教材活用事例

すぐ近くにもあった太陽系外惑星

太陽にもっとも近い恒星プロキシマ・ケンタウリに惑星が存在していることが明らかになった。宇宙空間では「すぐ隣り」にある惑星系ということになるが、その惑星はどのような環境なのだろうか。生命体が存在する可能性はあるのだろうか。新たに見つかったこの太陽系外惑星に寄せられる期待は大きい。

こんな近くに惑星系があった!

人類は太陽系以外の惑星を探し続けており、現在までに3,000個以上の太陽系外惑星が発見されている。太陽からもっとも近い位置(4.2光年)にある恒星として知られるプロキシマ・ケンタウリに惑星が存在することが最近の研究成果から明らかになった。プロキシマ・ケンタウリは赤く非常に暗い星で、肉眼では見ることができない。

現在の天文学の技術では、惑星を直接観測するほど望遠鏡の解像度は高くないので、中心にある恒星から届く光から惑星が存在する可能性を探ることになる。動画で紹介されているように、恒星の周囲に惑星が存在していると、惑星の重力は恒星にも影響を及ぼし、恒星が「ふらつく」ように動く。このときの恒星の速度は、星からの光を波長ごとに分解して得られるスペクトルを調べると求めることができる。

救急車がサイレンを鳴らして近づいてくると音が高く聞こえ(音の波長が短くなる)、遠ざかっていくと音が低く聞こえる(音の波長が長くなる)。これはドップラー効果として知られており、理科の授業でも扱われる。光も波として伝わるので同じ現象が起こり、光源が近づいてくれば光は青っぽく見え(光の波長が短くなる)、遠ざかっていれば赤っぽく(光の波長が長くなる)なる。惑星をもった恒星であれば、恒星からの光の波長がその「ふらつき」の動きによって周期的に変動するわけだ。

地球に似た惑星プロキシマb

プロキシマ・ケンタウリからの光の変動周期はおよそ11日。当初、天文学者はこの変化が恒星自体の変動現象であろうと考えていた。しかし長期間の観測により、これは惑星の運動によるものだということが明らかになった。

プロキシマ・ケンタウリを軌道運動する惑星は、プロキシマbと名付けられた。まだ発見されて間もないことから、私たちはこの惑星系について十分な知識があるわけではないが、プロキシマbは岩石質の小型の惑星で、地球よりも少し大きく、恒星の周りを11日で一周すると考えられている。プロキシマ・ケンタウリとプロキシマbの距離は、太陽と地球の距離に比べると短いが、プロキシマ・ケンタウリは太陽の7分の1の大きさなので、星の表面温度はそれほど高くなく、液体の水の存在も指摘されている。こうなると「プロキシマbには生命は存在するのか」という点に関心が寄せられる。

だが、恒星表面ではフレアと呼ばれる激しい爆発現象が起きていて、強力なX線や電子、陽子などの粒子が惑星の表面に降り注いでいる可能性がある。こうなると、現在の科学知識では生命体の存在を期待できない。

私たちはひとりぼっちか?

実は太陽も、太陽フレアやコロナ質量放出などの爆発現象を起こしているが、地球には厚い大気の層と磁場があり、生命体が生存できる環境がつくり出されている。もし、プロキシマbにも地球と同じように大気や磁場が存在すれば、どうだろう。

宇宙で生命体が生存できる領域を「ハビタブル・ゾーン」と呼ぶ。そこは水が液体として存在することができ、二酸化炭素が凍ってドライアイスにならない程度の環境だ。今回の研究は、地球にもっとも近い位置にある恒星に惑星が発見されたということだけでなく、もっとも近い位置にハビタブル・ゾーンにある惑星が存在することを明らかにした。

人類の宇宙航行の技術では、4.2光年の距離を移動するために数万年を必要とするが、今後、革新的な技術開発によって銀河系内の直接的な探査活動が行われるとしたら、プロキシマbは真っ先に候補の天体となるだろう。

Nature ダイジェスト で詳しく読む!

太陽系から最も近い恒星に、地球に似た惑星

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161115

学生との議論

太陽系外惑星の見つけ方

Lisa-Blue/E+/Getty

人間は遠い昔から、地球外に生命体がいないかとSETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence:地球外知的生命探査)と呼ばれるプロジェクトで「仲間探し」を続けている。

恒星の周囲を軌道運動する小さな惑星をどのように検出するのかは、学生たちにとって興味のある話題らしい。動画で紹介された恒星のふらつきを検出するほかにも、惑星を検出する方法がある。

恒星の大きさに比べると一般に惑星はかなり小さいが、惑星が恒星の前を横切るときに恒星からの光の一部を遮り、光の強さをわずかに弱める。この状況を周期的に観測できれば、惑星による光の変化であると予測できる。このとき、恒星からの光が惑星の大気を通過するため、惑星大気がどのような成分でできているかもスペクトルの分析によって知ることができる。

さらに近年は望遠鏡の分解能も向上しており、惑星を直接観測して発見する例も報告されている。

これらの方法を用いて惑星が観測されると、生命体が存在するのかどうかが気になってくる。広い宇宙の中で生命体はこの地球にしかない、ということは説得力に欠ける。いつの日か、地球外生命体と交信する日がやってくるのだろうか。

学生からのコメント

柴崎 啓介

「ハビタブル・ゾーン」は、この地球に生命体が存在しているという揺るぎない事実に基づいて考えられた概念だが、それぞれの惑星に特化した環境の中で、私たちとまったく違ったしくみで存在している生命体が存在しない、と言い切れるのだろうか?(柴崎 啓介)

齋藤 雅弥

もっとも近い恒星まで、現在の技術で数万年もかかるという。気の遠くなるような時間を短縮するために、NASAが革新的な航法技術を研究しているとの記事を目にしたことがある。SFみたいな研究も、やがては実現可能な技術になるのかと興味をもったことを思い出した。(齋藤 雅弥)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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