2025年5月号Volume 22 Number 5
マイクロプラスチック粒子の脅威
マイクロプラスチックの人体への蓄積が急増しており、その健康への影響の解明が急務となっている。マイクロプラスチック粒子は脳内の微小血管を詰まらせる可能性が指摘されているが、詳細は明らかになっていない。現在、研究方法の国際的な標準プロトコルの構築と、プラスチック生産規制の国際条約交渉が進められている。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「卵の最適な調理法は周期的加熱」「COVIDワクチンがブレークスルー感染を抑制する仕組み」「衛星画像が明らかにする熱帯雨林の崩壊」「生後1カ月の赤ちゃんでもにおいを嗅ぎ分けられる」、他。
News in Focus
アルツハイマー病の早期発症を防ぐ可能性がある複数の遺伝子
認知症の発症を何十年間も食い止めるのに役立った可能性のある9つの遺伝子バリアントが特定された。
長年の隔離がグリーンランド人の独特な遺伝的構造を形成した
グリーンランド人は数百年にわたる隔離の結果、北極域特有のバリアントを含む遺伝子プロファイルを持つようになった。
生活苦と就職難で博士課程入学者が減少
一部の国では、生活費の高騰と一向に増えない奨学金が、博士課程入学者数の減少の原因となっている。
高被引用論文著者の多くが撤回経験を持つ
論文を撤回したことのある研究者は、自己引用率が高く、論文出版数も多い傾向がある。
ディープマインド社の数学AIが競技大会の金メダリストに比肩
幾何学に特化した同社のAI「AlphaGeometry 2」が国際数学オリンピックの幾何学の問題に挑戦し、歴代の金メダリストに匹敵する成績を上げた。
トランプ政権から重要データを守るため科学者らが奮闘
米国疾病管理予防センターのウェブページの一部が削除されたことを受けて、アーカイブ作業が進められている。
Features
加齢の「分子時計」が示す健康とは?
潤沢な研究資金と人々の期待を受けて、研究者らはエイジング、すなわち加齢の測定方法を改善しようと取り組んでいる。
マイクロプラスチックが健康に及ぼす影響
マイクロプラスチックは環境中の至る所に存在する。そして、私たちの腎臓、肝臓、肺、脳にも存在している。この微小な粒子の影響を解明しようと、研究者らの奮闘が続いている。
インターネットやAIは人間の記憶力に影響を及ぼしているか?
検索エンジンやGPS地図などのテクノロジーは、私たちの学習能力や記憶力を変えてしまう恐れがある。科学者らは今、AIが私たちの能力に影響を及ぼす可能性について研究している。
World View
ジェンダーギャップに取り組む東京大学
東京大学では、経済支援制度や意識改革キャンペーンなど、さまざまな取り組みによって学内の環境が変わりつつある。
Comment
日本は研究助成の優先順位を再考するべきである
科学的探究の進化する要求に遅れずについていくためには、日本は個々の学問分野の狭い枠にとらわれた助成戦略を手放さなければならない。
Japanese Author
Free access
免疫細胞に異常なミトコンドリアを送り込む、がん細胞の巧妙な生存戦略
がん細胞は、抑制性の免疫細胞や線維芽細胞を増殖させるなど、自らの生存に有利な特殊な微小環境を構築している。岡山大学学術研究院医歯薬学域腫瘍微小環境学分野の冨樫庸介教授らの研究チームは、がん細胞の異常なミトコンドリアが腫瘍浸潤リンパ球に伝播することで、T細胞の機能を障害し、免疫から逃避していることを見いだした。
News & Views
短尾鳥類はジュラ紀に出現していた
19世紀の始祖鳥の発見により、鳥類が恐竜類から進化したことが明らかになった。今回新たに発見された、始祖鳥と同年代の初期鳥類の化石は、長い尾の喪失などの飛行を助ける新機軸がこの段階で出現していたことを示している。
宇宙ミッションに適した超弾性チタン合金
今回、軽量で高強度かつ柔軟性を有し、液体ヘリウム並みの低温、沸騰水を超える高温下であっても大きな変形後に元の形状に回復する、驚くべきチタン合金が設計された。
銀河団のプラズマの運動をX線で見る
宇宙論と天体物理学において大きな意味を持つ問題である、巨大な銀河団で電離したプラズマがどう運動するかについて、X線分光撮像衛星(XRISM)の観測でこれまでにない詳細が分かった。
Advances
キラー電子の雨
大気圏の雷が引き金となってはるか上空の放射線帯から危険な粒子が解放される。
Where I Work
Mariola Sánchez-Cerdá
Mariola Sánchez-Cerdáは、グラナダ大学(スペイン)動物学部の博士課程学生、生物学者。
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