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2017年8月号

News: 薬の効果を左右するのはマイクロバイオーム?

一部の患者で治療薬が効かなかったり副作用が出たりする理由は、腸内細菌や腸内細菌が産生する酵素によって説明できるのかもしれない。

News: がん治療に役立つ細胞地図

「免疫細胞ガイド」で、適切な治療法が選択可能になるかもしれない。

News & Views: がん再発を早期探知できる液体生検

肺腫瘍の進化に関するゲノム情報が血液から得られることが実証され、がん再発の初期兆候の臨床モニタリングが可能なことが報告された。プレシジョン(高精度)医療への有望な一歩だ。

2017年7月号

News: 研究室でついに血液幹細胞の作製に成功

長い間試行錯誤が続いていた血液幹細胞の作製法を、2つの研究チームがマウスとヒトで完成させた。

News: ミトコンドリア置換法で想定外のDNA混合

置換療法で生まれた男児が母親由来のミトコンドリアDNAを一部持っていることが分かった。だが両親は、長期の経過観察を望んでいないという。

News: 免疫チェックポイント阻害剤で一部患者のがん悪化?

免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれるがん治療薬で、がんが悪化する場合があることが報告された。研究者らはその理由を追究している。

Japanese Author: 人工硝子体として長期埋め込み可能なゲル

大量の水を含み弾力性に富んだハイドロゲルは生体軟組織と似ており、医療材料として注目されている。一方で、膨潤、白濁、炎症などを引き起こすといった問題も抱えており、広く実用化されているものはあまりない。このほど、酒井崇匡(さかい・たかまさ)・東京大学大学院准教授らは、膨潤や白濁の問題をクリアし、液体からゲル化までの時間も制御できる、注入可能なハイドロゲルを開発。実際にこのハイドロゲルをウサギに導入し、長期の埋め込みが可能な人工硝子体としての安全性を確認した。

Editorial: 幹細胞治療を商業化するまでの道のり

人工多能性幹細胞を使った治療については、日本が初期段階で成功を収めており、称賛に値するが、この治療法の商業化を進める際には、やはり慎重さが求められる。

News & Views: 1つのタンパク質で2つの神経変性疾患を治療

アタキシン2(ataxin 2)タンパク質の生成を抑制する分子によって2つの神経変性疾患の症状を改善できることがマウスモデルで示された。臨床試験におけるこのアプローチの成功に大きな期待がかけられている。

2017年6月号

News: がん発症原因の大半はDNAの複製エラー

環境要因や遺伝要因が、がんリスクに及ぼす影響は、研究者が考えているほど大きくないかもしれない。

News: 脳機能を若返らせる臍帯血成分

臍帯血漿に含まれるタンパク質の1つを加齢マウスに投与すると、学習・記憶テストの成績が向上することが明らかになった。

News: 脅威となる耐性菌ランキング

世界保健機関は、対策が必要な耐性菌をランク付けしたリストを初めて公開した。新たな抗生物質の研究開発にぜひ役立ててほしいという意図からだ。

Japanese Author: マクロファージの概念を変える発見

免疫反応におけるゴミ処理係として知られるマクロファージが、近年、大いに注目を集めている。マクロファージは1種類の細胞ではなく、さまざまな機能を持って分化し、いろいろな疾患に特異的に働く多様なマクロファージが複数種存在するというのだ。一連の研究を牽引するのは、大阪大学審良静男研究室の佐藤荘助教である。

2017年5月号

News: HIVの潜伏性リザーバーのマーカーが初めて明らかに

HIVが潜伏感染している免疫細胞(潜伏性リザーバー)の特定に役立つマーカータンパク質CD32aが発見された。細胞表面に発現しているこのタンパク質を用いることで、こうしたリザーバーを排除できるようになるかもしれない。

News & Views: AIによるがん診断支援が現実味を帯びてきた

皮膚がんを画像解析だけで判定できるようコンピューターを訓練したところ、一部の皮膚がんについては皮膚がん専門医と同程度の精度で識別できた。これは医学的診断の未来にどのような意味を持つのだろうか?

News & Views: 異種動物の体内で作製された膵臓で糖尿病を治療する

ラットの体内で成長させたマウスの膵臓を、1型糖尿病モデルマウスに移植すると、血糖値が制御された。また、拒絶反応は短期間の免疫抑制剤投与だけで回避できた。この成果から、治療用に臓器を成長させる興味深い方法が垣間見えてきた。

2017年4月号

News: クルクミンの効果に化学者が警鐘

香辛料抽出物クルクミンは広範な評価試験でニセの反応を示す分子であると、注意を呼びかける論文が発表された。

News: 「コモン・ルール」最終版は研究者寄りに

ヒト試料を扱う研究と臨床試験で米国政府が助成するものに適用される規則「コモン・ルール」。このたびの改訂では、焦点となっていた被験者保護の拡充が見送られ、プライバシーに関する懸念が広がっている。

News & Views: 造血幹細胞の維持にはバリンが必須

血球の供給源である造血幹細胞は、必須アミノ酸の一種「バリン」に依存していることが明らかになった。マウスにバリンを含まない食餌を与えると、骨髄移植の前処置に類似した効果が得られ、移植が成立したのだ。この手法を使えば、骨髄移植に伴う毒性を低減できる可能性がある。

2017年3月号

News Scan: 血流移動ロボットに一歩

光で操作する微小装置ができた

News: 簡便で正確な脳震盪診断法

小規模な研究から、音声合成装置で生成された「ダ」の音声を聞かせるだけで脳震盪(軽度の脳損傷)を判別できる可能性が示された。長期的な影響を評価する生物学的マーカーとしても利用できるかもしれない。

News & Views: 神経の同調を回復させてアルツハイマー病を治療

アルツハイマー病では、神経回路の活動で生じる電気的振動に障害が現れる。マウスモデル でこれらの振動を回復させると、免疫細胞が活性化して、アルツハイマー病に関連するアミロイドβタンパク質が脳から除去されることが示された。

News: 赤ちゃんの脳損傷を防ぐ新治療法に高まる期待

低酸素性虚血性脳症(HIE)の新生児の命を救うと期待される実験的治療法が、臨床試験の段階に入った。

2017年2月号

News: がん細胞は脂肪を利用して転移する

がん細胞の弱点が分かったかもしれない。マウスでの研究で、転移するがん細胞は脂肪をエネルギー源として利用している可能性が示されたのだ。

Editorial: ビッグデータを医療へ活用するために必要なこととは

ビッグデータは芸術的といえるほど大いなる可能性を秘めている。医学の進歩に利用すべきであるが、そのためには、誰が何をどうすればよいのだろう。

2017年1月号

News: 脊髄損傷サルに歩行を取り戻させた装置

歩行時の脚の動きに関する脳の信号を無線で下部脊椎に送信することで、脊髄を損傷したサルが再び歩けるようになった。

Japanese Author: iPS細胞を用いた新アプローチで心機能改善

iPS細胞の臨床応用に向けた研究が加速している。例えば、心筋細胞に分化誘導した上で直径数cm、厚さ0.1mmほどのシートを作製し、重篤な心不全患者の心臓に貼り付ける治療は2016年度中にも臨床試験が始まるとされる。そうした中、信州大学バイオメディカル研究所の柴祐司准教授らは、サルのiPS細胞を心筋細胞に分化させ、単一細胞のまま別個体のサルの心臓に移植する実験を世界で初めて行い、心機能改善の効果が得られることを実証した。

News in Japan: 量子画像化技術でうつ病診断・治療を目指す

科学技術振興機構主催のサイエンスアゴラ2016で、量子科学技術研究開発機構の山田真希子(やまだ・まきこ)氏がうつ病の診断精度を向上できる可能性を秘めた量子イメージング技術について講演した。シュプリンガー・ネイチャーも対談という形でこのセッションに協力させていただいた。

News: 薬の臨床試験報告書を公開

欧州医薬品庁は、製薬会社が提出した臨床試験報告書をオンラインで公開し始めた。

News Feature: 「致死的変異」の正体を見極める

世界最大級のゲノムデータベースを使った解析によって、ヒトの遺伝学についての情報が静かに着々と変わりつつある。

2016年12月号

News: 現代人の免疫応答を左右するネアンデルタールDNA

欧州系集団とアフリカ系集団の免疫細胞を比較した2つの研究から、これらの集団間に見られる、感染に対する免疫応答の強さや自己免疫疾患への罹患リスクの違いが、ネアンデルタール人由来のDNAの有無によって説明できる可能性が示された。

News: 「がんムーンショット」計画達成への10項目を発表

米国のがん撲滅計画で目指すべき研究目標について、諮問委員会の作業部会が勧告としてまとめた。その内容は免疫療法から診断法まで幅広い。

Japanese Author: AI活用でゲノム医療・精密医療の実現へ

2016年10月、ラスベガスで開かれたIBM社の国際イベントに招かれ、人工知能「ワトソン」の医療応用について語った宮野悟 教授(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター)。人工知能を活用してゲノムのビッグデータを医療に効果的に役立たせることが今後の世界の潮流となり、そのための経済的基盤と社会的コンセンサスの構築が求められてくると宮野教授は指摘する。

