皮膚とリンパ節間の樹状細胞の遊走および抗原輸送の追跡と定量化
Tracking and quantification of dendritic cell migration and antigen trafficking between the skin and lymph nodes
2014年8月12日 Scientific Reports 4 : 6030 doi: 10.1038/srep06030
皮膚由来の樹状細胞(DC)は、皮膚から所属リンパ節(dLN)へ抗原を輸送し、免疫恒常性の維持に非常に重要な役割を担っている。我々は、生体内での皮膚由来DCの時空間的制御を定量化するために、光変換型蛍光タンパク質KikGRを発現するノックインマウスを作製した。我々は、このマウスの皮膚もしくはdLNを紫色光に曝露することによって、内在性の皮膚由来DCをラベルし、その遊走を追跡、および組織内でのターンオーバーを解析した。ランゲルハンス細胞およびランゲリン+CD103+真皮DC(DDC)を含むCD103+ DCは皮膚からdLNに遊走後4~4.5日間、dLNにとどまったが、一方、CD103−DDCは2日間しかとどまっていなかった。皮膚刺激物質(化学ストレス)の塗布は、皮膚からdLNへのCD103−DDC遊走を定常時に比べ10倍以上、一時的に増加させた。一方。テープの剥離(機械的損傷)を皮膚に与えると、CD103−DDCのdLNへの遊走を長期にわたり4倍に増加し、この細胞による外来タンパク質抗原の輸送を加速させた。両方のストレスは共に、dLN内でのCD103−DDCのターンオーバーの増加と、dLNに到着1日以内の細胞死を引き起こした。従ってCD103−DDCは、皮膚からdLNへの細胞遊走および抗原輸送の増加によって、皮膚への侵襲に対応する見張り役として機能する。
戸村 道夫1,2,3, 畑 明宏1, 松岡 達1*, Francis H. W. Shand3,4, 中西 保貴1, 池渕 良洋1, 上羽 悟史3, 筒井 秀和5, 稲葉 カヨ6, 松島 綱治3, 宮脇 敦5,7, 椛島 健治8, 渡邊 武1** & 金川 修身3***
- 京都大学 医学研究科 次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点 創薬研究グループ
- 理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター 自己免疫制御研究グループ
- 東京大学大学院 医学系研究科 分子予防医学教室
- メルボルン大学(オーストラリア)
- 理化学研究所 脳科学総合研究センター 細胞機能探索技術開発チーム
- 京都大学大学院 生命科学研究科 体制統御学 生体応答学
- 独立行政法人 科学技術振興機構 ERATO宮脇生命時空間情報プロジェクト
- 京都大学大学院 医学研究科 皮膚科学
*現所属先:福井大学 医学部 統合生理学
**現所属先:田附興風会 医学研究所 北野病院
***現所属先:明石市立市民病院