2016年3月号Volume 13 Number 3

最期の病

がんなどの疾患の末期になると、患者は基礎疾患に伴うさまざまな代謝異常で筋肉量が著しく減少し、痩せて衰弱する。この代謝異常の症候群は悪液質(cachexia;カヘキシー)と呼ばれ、2400年前のギリシャの医学者ヒポクラテスも認識していた。だが、現在も対処法がなく、医師からの説明も少ないために、患者とその家族は不安と苦悩を抱えて残りの時間を過ごすことが少なくない。そうした中、2001年のある発見を皮切りに急速に解明が進み始め、基礎疾患とは別の疾患として治療できる可能性が見えてきた。

Editorial

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News

エボラ出血熱からの回復者の血漿で患者を治療できると期待されていたが、最初の臨床試験では死亡率の有意な低下は見られなかった。だが専門家たちは検討の余地があると見ている。

2015年12月にパリで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議は、途上国を含む全ての国が加わって、地球温暖化を2℃未満に抑えることを目指す、画期的な協定を採択した。

日本を含む5カ国でマウナケア山に建設中の30メートル望遠鏡(TMT)について、ハワイ州最高裁判所は建設許可を無効とした。

がんの発生に大きな影響を及ぼすのは環境要因なのか内的要因なのかをめぐり、研究者の間で論争が起きている。

ヒトゲノム編集の倫理的、社会的、法的な問題が議論され、各国の見解の相違が浮き彫りになったが、合意が得られた部分もあった。

原料となる海藻の収穫量が減少し、微生物培養に欠かせない寒天培地の生産が危機的状態に陥っている。

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News Features

中絶胎児の組織を研究に使用することについて、米国では論争が巻き起こり、殺人事件も発生している。しかし、多くの科学者が「こうした研究はHIVや発生などの研究に不可欠だ」と言う。

がんなどの疾患の末期になると、患者は筋肉量が著しく減少し、痩せて衰弱する。この状態は悪液質と呼ばれる。この機序が、ようやく少しずつ明らかになってきた。

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Japanese Author

地球の生物は、地球の自転に応じた24時間周期の昼夜変化に同調して生きている。例えばヒトでは、体温、睡眠、ホルモン分泌などが24時間のリズムを刻んでいる。このような概日リズムは、脳の 視交叉上核にある体内時計が機能することで刻まれ、光や温度変化のない条件でも認められる。一方、ヒトのような中枢神経系を持たない植物にも、日長や季節に応じた花芽の形成、細胞の伸長などが見られる。京都大学生命科学研究科の遠藤求准教授らは、シロイヌナズナの体内時計を組織ごとに破壊し、維管束では日長、葉肉では温度というように情報を別々に処理していることを突き止めた。

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News & Views

制御性T細胞と呼ばれる免疫細胞は、老化に伴って脂肪に蓄積していく。このような細胞が持つ抗炎症活性により、老化関連型の代謝障害が悪化することが明らかになった。一方、肥満関連型の代謝障害には影響を及ぼさないという。

マグネシウム合金中にナノサイズのセラミック粒子を均一に分散させることで、これまで難しかったマグネシウム合金における強度の大幅な向上に成功、ついに限界の壁を打ち破った。このマグネシウム複合材料は、構造用の軽量金属材料として大いなる可能性を秘めている。

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News Scan

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