News & Views: 理想的な鎮痛薬を計算科学で設計

オピオイドと同等の鎮痛活性を有し、オピオイドよりも副作用が少ない薬剤が、構造に基づいたコンピューターシミュレーションによって開発された。今回の成果は、この手法がさまざまなタイプの薬剤の創薬に有効な戦略となる可能性を示した。

News & Views: がん細胞は死してなおカリウムで免疫系を抑制する

細胞死を起こした腫瘍細胞はカリウムを放出し、それがT細胞の活性を抑制することが分かった。T細胞からのカリウム排出を増強すると、がんを攻撃する能力が回復する。

2016年11月号

News: アルツハイマー病新薬候補で認知機能低下が鈍化

アミロイドβ仮説に基づくアルツハイマー病治療薬候補の小規模臨床試験で、認知機能低下の鈍化が観察された。現在、大規模な研究によりこの有望な初期データが裏付けられるか調査中である。

News Scan: 乳房にマイクロバイオーム

乳がんリスクを左右している可能性も

2016年10月号

News: 初のCRISPR臨床試験は中国のチーム

中国の研究チームが、肺がん患者での遺伝子編集細胞試験の実施を承認された。

News Feature: 「温故知新」で医薬品開発

創薬コストの高騰を受け、既存の承認薬や開発が途中で中止になった化合物を対象に、新たな適応疾患を探し出して製品化する「ドラッグ・リポジショニング」と呼ばれる取り組みが盛んになっている。

Japanese Author: 握り飯より柿の種、早石修先生の志を継いで

京都大学名誉教授の早石修博士が、2015年12月17日、逝去された。享年95歳。米国で研究生活を送った1950年代、酸素添加酵素を発見し、生化学の定説を覆す新たな概念を打ち立てた。帰国後、京都大学や大阪バイオサイエンス研究所でさらに研究を進めるとともに、多くの弟子たちに科学の真髄をとことん教授した。今回お集まりいただいたのも、師を偲ぶ4人の弟子である。

2016年9月号

News: ペット医療で活況のバイオテク市場

ペットが長生きするようになったことで、免疫抗体から細胞治療といった新しいタイプの医療が行われ始めている。

News Feature: iPS細胞の10年

人工多能性幹(iPS)細胞は、医療革命の訪れを告げる使者だと考えられた。しかしその発見から10年経った現在、iPS細胞はむしろ生物学の研究を大きく変えるツールとなりつつある。

News: 免疫応答の男女差という「不都合な真実」

感染に対する免疫系の反応に男女差があるという事実は、今日の医学に大きな問題を投げかけるものだ。研究者たちは、この真実に目を向け始めている。

News & Views: 腫瘍を抗ウイルス応答で撃退するがんワクチン

樹状細胞に腫瘍抗原を含むナノ粒子を送達し、抗ウイルス応答に似た抗腫瘍免疫応答を誘導する免疫療法が開発された。初期の臨床試験では有望な結果が得られている。

News in Japan: 老化研究に大きな予算

「日本ではこれまで老化の研究、特に基礎研究にしっかりとした予算はついてきませんでした」と、文科省ライフサイエンス課担当課長補佐は説明する。従来から重点が置かれてきた研究領域は、がん、ゲノム、脳科学など。今回、老化研究もそれらと並び、日本社会にとって重要であるという判断が初めてなされたといえる。

2016年8月号

News: ヒト胚の体外培養で最長記録達成

ヒト胚を受精後13日目まで培養できる方法が編み出された。この手法を用いて、ヒトの初期発生を知るための手掛かりが得られそうだ。

News: ミトコンドリア置換に治療効果がない可能性も?

異常なミトコンドリアが子に受け継がれないようにする置換法は、期待外れの結果に終わるかもしれない。核移植時に持ち込まれた少量の異常ミトコンドリアが増えてしまう場合があるようなのだ。

News: セシウム使用中止の圧力に苦悩する生物学者たち

放射性セシウムの盗難を懸念し、生物医学研究で広く用いられているセシウムγ線照射装置をX線照射装置へと切り替える検討が各国で進む中、研究者たちは、研究結果に影響を与えかねないと憂慮する。

Japanese Author: 免疫から逃れるがん特有のゲノム異常発見

がんゲノムの研究における第一人者、小川誠司教授は、血液がんをはじめ、さまざまながんの仕組みを解き明かしてきた。今回、片岡圭亮特定助教とともに行ったがん症例の大規模解析により、がんが免疫から逃れる仕組みの1つを解明した。この知見を利用すれば、免疫チェックポイント阻害剤の効果が予測できるのではないかと考えられ、注目を集めている。

2016年7月号

News: うつ緩和はケタミン代謝産物の作用か?

麻薬ケタミンの分解産物で、ケタミンのような副作用なしでうつ状態を改善できることが、マウスでの実験で示された。

News: マクロライド系抗生物質候補の全合成に成功

単純な構造の化合物のパーツを組み立てていくという手法で、300種以上のエリスロマイシン類似体が合成された。その中には、多剤耐性菌に対して抗菌活性を有するものもあった。

News: 実験用マウスの免疫系は未発達のまま

実験用マウスは、その飼育環境が原因で免疫系が十分に成熟していないことが明らかになった。だが、ペットショップで飼育されているマウスとの同居により、ヒト成人に近い免疫系を持つようになるという。

News Feature: がんの進化を利用した治療戦略

他のあらゆる生物と同じく、腫瘍にも自然選択が働いている。がんの治療法の開発にこの進化の原理を利用しようという動きが現在高まっている。

News: ゲノム探索でヒットを狙う製薬会社

アストラゼネカ社は疾病に関連付けられる「まれな塩基配列」を探し出すため、200万人分のゲノムを調べる大規模事業を開始する。

News & Views: 受容体の構造からSSRI系抗うつ剤の作用機序が明らかに

セロトニン輸送体タンパク質のSERTが、2種類の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)と複合体を形成した状態の構造が解かれ、これらの薬剤が作用する仕組みが明らかになった。

News: 抗ヘビ毒血清不足に立ち向かうための新手法

長年ヘビ咬傷の治療に用いられてきた抗ヘビ毒血清の世界的な不足が問題になっている今、入手困難なヘビ毒に代わり免疫応答を誘発する人工抗原や、毒素を中和する人工抗体の作製などの新手法に期待が高まっている。

2016年6月号

News Scan: 結核を血液検査で診断

簡単で安くて正確、数百万人の命を救う

News: 脊髄損傷患者の脳と手をつなぐ技術

脊髄損傷患者の思考を電気的な指令へと変換することで筋肉を刺激する「神経バイパス技術」が開発された。患者は、この技術によって麻痺した腕を動かせるようになった。

News: p値の誤用の蔓延に米国統計学会が警告

科学者によるp値の誤用を止めるため、米国統計学会(ASA)が異例の声明を出した。

News & Views: 高脂肪食が大腸がんの発生率を高める仕組み

マウスでの研究で、高脂肪食の摂取により腸前駆細胞が幹細胞様の運命に誘導されることが突き止められた。その結果、腸のサイズが変化し、腫瘍の発生率が高まることが分かった。

News Feature: ナノスケールの虹が世界を変える

あらゆる色の蛍光を発するウイルスサイズの粒子が、テレビのディスプレイからがん治療まで、広範な応用分野に革命を起こそうとしている。

2016年5月号

News: HDLコレステロールは本当に善玉か

「HDLコレステロール値を上昇させれば心疾患のリスクを低減できる」という考えに反する遺伝学的研究結果が報告された。

News: 米国立がん研究所がモデル細胞株を刷新

抗がん剤スクリーニングに長年広く用いられてきたモデルを、マウス体内で増殖させたヒト腫瘍細胞(PDX)に切り替える方針だ。

News: 「3人の親」を持つ胚の作製を米国専門委員会が支持

ミトコンドリア置換の臨床試験を支持する報告書が提出された。ただし現状の連邦法の下では、関係当局がこの種の臨床試験を承認することはできない。

News: 論文の追試結果を発表する学術誌が始動

医学生物学分野の論文の再現性について報告するオンライン学術誌が創刊され、バイオテクノロジー企業が最初の論文を投稿した。

News & Views: 遺伝学と生理学がついに結び付いた

統合失調症発症のリスクと強い関連性がある遺伝的変異の1つが特定された。シナプスの刈り込みに関与すると考えられている補体因子C4遺伝子だ。神経生物学とを結ぶ手掛かりがようやく得られ、創薬につながることが期待される。

News: 生物学研究者よ、プレプリントの投稿を

生物医学分野の研究論文原稿を、論文誌掲載前に研究者自身がオンライン公開することについて議論する会議が開かれた。

News & Views: 自己免疫疾患のための免疫療法

MHCクラスII分子と自己免疫疾患に関連する任意のタンパク質断片の複合体で覆ったナノ粒子の投与により、免疫調節機構を患部器官の自己免疫応答を抑制する方向に転換できることが分かった。

2016年4月号

News: 老化細胞を除去したマウスは長生き

老化した細胞を標的にすれば加齢関連疾患を治療できる可能性があることが、マウスを使った鮮やかな実験により証明された。

News: フランスの臨床試験で死者

問題の薬剤の構造についての情報が極めて少なく、この臨床試験で何が起こったか、いまだに見えてこない。

News Scan: 逆張りの心不全治療法

心臓のリズムを一時的に乱すと有益な場合もある ようだ。

News: メジナ虫症の根絶を阻むのはイヌ?

