2010年11月号Volume 7 Number 11

乳がんの原因タンパク質がついに単離

約15年間におよぶ努力の結果、乳がん感受性タンパク質BRCA2が、ついに単離・精製された。この物質をコードする遺伝子に異常があると、乳がんや卵巣がんなどが発生する確率が高まること、また、このタンパク質がDNA鎖の損傷を修復することなどが、すでにわかっている。今回の成果によって、抗がん剤の研究などが飛躍的に進むと期待されている。

Editorials

ハーバード大学の進化生物学・心理学の著名教授による科学的不正行為が衝撃を与えている。大学による調査概要は出たが、不正行為に無関係と思われる研究室員などへの影響は深刻だ。

Top of page ⤴

News in Japan

長浜バイオ大学の山本章嗣教授らの研究グループは、電子線トモグラフィーを使ってマウス細胞の内部構造を三次元で解析し、小胞体が「オートファゴソーム」の起源であることを明らかにした。オートファゴソームとは、細胞の自己分解作用(オートファジー)において、細胞内の不要物を包み込む膜構造のことで、この膜がどこからできるのかは長い間の謎だった。この成果は、2009年12月のNature Cell Biologyに掲載された。

Top of page ⤴

News

ハッブル宇宙望遠鏡により、1987年に地球の非常に近くで爆発した超新星の経過がとらえられ、その秘密が明らかに。

メキシコ湾原油流出事故の際、深海で噴出したエタンやプロパンを細菌がどれくらい「食べた」かが明らかになった。

南極と北極を結ぶマラソンフライトにより大気中の微量ガスのサンプルを採取し、気候モデルを検証する取り組みが進められている。

アルツハイマー病とクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)という2つの深刻な脳変性疾患にそれぞれかかわる2種類の重要なタンパク質の間に、意外な結びつきがあることを、Nature2010年2月26日号でStephen Strittmatterらが報告したとき、この分野の研究者たちは皆、たいへんな成果が得られたという評価で一致した。しかし、それから1年も経たずして、対立する結果が2010年8月のNatureの論文などに報告され、それまでの明るい見通しは一転して暗雲に閉ざされてしまった。改めて、アルツハイマー病の進行を食い止める方法を探し出すことの困難さが浮き彫りになっている。

カメルーンのニオス湖に蓄積する二酸化炭素のガス抜き事業は、10年近い時間を経て最終段階に差しかかっている、とプロジェクトの研究者は口をそろえる。しかしアフリカには、今すぐか将来かは別にして、深刻な危険をはらむ湖がさらに2つある。

Top of page ⤴

News Features

犬は、旧石器時代から飼われている我々の古くからの友だちである。最近、ヒト神経精神疾患に関与する遺伝子スクリーニングが目的で、イヌに注目が集まっている。人間は犬と新しい相互関係を作るのだろうか。

タンパク質、宇宙線、天文学、人類考古学などの領域で、一般市民の頭脳を活かすネットワークが実際に機能するようになり、新しい科学の進め方として飛躍のときを迎えている。

骨格は、単に体を支える以上の役割を果たしているのかもしれない。骨が代謝を調節する「器官」として浮上しており、骨こつ粗そ鬆しょうしょう症だけでなく糖尿病との関連性もみえてきた。

Top of page ⤴

Japanese Author

地球はこれまでに少なくとも3度、全球が凍結する事態を経験したことがわかってきた。さらに、その全球凍結直後に大気中の酸素が大量に増える出来事(イベント)が起きたことも明らかになり、両者の因果関係に注目が集まっている。田近英一博士らは、2つのイベントをつなぐ具体的証拠を突き止め、生命進化の謎に迫る成果をもたらした。

Top of page ⤴

News & Views

2009年9月に発生したサモア沖地震は、性質を異にする2つの大きな地震が、ほとんど同じ時刻に、非常に近い場所で発生するという不思議な地震だったようだ。どちらか一方の地震が他方の地震を誘発したと考えられるが、どちらの地震が、どのような機構で、後続の地震を誘発したのだろうか?

アト秒分光法を利用して、クリプトンイオンの電子の動きがリアルタイムで追跡され、原子から取り出された電子と残されたイオンとの間のエンタングルメント(量子もつれ)が調べられた。

Top of page ⤴

英語でNature

堆積物の研究から、かつて地球が一時的に寒冷化した原因が彗星の衝突にあるとする学説が否定された。

Top of page ⤴