2025年6月号Volume 22 Number 6
深刻化する買い物中毒という病
米国、トルコ、ポーランドなどの国の大学生の3分の1近く、そして中国では全人口の29.1%が強迫的に買い物をしているという調査結果が得られた。その背景の1つには、人々を買い物に夢中にさせるゲーミング戦略を駆使するeコマース企業の存在がある。こうした戦略に対しては規制強化の動きも見られ始めている。
Editorial
News in Japan
日本の科学研究を改革するには「人」への投資が不可欠だ
東京大学大学院理学系研究科教授の合田圭介を筆頭とした研究者138人がNatureで日本の研究助成改革を提言。合田は、プロジェクト単位ではなく研究者への柔軟で長期的な資金提供がイノベーション促進に不可欠と主張する。
News in Focus
ジャンクフード漬けになると脳活動はどう変化するのか
スナック菓子などを短期間に大量摂取すると、体重は増加しなくても、脳活動には長期的な変化が生じる。
世界の乳がんは増加傾向で生存率に大きな格差
低・中所得国では乳がん検診が実施されておらず、治療の選択肢も少ないため、乳がんの死亡率が高い。
「サイレント」X染色体が女性の脳をよりレジリアントに
X染色体にある脳を保護する遺伝子が加齢とともに活性化することが、研究により示唆された。
博士課程学生の学術界での成功に研究室の規模が影響
大規模な研究グループで訓練を受けた研究者は、小規模な研究グループで訓練を受けた研究者よりも学術界で大きな成功を収める傾向がある。
独占記事:NIHが現行の数百件の研究助成を打ち切りへ
Natureが入手した文書により、LGBT+の健康、ジェンダーアイデンティティー、生物医学分野の職場における多様性・公平性・包摂性(DEI)に関連する研究が打ち切りになる恐れがあることが明らかになった。
ビスマスなどの金属を原子レベルの薄さにする手法
小さなアンビルを用いて金属を圧縮することで、奇妙な特性の極薄シートが作製された。
中国最高裁がペーパーミルの厳重な取り締まりを要請
中国の最高裁判所に当たる最高人民法院が下級裁判所に向けて、有料で偽論文を生産する企業は処罰しなければならないとする指導的意見を発表した。
Features
アルコールとがんのリスク
どの程度の飲酒量で、がんのリスクは上昇し始めるのだろうか? 専門家に聞いた。
人工衛星の大群に直面する天文学
スペースX社などの企業が数万機の通信用人工衛星の打ち上げを計画している。こうした計画は、天文学観測の邪魔になり、大気を汚染する可能性がある。
買い物依存症が世界で流行中
中国からブラジルやドイツまで、世界中で買い物依存症の人が急増している。その背景の1つに、人々を買い物に夢中にさせるゲーミング戦略を駆使するeコマース企業の存在がある。
Japanese Author
Free access
ピエゾでひもとくメカノセンシングの全貌
機械刺激を電気信号へ変換するメカノセンシングの中核分子として、ピエゾタンパク質が注目を集めている。京都大学の野々村恵子教授は、培養細胞スクリーニングによって同定されたピエゾ1/2のノックアウトマウス解析の有用性をいち早く見抜き、呼吸制御からリンパ管の弁形成まで、メカノセンシングの生体臓器での多彩な生理機能の解明に成功した。
News & Views
2段階の業務評価で人種的偏見は減ずる
業務評価は5段階が一般的だが、たった2段階の評価で容易に、人種的偏見を和らげ、マイノリティー集団の被雇用者に対する所得不平等を明白に改善できる可能性がある。
鰓と耳は同一の「遺伝的青写真」を共有している
魚類の鰓と哺乳類の外耳は、外見上ほとんど似ていない。しかし、それらを支える主要な軟骨組織は類似の胚細胞を起源とし、進化的に保存された遺伝子調節プログラムに誘導されて形成することが、比較ゲノミクスによって明らかになった。
Advances
フレア警報
地球は間もなく危険な太陽活動の早期警報を受け取れるようになるだろう。
ペンギンと作る汚染地図
換羽で抜け落ちた羽毛が、水銀の脅威を地図化するのに役立つ。
Where I Work
Juan Ramón Fernández Cardenete
Juan Ramón Fernández Cardeneteは、アルハンブラ宮殿(スペイン・グラナダ)の生物学者。
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