体長80cmもの糸状虫が皮下を這い激痛を伴うメジナ虫症。根絶まであと少しという段階で、意外な伏兵が現れた。

News: 犬のDNAからヒトの精神疾患の手掛かりを得る

犬の遺伝子データと飼い主による犬の行動評価とを結び付けることで、ヒトの疾患と関連する遺伝子を見つけ出そうというプロジェクトが始まった。

2016年3月号

News: エボラ血漿療法に有意差なしの結果

エボラ出血熱からの回復者の血漿で患者を治療できると期待されていたが、最初の臨床試験では死亡率の有意な低下は見られなかった。だが専門家たちは検討の余地があると見ている。

News Feature: 最期の病

がんなどの疾患の末期になると、患者は筋肉量が著しく減少し、痩せて衰弱する。この状態は悪液質と呼ばれる。この機序が、ようやく少しずつ明らかになってきた。

News: ヒトゲノム編集に関する国際会議

ヒトゲノム編集の倫理的、社会的、法的な問題が議論され、各国の見解の相違が浮き彫りになったが、合意が得られた部分もあった。

News Feature: 胎児組織研究に関する真実

中絶胎児の組織を研究に使用することについて、米国では論争が巻き起こり、殺人事件も発生している。しかし、多くの科学者が「こうした研究はHIVや発生などの研究に不可欠だ」と言う。

News: がんの主な原因は「不運」?

がんの発生に大きな影響を及ぼすのは環境要因なのか内的要因なのかをめぐり、研究者の間で論争が起きている。

News & Views: 炎症は老化マウスの健康維持に役立つ

制御性T細胞と呼ばれる免疫細胞は、老化に伴って脂肪に蓄積していく。このような細胞が持つ抗炎症活性により、老化関連型の代謝障害が悪化することが明らかになった。一方、肥満関連型の代謝障害には影響を及ぼさないという。

2016年2月号

News: 記憶力増強装置のヒトに対する試験が始まる

長期記憶に障害を起こすような脳組織の損傷を、電極による刺激で補償できる可能性が次々と示されている。

News: 医療現場に押し寄せる遺伝子編集の波

このたび、遺伝子編集技術で改変された細胞の移入により白血病が寛解したことが報告された。この他にも現在、複数企業が遺伝子編集技術をヒトの治療に使う準備を着々と進めており、この治療法にますます注目が集まっている。

News Feature: ヒトゲノム編集の世界情勢

ヒト胚の利用や改変に関する世界各国の規制状況を俯瞰することで、ゲノム編集技術を使った最初の「CRISPR(クリスパー)ベビー」が誕生しそうな国が浮かび上がってきた。

2016年1月号

News: 筋ジストロフィーモデルの子犬を救った予想外の変異

この犬に見つかったある遺伝子の変異から、筋萎縮を防ぐ新しい治療法が見つかる可能性がある。

News & Views: ヒトiPS細胞から作製した腎臓オルガノイド

iPS細胞を分化させて、腎臓の全ての組織を備えた腎臓オルガノイドが作製された。移植可能な腎臓を培養系で発生させるための重要な一歩といえる。

News: 抗がんウイルス製剤が間もなく市場に

がん治療薬として米国で初めて、ウイルス製剤T-VECが承認された。欧州もそれに続くとみられる。

Japanese Author: 老化を制御し、予防する

年齢とともに、体の生理機能が低下する「老化」。私たちはなぜ老化するのか。老化は、どのような仕組みで制御されているのか。その謎を追い続けてきた今井眞一郎教授は、制御の中核となる「サーチュイン遺伝子」の機能を発見し、さらに、脳をコントロールセンターとする組織間ネットワークの働きを研究してきた。「老化の仕組みを科学的に解明することは、病気を効率的に予防する方法を見いだせる最善の道」と今井教授は語る。

Comment: ヒトゲノム計画25年の軌跡

ヒトゲノム計画の開始からちょうど四半世紀。コンソーシアム研究の先駆けとなったこのプロジェクトは、現在も、こうした科学研究に多くの教訓を提供することができると、このプロジェクトを推進してきたEric D. Green、James D. Watson、そしてFrancis S. Collinsは語る。

2015年12月号

News Scan: サルが常用する薬

樹皮を食べるのは病気を治すためらしい

News: 顧みられない熱帯病の治療薬を開発した3氏に医学生理学賞

寄生虫感染症の治療薬を発見した業績で、3人が共同受賞した。中国人研究者の受賞は初。

News: 成長ホルモン療法の患者にアルツハイマー病の恐れ

死後脳由来のヒト成長ホルモン製剤の投与を受け、クロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなった患者の脳内で、アミロイド斑が見つかった。この製剤を注射したことが原因でできた可能性が示唆されるという。

News & Views: 心筋の治癒を促すタンパク質Fstl1

ヒトの心臓組織は再生する能力が非常に低く、損傷を受けると徐々に機能が低下していく。このたび、心臓の外膜領域の細胞が通常発現しているタンパク質Fstl1が、心臓発作により損傷した心筋の再生を誘導できることが分かった。

News: 小児への脳刺激の有望性と懸念

学習障害のある小児の脳を電気刺激する試験が行われ、有望な結果が得られた。その一方で、安易な使用などによるリスクの増大が懸念される。

2015年11月号

News Feature: エボラの次の新興感染症に備える

伝染病の流行や汎発流行に対する人類の備えは十分とはいえない。けれども、西アフリカで発生したエボラ出血熱の大流行に対する恐怖が、そんな状況を変えるかもしれない。

News & Views: 肝臓の細胞量維持に重要な細胞集団を発見

マウスでの実験で、これまであまり評価されていなかった肝細胞集団の1つが、日々の肝臓細胞量の維持に重要な役割を担っていることが分かった。この細胞群は近傍の静脈からのシグナルによって誘導・維持されている。

News & Views: 無痛のスマートインスリン・パッチ登場!

血糖値の上昇を感知してインスリンを放出するよう設計された小型のパッチが開発された。このパッチには微細な針がたくさん付いているが、皮膚に貼り付けても痛くないという。実用化すれば、インスリン注射が必要な糖尿病患者の苦痛や不便さを解消できそうだ。

2015年10月号

News: 低線量被曝のリスクが明確に

低線量の被曝でも白血病のリスクがわずかに上昇することが、30万人以上の原子力産業労働者を対象とする大規模疫学調査により示された。

News: アルツハイマー病の治療薬開発で初の成果

アミロイドβを標的とした抗体医薬で病の進行を30%遅らせたというささやかだが確かな成果に、研究者たちは勇気づけられている。

News Feature: オルガノイドの興隆

臓器に似た立体構造体「オルガノイド」を作る研究が熱を帯びている。培養皿の中にシグナル分子を投入するだけで、細胞が自分で組織を形作るのだ。こうしてできたミニ臓器は、単一細胞の分析よりも多くの情報をもたらす場合があるだけでなく、薬の効果や副作用を調べるのにも役立つことが分かってきた。

News: 大うつ病の遺伝子マーカー見つかる!

うつ病と関連する特定のゲノム塩基配列の探索は、これまで望み薄と考えられていたが、今回、大うつ病と強固な関連性を示す遺伝子が見つかった。この発見で、精神病に関係した遺伝子の捜索が熱を帯びそうだ。

News: 現代人の体質や病にネアンデルタールDNAの影

現生人類は、旧人種との性交渉でアフリカ外の環境に対処する能力を獲得した。そして、私たちに残る旧人種のDNAは今も、喘息や皮膚病、さらにはうつ病に至るまで、さまざまな形で影響を及ぼしていることが分かってきた。

News & Views: 白内障の原因を解きほぐすラノステロール

遺伝性白内障の2家系における研究から、疾患の原因が、水晶体のラノステロールを合成する酵素の機能を障害する変異遺伝子であることが分かった。この知見は、白内障の非外科的予防や治療につながりそうだ。

2015年9月号

News Scan: 目に付く雑菌

コンタクトを使うとやはり……

Editorial: 感染症の流行に対応できる保健医療体制づくりを急げ

エボラ出血熱の流行を受けて、感染症の大流行という国際的な緊急事態への対応について改善計画が話し合われてきた。この提案は実行されるべきだが、地域レベルでの解決が最善の防御であることを忘れてはならない。

News Feature: 微生物ダークマターを探る最新手法

既知の微生物種は全微生物種の約1割でしかないと言われる。新規抗生物質を求める微生物学者たちは、この広大な未知微生物の世界を探索する新しい方法を何通りも見つけ出している。

