News & Views

細胞増殖へのコミットは不可逆的でない

細胞は増殖する際、DNAを複製し、続いて倍加したゲノムと細胞内容物を2つの新しい細胞に分割するよう運命付けられる。細胞増殖へのコミット(細胞の運命が決定されて後戻りできなくなること)は、増殖因子(マイトジェン)というタンパク質に依存しており、不可逆的なスイッチが入ることに例えられる。このスイッチは制限点と呼ばれ、DNA複製開始前(細胞周期のG1期後期)に存在している。このモデルによれば、制限点を通過する前、すなわちスイッチが入る前に増殖因子を除去すると、細胞は細胞周期から離脱して静止期(G0期)と呼ばれる非増殖状態に戻る。一方、スイッチが入った後で増殖因子を除去した場合には(図1a)、細胞はDNA複製と分裂を1回完遂してから静止期に戻る1,2。少なくとも、これまではそう考えられてきた。だが、このモデルに異議を唱えるデータを、国立がん研究所(米国メリーランド州ベセスダ)のJames A. Cornwellら3Nature 2023年7月13日号の363ページで報告している。

全文を読むには購読する必要があります。既に購読されている方は下記よりログインしてください。

翻訳:藤山与一

Nature ダイジェスト Vol. 20 No. 10

DOI: 10.1038/ndigest.2023.231040

原文

A lack of commitment to proliferation
  • Nature (2023-07-05) | DOI: 10.1038/d41586-023-02136-0
  • Alexis R. Barr
  • インペリアルカレッジ・ロンドン臨床科学研究所および MRCロンドン医科学研究所(英国)に所属。

参考文献

  1. Zetterberg, A. & Larsson, O. Proc. Natl Acad. Sci. USA 82,5365–5369 (1985).
  2. Pardee, A. B. Proc. Natl Acad. Sci. USA 71, 1286–1290 (1974).
  3. Cornwell, J. A. et al. Nature 619, 363–370 (2023).
  4. Bielski, C. M. et al. Nature Genet. 50, 1189–1195 (2018).
  5. Davoli, T. & de Lange, T. Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 27, 585–610 (2011).
  6. Otsuki, L. & Brand, A. H. Dev. Cell 49, 293–300 (2019).
  7. Zeng, J., Hills, S. A., Ozono, E. & Diffley, J. F. X. Cell 186, 528–542 (2023).
  8. O’Leary, B., Finn, R. S. & Turner, N. C. Nature Rev. Clin.Oncol. 13, 417–430 (2016).
  9. Arora, M. et al. Cell 186, 2628–2643 (2023).