-0243-x

非社会的なパターン逸脱に対する人々の嫌悪と社会的逸脱者に対する嫌悪には重なる側面があることが複数の研究で判明した。

Perspective: ストレス関連障害と闘う戦略としてのレジリエンスの枠組み

The resilience framework as a strategy to combat stress-related disorders

doi: 10.1038/s41562-017-0200-8

ストレス関連障害の高い有病率を減らす取り組みは過去数十年にわたって失敗が続いており、別の研究戦略を探る気運が高まっている。多くの人は心理的または肉体的な逆境にさらされても心の健康を保っており、この現象はレジリエンスと呼ばれる。レジリエンス研究では、ストレス関連障害の病態生理の解明は目指さず、障害の発生を防ぐ防御機構に焦点を当て、その知見をいかして治療法と予防法を改良しようとする。レジリエンス研究の可能性を十分に引き出すためには、現在のレジリエンス研究の基本概念および主要な手法を批判的に評価する必要がある。本総説では、レジリエンス研究上の課題について述べ、レジリエンス研究をより良いものにするために概念上および方法論上の具体的な提案をする。最も重要なのは、前向き縦断研究でみられるストレス要因に対する適応成功の動的過程に研究を集中させることである。

Letter: 150万件の医学論文の解析から論文著者のジェンダーと研究における社会的・生物学的性差への注目との関連が明らかに

One and a half million medical papers reveal a link between author gender and attention to gender and sex analysis

doi: 10.1038/s41562-017-0235-x

医学研究論文の大規模データベースの解析から、論文著者に女性が含まれていることと、その研究に社会的および生物学的な性差に関する分析が含まれていることとの間に相関関係があることが明らかとなった。

Article: 消費者向け直接広告における文意の希釈がもたらす予想外の影響

The unintended consequences of argument dilution in direct-to-consumer drug advertisements

doi: 10.1038/s41562-017-0223-1

医薬品の消費者向け直接広告には、重篤な副作用だけでなく高頻度で現れる副作用も記載することが求められている。この慣行が、副作用の全般的な重症度に関する消費者の判断を鈍らせていることが明らかとなった。

Article: リスク選好性研究の難しさ

The risk elicitation puzzle

doi: 10.1038/s41562-017-0219-x

リスクの選好性は、異なる行動誘導法を用いて測定すると異なる結果になることが明らかとなり、単一の行動誘導法を用いて矛盾なく測定できるとする従来の考え方に疑問が投げかけられた。

Article: 自信の特異性

The idiosyncratic nature of confidence

doi: 10.1038/s41562-017-0215-1

行動実験とコンピューターモデリングを用いて、自信の個人差が系統的に記述された。

Article: ドーパミン報酬系は社会的選好のジェンダー差の基礎になる

The dopaminergic reward system underpins gender differences in social preferences

doi: 10.1038/s41562-017-0226-y

女性は男性より社会的な行動をとることが多い。薬物および神経イメージングを用いた研究の結果、社会的な報酬に対する女性の神経報酬系の感受性は男性より高い傾向があり、この性差の神経生物学的な説明となることが判明した。

Article: 左右の脳半球と2つの視覚経路は群衆の情動のアンサンブル・コーディングに異なる寄与をする

Differential hemispheric and visual stream contributions to ensemble coding of crowd emotion

doi: 10.1038/s41562-017-0225-z

ヒトが群衆の表情からその情動を読み取る仕組みが調べられ、個人の表情から情動を読み取る場合とは行動上および神経上の有意差があることがわかった。

Perspective: 言語、心、脳

Language, mind and brain

doi: 10.1038/s41562-017-0184-4

「言語とは、階層的に構造化された無数の表現を生み出す、生物学的に決定された計算機構である」という定義と齟齬をきたさない、言語の神経構造に関する見解が概説される。

Letter: クレオール言語の出現中でも文法は確実に伝達される

Grammars are robustly transmitted even during the emergence of creole languages

doi: 10.1038/s41562-017-0192-4

クレオール言語どうしは非常によく似ている。この類似性は非クレオール言語の形成と同じ過程によって説明可能であり、違いは、クレオール言語が2つ以上の言語に由来する点にあることがわかった。