2015年8月号

News: プリオン病を防ぐ遺伝子変異

パプアニューギニアのある民族には、遺伝子変異による未知の機構のおかげで、過去に流行した致死的な脳疾患にかからずに済んだ人々がいる。

News: モルヒネ合成酵母の完成が間近

グルコースからモルヒネの前駆物質を生合成できる酵母株が作り出された。

News Scan: 輸血問題に解決策

病原体を輸血血液から取り除く新技術を米国の血液バンクがこの夏に導入する

2015年7月号

News Scan: 腸内細菌がワクチン増強

ワクチンの効果に個人差があるのは腸内細菌の違いが一因らしい。

News: より小さなCas9酵素を発見

黄色ブドウ球菌のゲノムから、より小さなCas9酵素が発見された。 このCas9ならば臨床で使われる遺伝子治療用のベクターに組み込めることから、CRISPRによるゲノム編集でヒトの遺伝性疾患を治療できる可能性が高まった。

News: 欠陥ミトコンドリアを破壊し、疾患を防ぐことに成功

マウスでの実験段階だが、欠陥のあるミトコンドリアDNAをゲノム編集技術を使って選択的に破壊する手法が開発された。ミトコンドリア置換などの「三親胚」に代わる選択肢となるかもしれない。

News: 腫瘍で見つかる変異の30%以上は正常細胞にも見つかる

効果的ながん治療を選択するためには、腫瘍組織と正常組織をセットで検査し、変異の重要性を見極めることが必要だと示唆する研究結果が報告された。

News: ヒト胚ゲノム編集の波紋

ヒト胚の遺伝的改変を行った研究が報告されたが、その倫理的問題に関しては科学者の間にも意見の食い違いがある。

Research Highlights: 抗生物質に曝露されていない民族の腸内に耐性菌

ベネズエラの孤立民族、ヤノマミ族(写真)は、ヒトのマイクロバイオームについて報告された中で最も多様な腸内細菌を持っていることが明らかになった。

News Feature: 輸血を減らして命も救う

輸血は、今日の医療で最も過剰に行われている治療の1つであり、その費用は数千億円に上る。研究者たちは輸血を減らす方法を模索している。

News Feature: がん遺伝子産物Rasへの再挑戦

発がんに大きく関わるRasタンパク質。これを標的とする治療薬は、30年に及ぶ探求にもかかわらずまだ見つかっていない。だが、実験手法が進歩したことで、この強敵からいったんは遠ざかった研究者が再びこの分野に参戦するようになってきており、新たな切り口でRasに挑み始めている。

2015年6月号

News: 世界初のブタ試料バイオバンク

糖尿病の長期的合併症の研究用に、大型動物のバイオバンクが設立された。入念に作製された多種多様な組織試料は、無料で利用できる。

News Feature: バイオベンチャー起業家を養成するブートキャンプ

米国の研究助成機関は、バイオベンチャーを起業するための助成金を受けた科学者を成功に導くために、シリコンバレーの起業家が主催するプログラムを受講させている。

News & Views: 改良が進む樹状細胞ワクチン

抗腫瘍免疫応答を誘導する樹状細胞ワクチンは、がん患者の治療にはあまり有効ではなかったが、今回、ワクチン接種部位を前処置して炎症を誘発しておくと、このワクチンの効果が増強される可能性があることが分かった。

Comment: ヒトの生殖系列のゲノムを編集すべきでない

ヒトで世代を超えて伝わるような遺伝的改変は重大なリスクをもたらす一方で、その治療的利益はほんのわずかだとして、研究者らが警鐘を鳴らしている。

2015年5月号

News: 食品添加物と肥満・腸疾患が初めて結び付いた

食品に広く添加されている乳化剤の中には、大腸の細菌構成を変化させ、その結果、炎症性の大腸炎を引き起こすものがあることが、マウスでの実験で示された。特筆すべきは、米国では「安全」と見なされ、試験が免除されている化合物であっても、同様の作用が観察されたことだ。

News: 「3人の親による体外受精」にゴーサイン

先駆的な生殖医療技術の法的認可に向けた英国の動きは、他の国々にも規制緩和の流れを引き起こしそうだ。

News Feature: 天文光学で生体イメージング

天文学の補償光学技術をヒントに、不透明な物質を透視する手法が最近開発された。非侵襲的でより高分解能な生体イメージングを実現しようと、研究が熱を帯びている。

News: チップ上の人体「ホモチッピエンス」作製を目指す

三次元培養系のモデル器官装置をつないで全身の生理機能を模擬した系を構築し、これを生物テロ対策に利用しようという計画が米国で動き出した。

2015年4月号

News: 結核菌ゲノムに刻まれていたヒトの歴史

結核菌・北京系統株は、結核菌の中でも感染性が高く、多剤耐性のものも多い。この系統株が東アジアに出現したのは6000年以上前であることが分かった。

News: うつ病治療薬として臨床試験が進むケタミン

精神疾患に対する新薬がほとんど登場しないことから、麻薬の一種であるケタミンに製薬会社や医師から大きな期待が寄せられている。しかし、それが高じて、十分なデータがまだ揃っていないにもかかわらず、うつ病治療用に処方され始めている現状には懸念も出ている。

News: 「バイオシミラー医薬品」としての承認に踏み切る米国FDA

バイオシミラー(バイオ後続品)は、先行品より低価格というメリットがあるが、科学、規制、特許のそれぞれの局面で課題を抱えている。

Japanese Author: リン酸化反応を多角的に解析し、シグナル伝達系の全貌に迫る!

人体には200種以上の細胞が存在するとされ、細胞独自の形態や運動性、極性などは、細胞内外のさまざまな情報の授受と伝達により獲得・決定されている。この過程はシグナル伝達と呼ばれ、生命活動の基盤をなす一方、異常を生じると、がんや循環器疾患、神経・精神疾患の原因となる。名古屋大学大学院医学研究科・神経情報薬理学講座の貝淵弘三教授は、35年にわたり、リン酸化反応を介したシグナル伝達系の解析を進めている。

Editorial: ラボテクニシャンに感謝を伝えよう

ラボテクニシャン(技術員、技術補佐員)がいなければ研究は成り立たない。それなのに、彼らの貢献は正しく認識されていないことが多い。

2015年3月号

News: 「微生物ダークマター」から見いだされた希望の光

培養不能な細菌を培養する画期的な装置が確立され、MRSAなどの薬剤耐性菌を死滅させる新規抗生物質が見つかった。

News: 疑問視される人工気管移植手術

カロリンスカ研究所は、実験的に行われた移植手術に対し2件の調査を行っている。

News: 自己T細胞移入療法でがん患者の生存期間が延長

難治性の白血病やリンパ腫を対象とした遺伝子改変T細胞療法の臨床試験で有望な結果が集まりつつある。

News & Views: 多能性状態を操作するための手引き

偏りのない解析で、iPS細胞の再プログラム化から万能性獲得までの過程には複数の経路があることが明らかになり、そこから、これまで見落とされていた新しいタイプの多能性細胞の存在が確認された。

2015年2月号

News Scan: 冬眠する動物からの健康アドバイス

クマやリスの冬眠の仕組みを、人間の健康に役立てようという取り組みが始まっている。

News: 「プラチナ」ゲノムで疾患に迫れ

公式ヒトゲノム配列には記されていない疾患に関連する領域を突き止めようと、完成度の高いヒトゲノム配列の組み立てに複数の研究チームが取り組んでいる。

News: 増えつつある脳腸相関の証拠

腸内細菌が心の健康に影響を与えるという説に支持が集まっている。

News Feature: 認知行動療法の効果を検証するには

認知行動療法は最もよく研究されている精神療法だが、この治療法がうつ病患者に効く仕組みはいまだに解明されていない。

Japanese Author: 網膜内部に血管が入り込まない仕組みを、分子レベルで解明!

生体には血管網が張り巡らされており、血管を介してさまざまな物質が供給される。血管新生はがんなどで異常に活性化されるため、新生メカニズムの研究は世界中で盛んに行われている。一方で、血管が入り込まない組織(軟骨や発生期の網膜など)があることも知られているが、その排除メカニズム解明は全く進んでいなかった。このほど、久保田義顕・慶應義塾大学医学部准教授らは、血管網の可視化研究から、思いがけない仕組みによって血管が排除されていることを突き止めた。

News & Views: 治療法改善のための最善の戦略とは

うつ病の研究には、抑うつ様行動を示す従来からのマウスモデルがよく使われているが、ヒトのうつ病の全体像を従来のマウスモデルで完全に把握することは不可能である。このフォーラムでは、治療法の改善を目指した戦略について、専門家たちが提案する2通りの見解を紹介する。

News & Views: 解明が進むがん免疫療法

PD-1経路の遮断により抗腫瘍免疫を回復させる免疫療法は臨床で目覚ましい成果を挙げているが、作用機序には不明な点が多い。今回、この治療法に対して特に反応性の高い患者の特徴や、この治療法が有効ながん種が新たに明らかになった。さらに、この治療法の標的が腫瘍の新抗原であることを裏付ける結果も得られた。

Comment: うつ病の分子機構解明に向けて

世界的に深刻な問題となっているうつ病の分子機構を解明するためには、10万人以上の人の遺伝的データを分析する必要があると、米国立精神衛生研究所のディレクターを務めたSteven Hymanは提案する。

2015年1月号

News: がん細胞の排出物が正常細胞をがん化させる!?

