大腸がんにおいて異常なDNAメチル化によりエピジェネティックに不活化される長鎖非コードRNA遺伝子の網羅的探索
A genomic screen for long noncoding RNA genes epigenetically silenced by aberrant DNA methylation in colorectal cancer
2016年5月24日 Scientific Reports 6 : 26699 doi: 10.1038/srep26699
長鎖非コードRNA(lncRNA)は、様々な細胞現象において重要な因子であることが明らかになってきているが、その生理学的および病理学的な機能については十分にわかっていない。我々は、がんに関連したlncRNAを同定するために、大腸がんにおいてエピジェネティックに不活性化されているlncRNAのスクリーニングを行った。大腸がん細胞におけるヒストン修飾の全ゲノム解析を行い、DNA脱メチル化後にヒストンH3リジン4がトリメチル化(H3K4me3)される、1,027ヶ所のlncRNA遺伝子の転写開始点(TSS)を見出した。クロマチンシグネチャーとDNAメチロームの統合的な解析から、66個のlncRNA遺伝子のプロモーターにおけるCpGアイランド(CGI)が、がんで特異的にメチル化されることが明らかになった。さらに大腸がん細胞におけるlncRNA遺伝子群の発現とメチル化を検証することで、最終的にZNF582-AS1を含む20個のlncRNAを、大腸がんにおけるエピジェネティックな不活性化の標的として同定した。ZNF582-AS1は大腸がん細胞株(87.5%)、原発性大腸がん(77.2%)、大腸腺腫(44.7%)および進行した腺腫(87.8%)で高頻度にメチル化されていることから、このメチル化は大腸がんの腫瘍形成において初期に起こっていることが示唆される。ZNF582-AS1のメチル化は、大腸がん患者の生命予後不良と相関を示し、ZNF582-AS1を異所的に発現させると大腸がん細胞のコロニー形成が抑制された。我々の発見は、がんにおけるエピジェネティックな変化とlncRNAの制御異常の関連についての知見を示しており、ZNF582-AS1が新規の腫瘍抑制性lncRNAである可能性を示唆するものである。