Letter: 先行対処的な警察活動を控えることで重大犯罪が減る可能性を示す証拠

Evidence that curtailing proactive policing can reduce major crime

doi: 10.1038/s41562-017-0211-5

ニューヨーク市警察が2014年に先行対処的な警察活動を控えたことを自然実験として用いることで、この期間中とその後に市民による重大犯罪の申し立てが減少したことが明らかとなり、先行対処的な警察活動をめぐるこれまでの研究に疑問が投げかけられた。

Letter: 基準率の侵入」による統計的に不正確で倫理的に不正な判断

Statistically inaccurate and morally unfair judgements via base rate intrusion

doi: 10.1038/s41562-017-0218-y

人々が個人について判断を下す際には、それが統計的に不適切なものであっても、社会的な基準率に系統的に頼っていることがわかった。「基準率の侵入」によるこのバイアスを除去するためには複数の解決策が求められる。

Letter: 意味地図が明らかにする情景中の注意の意味に基づく誘導

Meaning-based guidance of attention in scenes as revealed by meaning maps

doi: 10.1038/s41562-017-0208-0

複雑な情景の解釈には、視覚情報の選択的なフィルタリングが必要である。「意味地図」を用いた研究から、情景中の視覚注意を主に導くのは顕著な特徴ではなく意味であることが明らかになった。

Article: 経済的不平等に対する脳の反応パターンから現在および未来のうつ病傾向を予測する

Brain response patterns to economic inequity predict present and future depression indices

doi: 10.1038/s41562-017-0207-1

機能的磁気共鳴画像法、経済ゲーム、抑うつの自己報告を組み合わせた研究により、不平等によって誘発される扁桃体と海馬の脳活動から、現在と未来のうつ病傾向を予測できることが判明した。

Article: 7つの集団間の異質性による「隠れた遺伝率」

Hidden heritability due to heterogeneity across seven populations

doi: 10.1038/s41562-017-0195-1

7つの集団から得られた全ゲノムデータのメガ解析から、学業達成度と生殖行動に関してかなり大きな「隠れた遺伝率」の存在が明らかとなり、複雑な形質における試料特異的な遺伝子-環境相互作用の重要性が判明した。

Review Article: 人生における個人の価値観

Personal values in human life

doi: 10.1038/s41562-017-0185-3

個人の価値観に関する研究の20年間を振り返る。自己申告された価値観は主観的なものではあるが、そこから様々な態度や好みを予測することができ、ヒトの行動に関する貴重な洞察が得られる。

Letter: 世界の地下水管理における社会的転換点

Social tipping points in global groundwater management

doi: 10.1038/s41562-017-0181-7

世界の地下水資源は過剰な汲み上げによって危機的な状況にある。協力・集団行動理論を組み入れたエージェント・ベース・モデルは、地下水枯渇の危機に直面する3地域につき、地下水資源保全に対する社会的態度の転換点を明らかにした。

Letter: 互恵性と共有財の維持・提供の悲劇

Reciprocity and the tragedies of maintaining and providing the commons

doi: 10.1038/s41562-017-0191-5

新たな公共財を提供するときよりも既存の公共財を維持するときのほうが高い確率で低レベルの協力(「共有地の悲劇」)がみられる傾向があり、インセンティブが同じであってもこの傾向に変わりはないことが、実験とシミュレーションによって示された。

Article: 教師なし深層学習と自然画像の特徴の再利用から文字知覚が現れる

Letter perception emerges from unsupervised deep learning and recycling of natural image features

doi: 10.1038/s41562-017-0186-2

文字知覚の計算モデルが深層学習に基づいて開発され、自然の光景から抽出される領域一般的な視覚知識が、印刷文字などの領域特異的な文化的人工物の学習に再利用されることが示された。

Article: 経済発展における伝染性の崩壊と複雑性の罠

Contagious disruptions and complexity traps in economic development

doi: 10.1038/s41562-017-0190-6

サプライチェーンの崩壊が経済全体に伝染的に広がる仕組みが明らかにされた。頻繁に起こる崩壊への適応は「貧困の罠」の出現につながる可能性がある。「ビッグプッシュ」式の経済発展政策との関係についても論じられる。