腫瘍細胞から放出されたエキソソームと呼ばれる小胞が、正常な細胞をがん化させる可能性があることが分かった。

News: 素早いゲノム解析で赤ちゃんを救え!

不可解な病気を持って生まれた赤ちゃんに迅速な診断と治療を行うために、スピーディーなゲノム解析を行うプロジェクトが米国で始まった。

News: 幹細胞から成熟β細胞の作製に成功

インスリンを産生する成熟β細胞を、in vitroで幹細胞から大量に作製する方法が開発された。現在の課題は、1型糖尿病患者に移植した成熟β細胞を、患者の免疫系による攻撃から守ることである。

News: ヒト疾患の巨大遺伝子バンクを作って病因を探る

形質と遺伝子多様体との関連を明らかにするため、別々の大規模プロジェクトで収集されたDNA配列データを共有し、まとめて解析できるようにする動きが始まっている。

Japanese Author: 誰もが“バイオインフォマティシャン”の時代

インターネット上の情報やツールを使った遺伝子検索や配列解析など、生命科学分野では研究者や医療従事者によるビッグデータの活用が重要になってきた。そのときに役立つのが、バイオインフォマティクス(生物情報学)の基礎知識。だが日本では教育が遅れ気味だ。バイオインフォマティクス分野の草分け的存在の4人に、バイオインフォマティシャンの仕事や役割、この分野の展望を語ってもらった。

News & Views: 繊維芽細胞の可塑性が心臓の修復を助ける

心臓繊維芽細胞は損傷を受けた心臓構造の修復に重要な役割を果たすことが知られている。さらに今回、心臓の繊維芽細胞には内皮細胞へと転換できる可塑性があり、心臓が損傷を受けた後にp53依存的に転換が誘導されて、傷害血管の修復を助けることが明らかになった。

News & Views: 重症エボラウイルス感染症のサルを回復させた治療薬

3種類のモノクローナル抗体を混合した治療薬「ZMapp」で、致死量のエボラウイルスを接種したサルは全て回復した。ZMappは、感染後の治療に用いられたことのある他の薬とは異なり、エボラウイルス感染症が進行した段階にあっても治療効果を発揮した。

2014年12月号

News Scan: キーストーン病原体

keystone pathogen:その数の割には、無害な微生物叢を病気を引き起こし得るものに転換するのに非常に大きな役割を演じている微生物

News: 人工甘味料が肥満を引き起こす?

人工甘味料は腸内のマイクロバイオームを変化させ、肥満を引き起こし得ることが示唆された。

Japanese Author: 脳の大きさを制御する、新たな分子メカニズムを解明!

ヒトの脳は約1.3〜1.5kgとされるが、容量がこれよりも病的に小さく、知的障害を伴う「小頭症」という疾患がある。神経変性疾患を研究対象にしてきた岡澤均・東京医科歯科大学教授らは、ニューロンの核における機能分子の探索と解析を続ける中でPQBP1という新規タンパク質を突き止め、その異常によりあるタイプの小頭症が引き起こされることを分子レベルで解明した。

News & Views: スタチンは骨の成長を促す

軟骨形成と骨成長の異常によって起こる低身長症について、iPS細胞モデルが構築された。研究チームはさらに、高コレステロール血症治療薬であるスタチンが軟骨形成と骨成長を促進する可能性があることをこのモデルを用いて明らかにした。

2014年11月号

News: 人体の常在細菌叢は薬の宝庫

ヒトに棲み着いている細菌ゲノムデータから、新規の抗生物質が発見された。

News: 血液から病原体を除去できる人工脾臓

脾臓を模した人工浄化装置が開発され、実際に細菌に感染させたラットに使うと生存率が改善した。数年以内にヒトへの応用が実現する可能性がある。

News: 羨望を集める日本の幹細胞臨床研究

iPS細胞から作成された網膜の移植手術が、世界に先立って日本で行われた。他の国々でも、研究者たちがiPS細胞治療の臨床研究へのゴーサインを今か今かと待ちわびている。

News: 3000万人参加のアスピリン調査が米国で始まる

米国で、ビッグデータ医療ネットワークを利用する臨床研究が始動した。

News Scan: 大型動物ががんを抑える方法

ウイルスのゲノム侵入を抑えているようだ

Japanese Author: 定量的なプロテオミクス技術の開発─挑戦的な研究テーマが10数年越しに結実

「そんなやり方は、クレイジーだ」と言われたこともある。それでも、ひるまなかった。技術革新が科学を進めると信じる強い気持ちと、積み上げた実験結果で、タンパク質の包括的定量技術の開発に成功した。その10数年越しの研究を、中山敬一教授(九州大学生体防御医学研究所)が初めて語る。

2014年10月号

News: 電気薬学に熱い視線が集まる

神経を電気刺激して病気を治療する方法の開発に、産業界も学術研究機関も力を注いでいる。

News Scan: 鼻で闘う味の受容体

苦味受容体が細菌の侵入と闘っている

News: 遺伝子探索が精神医学にもたらす恩恵

15万人以上の試料をもとに遺伝子探索が行われ、統合失調症に関連する染色体上の領域が大量に突き止められた。

News Feature: 血流が運ぶ情報

循環血中に存在するDNAは、最適な活用法を見つけることができれば、がん治療の優れたツールとなりそうだ。

News & Views: インターフェロンは両刃の剣

サルでの研究から、インターフェロンの作用には二面性があり、感染の防止に働く場合と、慢性感染の状態を悪化させる場合があることが明らかになった。

2014年9月号

News: 見直され始めたファージ療法

抗生物質耐性問題が拡大し続けていることを受け、100年の歴史を持つファージ療法への関心が再燃している。

News: 過冷却で肝臓の移植可能期間を延長する

取り出したラットの肝臓を凍結させずに冷却保存できる溶液が開発された。これによって、ヒトの臓器移植の可能性が広がるかもしれない。

News: 日光浴には中毒性がある!?

マウスを低用量の紫外線に長期間さらすと、βエンドルフィンというオピオイドが産生されることが明らかになった。この物質は薬物依存症にも関連している。

News: 息を吹き返した抗がん剤「PARP阻害薬」

いったんは開発が打ち切られた抗がん剤「オラパリブ」が、紆余曲折を経て、現在、米国食品医薬品局に承認申請されている。

News Feature: 忘却の遺伝子

アルツハイマー病の有力な遺伝的リスク因子が20年余り前に報告されたが、研究者の多くはそれをほとんど無視してきた。しかし、その風潮がようやく変わろうとしている。

News & Views: 耐性菌の抗生物質耐性を無効化する天然物

カルバペネム系抗生物質は現在、重篤な感染症に対する最後の砦であるが、耐性菌の急増が世界的な公衆衛生問題になっている。今回、真菌の一種が産生する天然化合物が、カルバペネム系抗生物質耐性細菌の、カルバペネム耐性を無効化させることが分かった。

News Scan: 伝承を活かす 〜リバース薬理学の挑戦〜

伝統的な薬草について臨床試験を行うという新たな方法で有望な結果が得られている

2014年8月号

News: 心臓病の幹細胞療法に対する疑い

幹細胞を用いた心臓病治療の臨床試験についてのこれまでの報告を網羅的に 分析した研究から、この心臓病治療の効果に疑義が浮上している。

News: 糖尿病治療に有効なインスリン分解酵素阻害剤の発見

インスリンを分解する酵素を生体内で阻害できる分子がようやく見つかった。この分子を投与することで、マウスでは血糖を調節できることが示された。

News: 「売り手市場」のマイクロバイオーム企業

人体に定着している細菌から作られる医薬品が臨床化に近づいている、という見方が投資家の間で広がっている。製薬大手企業がその可能性に目を付け始めたためだ。

News Feature: 天然痘の監視は終わらない

史上最大級の恐ろしい疫病の名残が、冷凍のミイラや、手紙に同封されたかさぶたに含まれているかもしれない。この感染症がゾンビのように蘇ったとき、私たちは十分に対処できるのだろうか。

News & Views: 血液脳関門を通過できる2つのルート

血液脳関門では、脳への脂質の輸送と、トランスサイトーシスによる分子の輸送が行われているが、この2つの過程がどちらもMfsd2aという1つのタンパク質によって調節されていることが明らかになった。

2014年7月号

News: 精子との結合に必要な卵表面のタンパク質を発見

受精において極めて重要な役割を担っている精子表面のタンパク質Izumo1のパートナーが、ようやく見つかった。

News: 再注目されるRNA干渉の臨床応用

遺伝子サイレンシング技術から肝臓関連の障害に有望な治療法が得られた。

Japanese Author: 次世代シーケンサーで、研究も医療も変わる!

ゲノム配列を高速で解読できる次世代シーケンサーが米国などの数社から製品化され、さまざまな基礎研究や応用分野で活発に使用されるようになってきた。この装置で具体的にどんなことが可能なのか、ゲノム解析技術の開発や整備に長年関わってきた東京大学の菅野純夫教授と、次世代シーケンサーを使った研究成果を次々と発表している京都大学の小川誠司教授に、医学や医療の分野を中心に話を聞いた。

News Feature: 長い低迷期を抜けた免疫療法

免疫系はがんと闘うための強力な武器となり得る。これを利用する免疫療法の世界に「免疫チェックポイント阻害剤」という新機軸が登場したことで、免疫療法が盛り返してきた。

Editorial: 銅に期待される新たな役割

古くから使われてきた銅。今回Natureに、触媒反応とがん治療法での新たな役割を示唆する2編の論文が掲載された。

2014年6月号

News: 体内で溶ける生分解性電池

体内で溶ける電池が開発された。これを利用すれば、役目を終えたら消えてなくなる「埋め込み型の医療用機器」が実現するかもしれない。

News Scan: てんかん治療に大麻成分

米国で臨床試験が計画されている

News: 米国の大麻研究を妨害する連邦政府の官僚主義

米国では2つの州で嗜好用大麻が合法化された。一方で、大麻の生物医学研究は、連邦法によりいまだに規制されている。

News Feature: 「1000ドルゲノム」成功への軌跡

米国政府は、ヒトゲノム配列の解読コストを待望された目標レベルまで低下させることに成功した。その成功のカギは、政府肝煎りのプログラムにあった。

News & Views: 高齢者の脳を保護する因子

RESTと呼ばれるタンパク質が、加齢脳でのニューロンの細胞死の抑制と、高齢者の認知能力の維持に中心的な役割を果たしていることが明らかになった。

2014年5月号

News: 健常者10万人を調べるプロジェクト

長期的な試験により健常者を詳細にモニタリングし、その結果に対処するよう頻繁に働きかけることで、究極の個別化医療を実現しようという取り組みが始まった。

News Feature: 様変わりする世界の霊長類研究

欧州の研究者は、動物保護活動家による激しい攻撃から霊長類研究を守るための政治的勝利をようやく勝ち取った。だが、一部の地域では、それが骨抜きにされようとしている。

News Feature: 感染病原体が犯罪を暴く

民事・刑事を問わず、事件の捜査で「法医系統学」なる新しい科学鑑定法が、じわじわと浸透しつつある。この鑑定法は強力だが、裁判への利用は、状況をよく見極めて慎重にすべきだ。

Japanese Author: ゲノム研究から先制医療へ

その行動力で数々のプロジェクトを牽引し、ゲノム研究を推進してきた理研の林崎良英ディレクター。FANTOMコンソーシアムの設立、ノンコーディングRNAの発見、マイクロアレイやシーケンサー技術の導入など多くの成果を挙げてきた。親しみやすさと率直さがトレードマーク。「でも発言がストレートなので、誤解されやすいんですよ」と言う。今回新たに立ち上げたのは「予防医療・診断技術開発プログラム」。先制医療へ乗り出すのだという。林崎ディレクターは今、何を考える?

News & Views: 遺伝子の調節で老いた筋肉を若返らせる

筋肉の再生を担う幹細胞は、高齢になると、可逆的静止状態から不可逆的老化状態へと切り替わる。今回、老化を推進する遺伝子を調節すると、筋幹細胞の再生能が回復することが明らかになった。

News & Views: 肝臓修復のカギは血管からのシグナル

損傷した肝臓の修復において、血管の内壁を覆う内皮細胞が産生するタンパク質が、細胞増殖のタイミングを調節していることが突き止められた。この発見は、組織再生において血管からのシグナルが重要な役割を担っていることを示す、新たな実証例である。

2014年4月号

News: ナルコレプシーは自己免疫疾患であることが確定

2009年の新型インフルエンザ大流行とそれに対するワクチンの接種に付随して、ナルコレプシーという睡眠障害が多発した。この原因を解析した結果、 ナルコレプシーが自己免疫疾患だとする決定的な証拠が示された。

News: 需要が高まる生物資源リポジトリ

研究ツールや資源を提供してくれる生物資源リポジトリは、生命科学研究に欠かせない存在である。だが、その維持管理は容易ではない。

News & Views: 造血幹細胞にも性差がある

血球を作り出す造血幹細胞は、エストロゲンに応答して、雄より雌のマウスでより頻繁に分裂することが分かった。これはおそらく、雌が妊娠時により多くの血液を必要とするようになることに備えているためだろう。

2014年3月号

News: ピロリ菌株との相性が胃がんの発症を左右する

地域的な起源が異なるピロリ菌株に感染している場合に、胃がんが発症しやすくなることが明らかになった。

News: 外部刺激でも体細胞を幹細胞化できる!

NPGよりお知らせ

Nature 2014年1月 30 日号641〜647ページ、および676〜680ページに掲載された小保方晴子氏ら(理化学研究所ほか)による論文 2 報について、論文中にいくつかの致命的な誤りがあることを理由に論文撤回の要請があり、弊社はそれを受理いたしました。

撤回理由は、Nature 2014年7月3日号112ページ、および下記URLをご覧ください(ウェブページが最新情報になります)。Natureダイジェスト 2014年3月号2〜3ページでも、これらの論文に基づいた記事を掲載しておりました。

STAP 関連論文、撤回理由書

Retraction: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency
Retraction: Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency

強く圧迫したり、酸性溶液に浸けたりするだけの手軽な方法で、 体細胞を受精卵に近い状態へとリセットできることが明らかになった。

News Scan: iPS細胞をしのぐ万能性を確認

理研など日米チームが体細胞を酸の刺激で効率的に初期化することに成功

News Feature: 医療用アイソトープが不足する!

世界の原子炉の老朽化により、近い将来、医療用アイソトープは深刻な供給不足に陥ると考えられている。それに備え、原子炉を使わない医療用アイソトープ製造法を模索している革新的な企業がある。

News: ゲノミクス創成期のお宝を探して

ゲノミクス創成期に活躍した解析装置の多くが、現在、時代遅れの不用品として廃棄されようとしている。世界の科学博物館が結束して、こうした装置の収集に向けて動き出した。

2014年2月号

News: 遺伝子改変技術に新時代到来!

次世代の遺伝子改変技術として注目を集める「ゲノム編集」の登場で、ヒト疾患モデルとなる遺伝子改変サル作出に期待が高まっている。

Japanese Author: 皮膚細胞を、iPS細胞を経ずに軟骨組織に作り変える

iPS細胞から、さまざまな細胞に分化誘導する研究が加速する一方で、体細胞を他の種類の体細胞に直接誘導する「ダイレクト・リプログラミング」も検討されている。このほど、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の妻木範行教授らは、ヒトの線維芽細胞から、直接、軟骨細胞様の細胞を作り出すことに成功した。

News Feature: 脳型コンピューターへの道

ヒトのニューロンをヒントにしたコンピューター・チップなら、より少ない電力で、より多くの計算をすることができる。

2014年1月号

News: 毛を生む組織再生のカギは培養法にあった

毛包は、毛髪を生み出し支える皮膚内の器官で、毛髪再生に重要だ。毛包の誘導は、これまでマウスでしか成功していなかったが、今回、古典的な培養法を用いることで、ヒト毛包の誘導にも成功した。

News: 治癒を速める「若返り」遺伝子

Lin28aタンパク質を成体組織で発現させると、傷の治癒力を高めたり、毛の成長を速めたりするなどの効果がもたらされた。

News Feature: 脳科学で心が丸はだか?

脳活動のパターンをスキャン装置で捉え、その情報を解読することで、その人の考えや見た夢、さらには次に何をしようとしているかまで、読み取れるようになるかもしれない。

News Scan: 細菌流の変身の術

無害な細菌が、悪役に変わるメカニズム

News: 臨床試験データ公開に立ちはだかる壁

公開文書には、臨床試験で分かった記録の全てが記載されていないことが明らかに。

Japanese Author: 自然リンパ球の開拓者

リンパ球といえば、抗原抗体反応、つまり「獲得免疫」で働く主役の細胞群として知られてきた。ところが近年、「自然免疫」で働くリンパ球が次々と発見され、この新種の細胞群は、「自然リンパ球」と総称されるようになった。こうした研究の火付け役の1人である小安重夫氏(理研・統合生命医科学研究センター)に、自然リンパ球とは何か、また発見の経緯について伺った。

News & Views: 脂肪代謝のメヌエット

日周性の脂肪代謝は、筋肉と肝臓に存在する2つの核内受容体の間で、1つの脂質メッセンジャーを仲介物資として受け渡しすることで調節されていることが分かった。このシグナル伝達経路から、代謝に異常を来すさまざまな疾患についての理解が進むかもしれない。

Research Round-up: リサーチ・ラウンドアップ

Nature Genetics / Nature Medicine / Nature Chemistry より

2013年12月号

News: 糞便入りカプセルで腸感染症を抑える

糞便入りカプセルにより、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の再発を抑えることができた。しかし、コストや製造の問題で、市販薬として開発するのは難しいかもしれない。

News: 細胞内の小胞輸送を解明した人々

細胞内で生体分子を生合成するには、ある構造体から別の構造体へ、作りかけの分子を移さなければならない。それが小胞輸送で、今年のノーベル医学生理学賞は、その機構を解明した3人に授与される。

News Feature: 世界が注目するベンチャーキャピタル

サードロック・ベンチャーズ社は、起業させたバイオ技術企業に対する多額の投資で有名になった。「起業エンジン」として資金を調達し続ける同社の成果に、現在、注目が集まっている。

News: ゲームでマルチタスク“脳力”がアップする!