Article: 「献身的な行為者」の戦いへの意欲と紛争の精神的次元

The devoted actor’s will to fight and the spiritual dimension of human conflict

doi: 10.1038/s41562-017-0193-3

前線の兵士と非戦闘員を対象とした研究から、集団間の紛争において戦って死ぬことへの意欲が、物質的な関心事を犠牲にした神聖な価値の優先や、内集団および敵の精神的な強さの認識と相関していることが判明した。

Article: ヒトの強化学習における後続表現(successor representation)

The successor representation in human reinforcement learning

doi: 10.1038/s41562-017-0180-8

計算学習メカニズムとしては、速いが柔軟性を欠く「モデルフリー」システムと柔軟性はあるが遅い「モデルベース」システムが有力だが、その中間形である「後続表現(successor representation)」が定式化され、有効性の証拠が示された。

Letter: 直観と熟考が協力に果たす役割に関する一般的な進化的枠組み

A general evolutionary framework for the role of intuition and deliberation in cooperation

doi: 10.1038/s41562-017-0152

熟考のコストが変動するモデルでは、戦略的無知やベイズ学習を含む一連の協力戦略から、二重過程的非協力者(直観的には非協力的だが、熟考により協力を選択する可能性がある)が進化しうる。

Letter: ヒエラルキーの逆転に対する嫌悪は社会における再分配を阻害する

Rank reversal aversion inhibits redistribution across societies

doi: 10.1038/s41562-017-0142

人間は不平等を好まないことが過去の研究で報告されている。しかし、比較文化実験の結果、人間は幼い頃から、ヒエラルキーを逆転させるような再分配は望まないことがわかった。

Letter: 無神論者に対する極度に直観的な道徳的偏見が世界的に存在している証拠

Global evidence of extreme intuitive moral prejudice against atheists

doi: 10.1038/s41562-017-0151

世界13か国での調査から、無神論者に対する直観的な道徳的不信(無神論者による他の無神論者への不信も含む)の存在を示す証拠が得られた。

Letter: ノイズを含む数を比較する際には大きい数が選択的に重視される

Selective overweighting of larger magnitudes during noisy numerical comparison

doi: 10.1038/s41562-017-0145

数の重みづけ、積算、比較に関する神経基盤と計算基盤の研究から、大きい数は系統的に重視され、頭頂葉皮質全体に強い神経シグナルを生じることがわかった。

Letter: 皮質線条体の機能的結合の局在からヒトの目的指向行動を予測する

Functional corticostriatal connection topographies predict goal-directed behaviour in humans

doi: 10.1038/s41562-017-0146

安静時fMRIを用いて推定されたヒトの線条体結合の局在は、霊長類での結合追跡研究で推定された結果と合致していることが明らかになった。結合の個人差は、複数の目的指向行動の予測指標となる。

Letter: ドーパミン作動薬はパーキンソン病患者における最新の感覚情報への信頼を高める

Dopaminergic medication increases reliance on current information in Parkinson’s disease

doi: 10.1038/s41562-017-0129

神経伝達物質のドーパミンとパーキンソン病は、不確実な状況下での意思決定にどのように影響を及ぼすのだろうか? パーキンソン病患者で不足し、その治療に用いられるドーパミンは、意思決定の際に新規情報と既知情報のどちらを重視するかに影響を及ぼすことが明らかになった。

Resource: 環境を変化させて人々の行動を変化させる介入の類型学

The TIPPME intervention typology for changing environments to change behaviour

doi: 10.1038/s41562-017-0140

食品、アルコール、タバコの選択、購入、消費に関する介入をTIPPMEという枠組みにより分類することで、健康関連行動を変容させる介入の系統的な報告と解析が可能になる。