認知能力は加齢に伴って低下するが、ゲームをすることでそれが回復するという研究結果が現れた。

News & Views: LPSは細胞内でも感知される

グラム陰性細菌の外膜に存在するリポ多糖(LPS)は、宿主細胞の細胞表面にある受容体TLR4によってのみ感知されると考えられていた。しかし今回、LPSは、細胞質内でも感知されることが分かった。

Editorial: 新生児を対象としたゲノム解読による病気診断の問題点

健康な新生児と病気を抱えた新生児を対象に、ゲノム塩基配列に基づく病気の診断がどの程度有効かを調べる研究プロジェクトがスタートする。データを適切に役立てる方法をさぐる予定だが、それには、いくつかの重要な倫理上の問題を解決しなければならない。

2013年11月号

Japanese Author: 組織や器官を作り出す“職人肌”の科学者

組織や器官を構成するものは何か?─“細胞”という答えは正しくないそうだ。生体は、細胞と“細胞の足場”により成り立っていると、竹澤俊明上級研究員は言う。細胞の足場とは、細胞周囲でそれを支える支持体のこと。この組織工学の草分け研究者は、足場の研究に魅せられて、再生医療から創薬、動物実験代替法などの応用面を支える技術をこつこつと生み出してきた。

2013年10月号

News Scan: 3D印刷で人工気管

再生用の埋め込み器具が実用化

2013年11月号

News: マウスの生体内で幹細胞を作製

マウスの生体内で成体細胞を再プログラム化できることが示された。組織再生の実現に向けて新たな扉が開かれる。

2013年9月号

News Scan: ポリオウイルス最後の隠れ家

ポリオ撲滅のカギは、「慢性排菌者」の特定だ

2013年11月号

News Feature: 繊維芽細胞から卵を作り出した科学者たち

京都大学の研究チームが、2012年10月、マウスの多能性幹細胞から卵を作製することに成功した。彼らは以前、精子の作製にも成功しており、そうして作られた卵と精子からは繁殖能力のある仔マウスが生まれた。ヒトへの応用が期待される一方で、この技術を失速させないためには、これらの細胞を安全に、かつ倫理にかなうように使用する方法を探る必要がある。

Editorial: 現行治療法の臨床試験と被験者保護

広く用いられている治療法を調べるための臨床試験であっても、研究者は、患者に対する十分なリスク開示を確実に行わなければならない。

2013年10月号

News: 弱体化マラリア原虫から作成したワクチンが効いた!?

放射線照射された蚊から採取した原虫を使用するマラリアワクチンが、 防除率100%を達成したとの報告がなされた。

2013年11月号

News: HeLa細胞株をめぐる和解への道

Henrietta Lacksの遺族は、研究者にHeLa細胞と遺族への影響についての説明を求めてきたが、30年以上もの間、十分な対応はなされなかった。ようやく本腰を入れたNIHと話し合いを重ねた結果、2013年8月、ゲノムデータの開示を条件付きで許可することを了承した。

News & Views: 網膜の神経回路を詳細にマッピング

脳の構造は非常に複雑であり、小さな神経回路でも、何百個のニューロンと数千個の接続を含んでいる。連続組織切片の電子顕微鏡観察とそのデジタル的再構築により、また遺伝学的手法と光学的解析を統合させた方法により、網膜の神経回路がこれまでになく詳細に描き出された。

Editorial: 鳥インフルエンザウイルスの機能獲得変異研究

鳥インフルエンザウイルスH7N9亜型は、ヒトに感染して大流行を起こすほど進化する恐れがあり、ウイルスの機能獲得変異研究が再び研究者の注目を集めている。研究のリスクを正当化できるかどうか論争が続いているが、事は慎重に進める必要がある。

2013年8月号

News: ヒトのクローン胚から胚性幹細胞を作り出すことに成功

クローン技術はiPS細胞に追いつけるか?

Japanese Author: 血管付き三次元細胞シートの作製に成功!

2012年9月、大阪大学医学部の澤芳樹教授らは、衝撃的な臨床治療の成果を発表した。その患者は重篤な拡張型心筋症で、補助人工心臓なしでは生きられない状態だったが、細胞シート移植で心筋機能が回復、無事退院したというのだ。その補助人工心臓の開発メンバーの1人でもある早稲田大学理工学術院の梅津光生教授は、今回、毛細血管付きの三次元細胞シートの作製に成功した。

2013年10月号

News Feature: 効く薬がない「究極の耐性菌」の恐怖

科学や医学の進歩と経済的繁栄や社会保障制度などのおかげで、人類は多くの感染症を実際に克服してきた。 それゆえ、災いが不可避的にやってくるというような黙示録的な表現を保健当局者が使うことはない。ところが、今最後の砦となっている強力な「カルバペネム系抗生物質」に対して、一部の細菌が耐性を獲得し始めており、恐怖を感じながらの監視体制がとられている。

News Feature: 脳科学の世紀

米国と欧州が相次いで、数千億円の資金を投入して脳が働く仕組みを解明する構想を打ち出した。しかし、その実現に必要な技術はまだ十分に整っていないのが現状だ。

2013年9月号

News: マウスの体内で育ったヒトのミニチュア肝臓

ヒトiPS細胞から肝臓の種(肝芽)を作成し、それをマウスに移植すると、移植された細胞は、自己組織化して機能する臓器になった。

2013年7月号

News: インスリン分泌細胞の増殖を促進する新規ホルモン発見

マウスにおいて、膵臓のインスリン分泌細胞の増殖を促進する新規ホルモンが発見された。ここから糖尿病の新しい治療法が生まれる期待が高まっている。

Turning Point: 網膜の再生研究との出会い

進むべき道筋をしっかりと見定め、計画的に走り出す。それが高橋政代氏流のやり方だ。眼科医、妻、母親の三役も、そうしてこなしてきた。網膜の再生研究に巡り会ってからは、治療法の開発が目標に。現在、iPS細胞を用いた世界初の臨床研究を申請中だ。

News Scan: プラズマメスの可能性

無出血手術が可能で、治療効果も期待されている

2013年8月号

News Feature: 革命的な科学の手法を生み出す男

脳透明化技術「CLARITY」の開発を率いたKarl Deisserothは、脳科学の世界に大きな足跡を1つ、また1つと刻んでいる。

News: かゆみの引き金となる分子を発見

痛みとかゆみは別の神経回路によって脳に伝えられることがわかった。

2013年7月号

News Feature: 精神障害はひとつながり

これまで病態に応じて区切られ分類されていた精神障害が、実は1つのスペクトラム、つまり、さまざまな病態が連なった1本の軸として表せることが、近年の研究によって示唆されている。しかし、精神障害診断の最新の改訂版DSM-5では、その採用は時期尚早として見送られた。

News: 獣医療の世界で幹細胞療法が大ブーム!

ウマやイヌ、さらにはトラまでもが、治療効果の実証されていない幹細胞療法を受けており、動物用医薬を統括する行政当局が規制措置を取ろうとしている。

News: 脳を透明化する革新的技術!

重要なタンパク質などを残して、脳組織を透明化する技術が開発された。この技術は、神経ネットワークの三次元可視化を可能にし、しかも、ホルマリン中に保存されているヒト組織にも適用できるので、脳内ネットワークの解明に大きく貢献するはずだ。

2013年6月号

News: 自己組織化する「生きた組織」を3D印刷する

脂質で被覆した水滴を立体的に整列させて、生体組織に似た構造物を3D印刷することに成功した。

News: 製薬会社のデータを開示させる機運が高まる

欧州では、製薬会社の臨床試験データを開示する方向で事が進み出した。

2013年4月号

News Scan: マリファナはきっぱり有害

米国の若者に、危険な誤解が広がっている

2013年6月号

Editorial: 抗生物質耐性菌対策に、機運が高まる

既存の抗生物質に耐性を持つ細菌の発生件数が、憂慮すべき急増を見せており、世界の人々の健康に及ぼす影響を見極めて、行動を起こさねばならない。 幸い、政策立案者の認識がようやく高まってきた。

2013年5月号

News: 古代人でも動脈硬化は珍しくなかった

ミイラのCTスキャン画像の解析研究から、心疾患の要因は現代風の食生活だけではないことが示唆された。

News: 時代遅れのコレステロール目標値

米国で心臓の健康に関するガイドラインの改訂が行われる。数値目標最優先の治療からの脱却を図るためだ。

2013年3月号

News: 大手バイオテク企業が、ジェネティクス企業を買収

アムジェン社によるデコード・ジェネティクス社の買収は、医療データと遺伝学データを統合する価値が、いかに高いかを物語っている。

2013年5月号

News: 加速する「遺伝子解析」の医療利用

成熟期に入りつつある「ゲノム解読」技術は、医療診断に使える十分な価格と精度を持つようになった。

News: 遺伝子診断を阻む壁

ゲノムの配列解読データの共有が進めば、希少な難病と遺伝子変異とを結びつけるチャンスが増えるはずだ。そのためのツールの開発が進められている。

2013年4月号

News: がん細胞を自滅に追い込む低分子薬

TIC10という低分子薬は、血液脳関門を透過でき、現在有効な治療薬がない脳腫瘍の一種である膠芽腫に対しても有効性を示した。

2013年5月号

News & Views: 塩味を感知するセンサー分子

ヒトでは聴覚に関連するとされているTMC-1というタンパク質が、線虫では塩味の感知にかかわる受容体であることが示された。

Editorial: 幹細胞治療の規制に取り組み始めた日本

実験的な幹細胞治療の規制に、日本が遅まきながら取り組んでいる。明確に定められた法的枠組みによる患者の保護が必要だ。

2013年4月号

News: 転移中の乳がんをキャッチ

血液を循環しているがん細胞の特徴から、がんの転移の仕組みを説明する有力な仮説の1つが裏付けられた。

2013年2月号

News Scan: 抗体薬が足りなくなる!?