Letter: ヨーロッパ人は亡命希望者の比例的な割当を支持する

Europeans support a proportional allocation of asylum seekers

doi: 10.1038/s41562-017-0133

欧州諸国は亡命希望者をどのように分担するべきか? 現行制度では、EU域内に来た難民は最初に入った国で難民申請をすることになっているが、ヨーロッパ人の大半は、各国の受け入れ能力に応じて申請希望者を分担することを支持している。

Letter: 注意の限界と質の悪い情報のネット上での拡散

Limited individual attention and online virality of low-quality information

doi: 10.1038/s41562-017-0132

質の悪い情報がネット上で急激に拡散するのはなぜか? ネット上のソーシャル・メデイアのモデルから、情報負荷が高く注意に限界がある現実の状況下では、情報はその質の高低を問わずほぼ等しく拡散する可能性があることが明らかとなった。

Letter: 行動学的政策介入を政治と関連づけるのは不適切

On the misplaced politics of behavioural policy interventions

doi: 10.1038/s41562-017-0130

党派的なフレーミングは行動学的政策介入の倫理性の評価に影響を及ぼすが、米国の成人も実際の政策立案者も、党派に関わる情報を除去した「ナッジ」をよく受け入れることが判明した。

Letter: 協力関係の腐敗と反腐敗戦略が裏目に出るとき

Corrupting cooperation and how anti-corruption strategies may backfire

doi: 10.1038/s41562-017-0138

腐敗のコスト、原因、解決法をモデル化した実験により、反腐敗戦略がときに逆効果となる場合があることが示された。

Letter: 自分の努力で他者を助ける向社会的行動への無関心

Prosocial apathy for helping others when effort is required

doi: 10.1038/s41562-017-0131

ヒトは、報酬が自らのものになる場合と他者に渡る場合に、自分が努力をするか否かをどのように選択するのだろうか?現実的な努力課題と計算モデルを用いた研究から、他者のために働こうとする動機付けは小さいことが判明した。

Letter: 知覚に対する自信は脳内における決定と調和しない証拠を無視する

Perceptual confidence neglects decision-incongruent evidence in the brain

doi: 10.1038/s41562-017-0139

ヒトが知覚に対する自信を計算する際には、その脳内で決定と調和しない証拠を十分に用いていないことが、頭蓋内記録および機械学習法によって明らかとなった。

Perspective: 脳の制御と心の制御

Mind control as a guide for the mind

doi: 10.1038/s41562-017-0119

工学の一分野であるネットワーク制御理論は、認知障害の治療や知能の向上のために心の状態を調節する方法の開発に役立つ可能性がある。

Letter: テロリストにみられる結果指向の道徳的評価

Outcome-oriented moral evaluation in terrorists

doi: 10.1038/s41562-017-0118

通常、特定の行為が道徳的に許容されるか否かは意図と結果を考え合わせることによって判断されるが、コロンビア人の武装テロリストを対象とした道徳的判断および社会認知プロファイルの評価から、テロリストの道徳律では行為の結果が異常に重視されていることが明らかとなった。

Letter: 集団の意思決定における確信度のマッチング

Confidence matching in group decision-making

doi: 10.1038/s41562-017-0117

文化的に異なる状況(英国とイラン)で得られた行動データおよびコンピューターモデルから、2人1組で意思決定を行う際には、互いの意見を結びつけるために確信度のマッチングの経験則が用いられていることがわかった。

Letter: 睡眠中の運動記憶固定における2つの強化メカニズム

Dual enhancement mechanisms for overnight motor memory consolidation

doi: 10.1038/s41562-017-0111

運動技能の記憶は睡眠中に固定されて強化される。「オフライン」の記憶改善を支える神経回路は、記憶の獲得様式(暗黙的学習または明示的学習)によって異なることが明らかとなった。

Letter: 前期石器時代の道具製作の基盤となる機能的脳内ネットワーク

The functional brain networks that underlie Early Stone Age tool manufacture

doi: 10.1038/s41562-017-0102

アシュール文化の石器製作技術が出現したのは175万年前のことだが、同じ時期に初期人類の認知能力の変化が起きていた可能性がある。機能的近赤外分光法による神経イメージングから、現代人がアシュール石器を製作する際には、ピアノの演奏などにかかわる脳内ネットワークを用いていることがわかった。