免疫との関連性が判明し、精神疾患向けに需要が急増

2013年4月号

News: iPS細胞の安全性に新たな裏付け

iPS細胞移植の免疫応答に対する懸念は過剰だったようだ。

News Feature: 簡単な算数ができない学習障害

電話番号などの簡単な数字を覚えたり、簡単な足し算をしたりするのがひどく苦手な人がいる。このような「算数障害」があっても、知能面に全く問題がなく日常生活を支障なく送っている人も多い。この「算数障害」をとおして数認識の仕組みを探るとともに、その障害者支援に尽力する研究者がいる。

News & Views: インスリンとその受容体の結合

インスリンは糖尿病治療に広く使われているが、そもそも、インスリンが細胞表面にある受容体と結合するメカニズムは、不明のままであった。今回、この複合体の結晶構造解析にようやく成功し、ついに答えが得られた。

2013年1月号

News Scan: ハンチントン病の新モデル動物

ヒツジを利用して研究を加速

2013年3月号

News & Views: 脱アセチル化による細胞死

壊死はさまざまな疾患に関連して見られるが、プログラム細胞死の中で、おそらくは最も解明が進んでいないものだ。今回、サーチュインというタンパク質が、脱アセチル化反応を介して壊死の一部を調節していることが明らかになった。

News: 大富豪がスイスの製薬施設を買収して、大学に寄付

閉鎖されたメルクセローノ社の施設が、バイオ技術研究の産学連携拠点として生まれ変わる。

2013年2月号

News: パーキンソン病は、異常タンパク質の伝播を介して進行する

神経細胞の死と、パーキンソン病特有のタンパク質凝集塊との間の関連を示す 研究結果が報告された。治療法の開発につながることが期待される。

News Feature: 卵の幹細胞をめぐる攻防

Jonathan Tillyは、ヒトをはじめとする哺乳類の卵の幹細胞の存在を示し、「生まれた時点で一生分の卵の数は決まっている」という定説に異を唱え、猛烈な批判にあった。その後、別の研究者からも報告があり理解者は増えたが、疑念の声を鎮めるにはデータはまだ不十分だ。

2013年1月号

News Feature: 環境ホルモンをめぐる攻防

化学物質の安全基準の大原則は、「曝露量が少なければ危険性も少ない」というものだ。ところが、環境ホルモン(内分泌攪乱物質)はこの原則から外れていると科学者たちは主張する。ただ、100%の確証があるわけではなく、規制当局も対応するまでには至っていない。

News: ミトコンドリア病を予防する核の入れ替え技術

異常のあるミトコンドリアを持った卵から核を取り出し、正常なミトコンドリアを持った卵に移し替える技術は、サルにおいて確立されていたが、ヒトでも適応可能であることが示された。 この技術により、ヒトのミトコンドリア病と呼ばれる遺伝性難病のリスクを低減できる。

2012年11月号

News: 治療可能な珍しい自閉症

代謝経路の遺伝子の変異で起こる自閉症が見つかった。このタイプの自閉症は、栄養補助食品(サプリメント)で治る見込みがある。

2013年1月号

News: 製薬会社が臨床試験の生データ開示を決断

グラクソ・スミスクライン社が、非公開としてきた新薬の臨床生データを公開する。

News: 論文撤回の主な理由は、詐欺的行為!?

生命科学系学術雑誌における論文撤回の最多の理由は、ミスではなく、なんと詐欺的行為であることが判明した。

News & Views: 胎児を拒絶しない免疫機構

妊娠した女性の免疫系が、胎児の持つ父親由来の抗原に対して寛容となる仕組みに、「抑制性」の免疫細胞がかかわっていることが実証された。 胎児抗原に特異的に反応して増殖するこの細胞は、出産後も一部が維持されていて、2回目以降の妊娠を助けていた。

2012年10月号

News: 皮膚細菌叢も免疫応答に重要

長い間、外部からの病原体に対して単なる物理障壁と考えられてきた皮膚。その皮膚に共生する細菌が、宿主の免疫系の活性化に重要であることが明らかになった。

News: ねじれを感知できる電子センサー

甲虫の翅からヒントを得て、ねじれを感知できるセンサーが開発された。これを応用すれば、微妙な触覚を持つロボットが誕生するかもしれない。

News Scan: 小児向け医薬が抱える問題

小児薬で、安全性が臨床試験で証明されたものは少ない

News: アルツハイマー病を防ぐ遺伝子変異

アイスランド人で見つかった非常にまれな遺伝子変異が、認知機能の低下を抑制する可能性がある。アルツハイマー病の治療法の開発に向けて、期待が高まる。

Japanese Author: 分化能を失った神経系前駆細胞が、再びニューロンを作り出した!

脳内でネットワークを構築し、高度な機能を発揮するニューロン。その大半は、胎生期の神経幹細胞(神経系前駆細胞)が増殖と分化を繰り返すことで作られる。そして、生後は、ごく限られた部位を除いてニューロンへの分化能が失われる。しかし東京大学分子細胞生物学研究所の後藤由季子教授らは、ある遺伝子をマウス大脳の神経系前駆細胞に導入することで、誕生後に再びニューロンへと分化させることに成功した。

2012年9月号

News: 抗体を利用してがんに対する免疫応答を目覚めさせる

がんは、生体に本来備わっている防御機構を回避する術を持っている。この回避機構を阻害する抗体を用いた治療により、これまでの免疫療法を上回る治療効果が得られた。

2012年8月号

News: 進化した脳制御型ロボットアーム

四肢麻痺の患者の思考で制御できるロボット補助器具が作製された。

2012年7月号

News & Views: 複雑な心臓はこうして作られる

発生過程の臓器は、変わりゆく生命体のニーズを満たすため、ダイナミックに適応・変化する。ゼブラフィッシュを用いた研究で、筋肉の意外な成長パターンによって心臓が再構築されている事実がわかった。

2012年6月号

News: 小児期の細菌暴露は大事

小児期に細菌にさらされることで発生・成熟中の免疫系が調整される機構の解明に、一歩近づいた。

News: 並行臨床試験で薬効が明確に

ヒトの臨床試験と同様の試験を動物で並行して行う「並行臨床試験」により、薬剤の効果に違いをもたらす遺伝学的な手がかりが得られる。

2012年5月号

News Feature: 異端を正統に変えた女性科学者

折りたたみ方を誤ったタンパク質は、疾患発症の原因となる。それはまた、進化の推進力となる場合もある。Susan Lindquistのこうした考え方は、まさに既存の常識に挑戦するものだった。 彼女の挑戦は続き、それに対する批判もやまない。

News: マリファナが記憶を障害する機構

マリファナがどのように短期記憶を障害するのかが明らかに。

2012年1月号

Editorial: かけがえのない命の証を、神経疾患研究に生かせ

死んでまもない子どもの脳には、自閉症や統合失調症の治療法のカギが隠されている可能性がある。その研究を進めるためには、献体の推進と国際的な脳バンクの整備が必要だ。

News: マラリアワクチン臨床試験の中間報告

マラリアは人類最大の敵とも言われ、今なお年間200万人が死亡するとされる。病原体はマラリア原虫で、キニーネなどの治療薬があり、蚊が媒介することもわかっているが、原虫が潜伏場所を変えること、耐性マラリアの登場、人間の免疫系と複雑な相互作用をすることなどにより、なお克服できないでいる。「マラリアが撲滅できたらノーベル賞」と言われながら、80年以上もマラリア関係でノーベル賞は出ていない。こうした中で、まだ完成を見ていないが、ワクチン開発が大きな課題となっており、そこから今回の出来事が起きた。臨床試験の途中で未完のデータを発表することに対して、専門家は疑問を呈している。(編集部)

News & Views: 福山型筋ジストロフィーの治療に光明

日本人に多い「福山型」の筋ジストロフィーが、予想外のスプライシング異常で発症することがわかった。さらにこの知見に基づく治療法に関して、マウスで有望な結果が得られ、患者にとって希望の光となるかもしれない。

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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