Article: 覚醒と関連した知覚バイアスの調節は動的環境における知覚を最適化する

Arousal-related adjustments of perceptual biases optimize perception in dynamic environments

doi: 10.1038/s41562-017-0107

事前の予測は知覚にどのような影響を及ぼすのだろうか? このほど、動的環境における知覚バイアスの調節には覚醒が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。覚醒は、予測可能な環境では事前の予測からの知覚バイアスを大きくし、予測不可能な環境では知覚バイアスを小さくしていた。

Perspective: ヒトの行動研究と多様性

Systems of (non-)diversity

doi: 10.1038/s41562-017-0088

ヒトの行動研究の目標は、ヒトのあらゆる種類の行動を同定し、理解することにあるが、研究対象、研究手法、研究者の多様性の欠如は、研究の土台を崩壊させる。多様性を欠くシステムは、ヒトの行動研究という科学を危うくする恐れがある。

Letter: 気候変動はヒトの身体活動パターンを変える可能性がある

Climate change may alter human physical activity patterns

doi: 10.1038/s41562-017-0097

2002~2012年における米国居住者190万人の身体活動への参加に関するデータを、日々の気温データと組み合わせた結果、このまま温暖化が進んだ場合、将来の身体活動パターンが変化する可能性があることが明らかになった。

Letter: 友人の死後におけるソーシャルネットワーク上のつながりの回復

Connective recovery in social networks after the death of a friend

doi: 10.1038/s41562-017-0092

フェイスブック上の15000のネットワークの解析から、インターネット上のソーシャルネットワークは、メンバーの死から立ち直ることが判明し、メンバーの死後に友人間の交流が増加し、何年も安定して続くことがわかった。

Letter: どのような手段で生計を立てているかがヒトの社会的学習の戦略を決める

Subsistence styles shape human social learning strategies

doi: 10.1038/s41562-017-0098

エチオピアの同じ民族集団から最近分岐した3集団が参加した一連の意思決定実験から、相互に依存している「牧畜民」と独立心の強い「園芸民」では、社会的学習への依存に差があることが判明した。

Letter: 極端な利他主義における社会的割引および社会的距離の認識

Social discounting and distance perceptions in costly altruism

doi: 10.1038/s41562-017-0100

赤の他人を助けるために大きなコストを負担する「極端な利他主義者」は、他人との社会的距離を誤解しているのではなく、遠く隔たった人の幸福を主観的に高く評価していることが明らかになった。

Letter: 社会ネットワーク上の位置付けの自発的な神経符号化

Spontaneous neural encoding of social network position

doi: 10.1038/s41562-017-0072

社会ネットワーク解析とfMRIデータのマルチボクセル・パターン解析を組み合わせることにより、ヒトの脳は、ネットワーク内の相手との社会的距離、相手の固有ベクトル中心性、相手がネットワーク構成員間の結びつきをどの程度仲介するかを、自発的に符号化していることが判明した。

Article: 幸せな記憶の想起は急性ストレス反応を緩和する

Reminiscing about positive memories buffers acute stress responses

doi: 10.1038/s41562-017-0093

肯定的な内容の記憶の想起は、ストレス反応を和らげるだけでなく、報酬を処理する皮質線条体回路の活性化と相関していることが明らかとなった。幸せな記憶の回想はストレス耐性を高める可能性がある。

Article: ヒトにおけるアロスタシスおよび内受容感覚を支える大規模脳システムの存在を示す証拠

Evidence for a large-scale brain system supporting allostasis and interoception in humans

doi: 10.1038/s41562-017-0069

サルおよびヒトで得られたデータの解析から、内受容感覚(体内から湧き起こる感覚)およびアロスタシス(脳が身体内のエネルギー調節を維持するプロセス)を支える脳内システムが見つかった。

Perspective: 格差社会が好まれる理由

Why people prefer unequal societies

doi: 10.1038/s41562-017-0082

格差が問題になって久しいが、不平等は不公平とは違う。このほど、人々が経済的不平等ではなく経済的不公平を不快に思うことを示すエビデンスがまとめられた。

Letter: ネット書店からの数百万件の共購買履歴は、党派によって消費する科学情報に差があることを明らかにする

Millions of online book co-purchases reveal partisan differences in the consumption of science

doi: 10.1038/s41562-017-0079

米国を代表する2つのネット書店のデータに基づく共購買ネットワークの解析から、リベラル派と保守派では読んでいる科学書のタイプに顕著な差があることが判明した。選択的曝露は党派間の相互理解を難しくする恐れがある。

Letter: 研究上の関心の推移にみられるパターンを定量する

Quantifying patterns of research-interest evolution

doi: 10.1038/s41562-017-0078

論文の発表記録の大規模解析とランダムウォークモデルから、科学者のキャリアを通じた研究上の関心の推移には規則的で再現可能なパターンがみられることが明らかとなった。

Article: ヒトのメンタライジングにおける信念、欲求、知覚の合理的で定量的な帰属

Rational quantitative attribution of beliefs, desires and percepts in human mentalizing

doi: 10.1038/s41562-017-0064

意思決定シナリオにおけるヒトの精神状態と判断を推定・定量するベイズ的「心の理論」モデルが作られた。このモデルは、人間の思考や欲求を「直観する」機械を実現するうえで重要な一歩となる。

Article: 楽観的強化学習の行動的・神経的解析

Behavioural and neural characterization of optimistic reinforcement learning

doi: 10.1038/s41562-017-0067

「楽観バイアス」が、悪い結果より良い結果を優先的に学習する一般的な認知傾向の現れであることを示す行動的・神経的なエビデンスが得られた。

Article: 健康な人の極端な表現型のエキソーム配列解読により、TROVE2遺伝子が情動記憶およびPTSDと結びつけられた

Exome sequencing of healthy phenotypic extremes links TROVE2 to emotional memory and PTSD

doi: 10.1038/s41562-017-0081

心的外傷後ストレス障害では感情を刺激する出来事の記憶の増強がみられるが、炎症反応や自己免疫に関与する遺伝子TROVE2は、この現象にも関連している。

Review Article: 視覚探索中に注意を誘導する5つの因子

Five factors that guide attention in visual search

doi: 10.1038/s41562-017-0058

ヒトは自分が探しているものをどのようにして見つけているのか? 視覚探索中の注意を誘導する5つの因子について論じる。

Letter: インド南部農村地域における社会的支援ネットワークと信仰心

Social support networks and religiosity in rural South India

doi: 10.1038/s41562-017-0057

インドの農村部で収集した詳細な民族誌的データから、向社会的宗教行為をする人は、社会的ネットワークの構成員から向社会的な人と認識される結果、より大きな社会的支援を受けられることが明らかとなった。

Letter: ワクチン普及活動において集団免疫について説明するとよい理由

On the benefits of explaining herd immunity in vaccine advocacy

doi: 10.1038/s41562-017-0056

集団的利益を重視する文化圏ではワクチン接種への意欲が高いことが明らかとなった。向社会的傾向の乏しい文化圏では、集団免疫の概念を伝えることがワクチン接種への意欲を高める。

Letter: 賢明な熟慮が協力関係を維持する

Wise deliberation sustains cooperation

doi: 10.1038/s41562-017-0061

経済ゲームで熟慮する時間が与えられると、参加者は非協力的になっていく。参加者を第三者的視点に立たせることで、利己的な目的に向かっていた意識を共通の目的に向かわせ、協力関係を維持させることができる。

Letter: 身体的相互作用をするパートナーは相手の運動の目的を推定してその運動を促す

Physically interacting individuals estimate the partner’s goal to enhance their movements

doi: 10.1038/s41562-017-0054

2人のヒトが接触を介して運動を学習していくしくみについてのモデルを提案する。このモデルを組み込んだロボットをパートナーにした場合も、参加者は同じように学習することができた。この結果は、身体介助ロボットを開発するうえで重要である。

Article: ヒトの意味的知識とその障害の統合モデル

A unified model of human semantic knowledge and its disorders

doi: 10.1038/s41562-016-0039

意味表象については、個別のシステムが多様なものごとを表象するという領域特異的な説明と、あらゆる種類の知識が1つのネットワークにコードされるという領域一般的な説明があるが、この2つを統合する神経基盤モデルが構築された。

Article: 脳卒中回復期の行動クラスターと能力の予測因子

Behavioural clusters and predictors of performance during recovery from stroke

doi: 10.1038/s41562-016-0038

脳卒中患者の大規模コホートから12か月にわたって収集したデータから、大半の回復が3か月以内に起こることと、当初の障害の重症度と患者の教育レベルからそれが予測されることが判明した。

Review Article: 公正さの発達的基盤

The developmental foundations of human fairness

doi: 10.1038/s41562-016-0042

小児における公正な行動の発達に関する最近の行動学・神経科学的証拠の総合的な検討から、ヒトの公正さを示す特徴は乳児期に現れることがわかった。

Letter: 経済的不安定と米国の学校における銃による暴力の増加

Economic insecurity and the rise in gun violence at US schools

doi: 10.1038/s41562-016-0040

1990~2013年の米国の学校における銃による暴力事件を解析した結果、発生率が最も高いのは2007~2013年であったことが判明した。経済危機の諸指標は、銃による暴力の発生件数の増加と有意に相関していた。

Letter: 狩猟採取民のネットワークの評価と累積文化への影響

Characterization of hunter-gatherer networks and implications for cumulative culture

doi: 10.1038/s41562-016-0043

狩猟採集民の社会的相互作用を追跡する無線センサーが開発され、コンゴ共和国とフィリピンの狩猟採集民では、血縁関係のない家族間を結びつける少数の強固な友人関係が、より効率的な社会的ネットワークを形作ることが明らかとなった。

Letter: 原始子音は原始母音と同じ生体音響学的特徴を持ち、情報量が多かった

Proto-consonants were information-dense via identical bioacoustic tags to proto-vowels

doi: 10.1038/s41562-017-0044

オランウータンのキス・スキーク音(無声の子音様の鳴き声)は音の変化に富み、明瞭な音響的特徴を示し、集団、サイズクラス、状況、個体の識別に関する情報を伝える。

Letter: 前言語期の乳児は攻撃者から被害者を守る第三者の介入を肯定する

Preverbal infants affirm third-party interventions that protect victims from aggressors

doi: 10.1038/s41562-016-0037

6つの実験から、生後わずか6か月の乳児が、攻撃者から被害者を守る第三者の介入を肯定することが明らかとなった。ヒトはこうした行為を重視するが、今回の実験は、前言語期の乳児の心にまでその起源を辿れることを示唆している。

Letter: ヒト連合野における数量性に関する神経地図のネットワーク

A network of topographic numerosity maps in human association cortex

doi: 10.1038/s41562-016-0036

超高磁場機能的磁気共鳴画像法を用いてヒトの脳を調べたところ、連合野内の大きく離れた6か所に数量性(集合中のものの数の知覚)をコードする神経地図が見つかった。

Article: 知覚学習はヒトの意思決定における知覚後処理を変える

Perceptual learning alters post-sensory processing in human decision-making

doi: 10.1038/s41562-016-0035

知覚学習課題の訓練後にヒトの知覚感受性が改善するのは、初期の知覚情報処理が速くなるからではなく、知覚後の後期の意思決定処理が速くなるからであることが明らかとなった。

Perspective: 社会科学は結果主義になるべきか?

Should social science be more solution-oriented?

doi: 10.1038/s41562-016-0015

Duncan Wattsは、社会科学の諸分野が具体的で扱いやすい実社会の問題を研究目的とすることの利点について考察し、解決策を重視する社会科学の例を挙げ、その有効性を論じる。

Perspective: 「再現可能な科学」のためのマニフェスト OPEN

A manifesto for reproducible science

doi: 10.1038/s41562-016-0021

再現性をめぐる議論をリードする研究者たちは、科学的プロセスの鍵となる要素を最適化できるような方策の採用を求めている。

Letter: 都市現象の発生頻度、スケーリング、差異を説明する

Explaining the prevalence, scaling and variance of urban phenomena

doi: 10.1038/s41562-016-0012

Gomez-Lievanoらは、経済複雑性と文化進化のモデルを統合することにより、学歴の分布や犯罪の発生率などの都市現象が人口規模に伴ってどのように変化するかという「都市のスケーリング」の新たな理論を提唱する。

Letter: スーパーマーケットの客は首尾一貫性を最大化する方向に探索を行う

Coherency-maximizing exploration in the supermarket

doi: 10.1038/s41562-016-0017

Rieferらはスーパーマーケットの28万人以上の客の数年分の購入履歴を解析し、客の好みによって選択が決まるのではなく、客が下した選択によって好みが決まることを明らかにした。

Letter: ヒトにおける同類婚の遺伝学的証拠

Genetic evidence of assortative mating in humans

doi: 10.1038/s41562-016-0016

一塩基多型の全ゲノムデータおよび全ゲノム関連解析の結果を用いた研究により、ヒトが自分と似た表現型形質をもつ相手との結婚を好むことには遺伝学的な原因と結果があることが明らかとなった。

Article: 成人後に経済的負担となる少人数の集団を小児期に予測する

Childhood forecasting of a small segment of the population with large economic burden

doi: 10.1038/s41562-016-0005

40年におよぶ出生コホート研究から得られたデータを複数の行政データベースと結びつけることで、人口の20%が経済的負担の約80%の原因となることが明らかとなった。注目すべきは、この集団が3歳の時点から高い精度で予想できることである。

Letter: 視覚空間の知覚を調節する注意

Attention modulates perception of visual space

doi: 10.1038/s41562-016-0004

3次元空間内での視覚による定位のアンカリングに注意が重要な役割を果たすことが明らかになった。注意の効果が、見えている地面に左右されるという発見は、陸上生物であるヒトの視覚系が、その生態学的ニッチによって支えられていることを示唆する。

Letter: 音楽の進化の実験から見えてきたリズムの普遍性

Musical evolution in the lab exhibits rhythmic universals

doi: 10.1038/s41562-016-0007

ランダムに生成したドラム音のシークエンスを実験参加者が耳で聞いて真似し、次の人に伝えていく実験から、ランダムなシークエンスが、ワールドミュージックにみられる6つの統計的な普遍的特性を備えた、リズミカルに構造化されたパターンへと変換されていくことが明らかになった。

Article: 確信の明示的表現は将来の価値に基づく意思決定のための情報になる

Explicit representation of confidence informs future value-based decisions

doi: 10.1038/s41562-016-0002

人間は選択を行うたびに、その選択に対する確信の明示的表現を保持している。視線追跡および行動測定の結果、意思決定に対する確信のなさを追跡することが将来の行動を導くのに役立つことがわかった。

Letter: 恐怖対象への意識的な暴露を伴わない脳活動の強化学習による恐怖反応緩和

Fear reduction without fear through reinforcement of neural activity that bypasses conscious exposure

doi: 10.1038/s41562-016-0006

国際電気通信基礎技術研究所および情報通信研究機構の小泉愛研究員たちのグループは、恐怖条件付けされた刺激を表す視覚野の活動パターンを報酬と結び付けることで、恐怖対象を明示せずに、参加者に恐怖対象を見せたり、訓練の目的を気づかせることなく、恐怖反応を緩和できることを報告している。

Letter: 顔の評価は統計的学習により形成される

Statistical learning shapes face evaluation

doi: 10.1038/s41562-016-0001

あらゆる顔は、環境中から抽出される顔の統計分布中に位置づけられる。顔にもとづく社会的推論(例えば、信用できそうな顔)は、この学習された分布中の統計的な位置から生じている。

Letter: 病原体の蔓延度は男女平等の文化的変化と関連する

Pathogen prevalence is associated with cultural changes in gender equality

doi: 10.1038/s41562-016-0003

米国および英国における過去数十年間の病原体蔓延度の低下は、男女不平等の緩和と関連している。感染症の有病率の低下は男女不平等の緩和に先立って生じるため、両者の間には因果関係があることが示唆される。

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