目次

注目のハイライト

その他のハイライト

特集: ウエアラブルセンサー

ウエアラブル技術は生理状態のモニタリング能力を向上させるものであり、臨床試験や外来患者だけでなく、健康やウェルネスへの利用も期待される。この技術は、装着可能な最小侵襲性のデバイスによる分析物の高頻度・連続サンプリングを可能にし、病院でしか使えないモニタリング機器の代わりとなる。しかし、サンプリングが容易な部位から、正確な測定値が得られることが分かっている分析物の種類はわずかであり、その大部分は運動選手の激しい身体運動のモニタリングに関係するものであって、一般人や患者に利用されるものではない。皮膚にぴったりフィットして体液を採取し、重要なバイオマーカーを検出するセンサーを、エンジニア、生物情報科学者、臨床医、そして生物学者たちが、開発しようとしている。

ウエアラブルバイオセンサー全般は、いまだ広範な商業的成功を収めてはおらず、臨床判断に組み込まれてもいないが、グルコースなどの分析物の連続的で非侵襲的な測定への期待が、この分野の投資や知的財産(Patent Table参照)、技術開発を持続的に後押ししている(KimらのReview参照)。

糖尿病を抱える人々にとっては、痛みを伴うこともある注射針の頻繁な使用から解放してくれそうなウエアラブルデバイスの実現がこれまでになく近づいている。しかし、1型糖尿病のように生死に関わりかねない状況では、間違いが許される余地はほとんどないが、ヒヤリハットが数多く起こっている。一方、ウエアラブルな連続グルコース濃度測定器は、数種類が市場に出回り、ある程度普及が進んでいるが、技術開発者は汗、涙液、唾液などの採取しやすい体液を引き続き追い求めている(News Feature参照)。

汗と間質液の抽出、マイクロ流体技術、センシング技術、電池寿命、消費電力という諸課題に対する解決策は見いだされつつあるが、その取り扱いやすさを見極めるにはヒトでの試験や臨床試験による検証が必要となる(Kim らのReview参照)。また、デバイスから得られるデータの取り扱い、例えばデータの解析、管理、セキュリティー、プライバシーなどに関して、いくつかの経済的・技術的・文化的課題を克服することも必要になる(Editorial参照)。

汗、唾液、涙液、間質液を利用するウエアラブルデバイスには、共通の大きな課題がある。それは、対象とする生理状態に関する情報を得るには、測定対象の分析物が血中濃度を正確に表すものでなければならないということである。特定のバイオマーカーをその方法で測定することが可能で妥当なのかという点は、食物摂取量、発汗量、測定部位、分析物の輸送など、多くの要因によって決まる(HeikenfeldらのReview参照)。それを判断するには、大規模コホートの研究が有用と考えられる。

ここ数年の間にソフトエレクトロニクスの分野が軌道に乗り、シリコンエレクトロニクスや電子皮膚の微細加工が進歩して、スマートスキンデバイスの設計は急速に改良された。今後、皮膚を刺激せず連続測定することができるようにデバイスを皮膚にフィットさせるには、皮膚の恒常性を理解することが重要になる(染谷と天谷のPerspective参照)。

Editorial

ウエアラブルデータを実用化するには

Getting real with wearable data p.331

doi: 10.1038/s41587-019-0109-z

News Feature

非侵襲的血糖値モニターの開発競争

Sweet sensation p.340

doi: 10.1038/s41587-019-0086-2

Perspective

新世代のスマートスキンの実現に向けて

Toward a new generation of smart skins p.382

doi: 10.1038/s41587-019-0079-1

Review

ヘルスケアモニタリングのためのウエアラブルバイオセンサー

Wearable biosensors for healthcare monitoring p.389

doi: 10.1038/s41587-019-0045-y

末梢の生化学的モニタリングのための体液中分析物の利用

Accessing analytes in biofluids for peripheral biochemical monitoring p.407

doi: 10.1038/s41587-019-0040-3

News

ラマから生まれた抗体断片が希少な血液疾患用に承認

Llama-inspired antibody fragment approved for rare blood disorder p.333

doi: 10.1038/s41587-019-0101-7

遺伝子治療を待望するデュシェンヌ型筋ジストロフィー

Duchenne muscular dystrophy awaits gene therapy p.335

doi: 10.1038/s41587-019-0103-5

オックスフォード・ナノポア社がPacBioを打ち負かす

Oxford Nanopore bests PacBio p.336

doi: 10.1038/s41587-019-0098-y

世界の1カ月

Around the world in a month p.337

doi: 10.1038/s41587-019-0099-x

WHOがゲノム編集を監視

WHO to oversee genome editing p.338

doi: 10.1038/s41587-019-0097-z

米国カリフォルニア大学バークレー校、CRISPRの特許紛争で反撃

Berkeley strikes back in CRISPR patent tussle p.338

doi: 10.1038/s41587-019-0102-6

著名人ポッドキャストシリーズ:George Church

First Rounders: George Church p.339

doi: 10.1038/s41587-019-0075-5

News & Views

オルガノイド:脳オルガノイドに極性をもたせる

Polarizing brain organoids p.377

doi: 10.1038/s41587-019-0084-4

薬物送達:経口カプセルで胃粘膜から注入

To the stomach and beyond p.381

doi: 10.1038/s41587-019-0089-z

Brief Communication

SignalP 5.0はディープニューラルネットワークを用いてシグナルペプチドの予測を改善する

SignalP 5.0 improves signal peptide predictions using deep neural networks p.420

doi: 10.1038/s41587-019-0036-z

Letters

バイサルファイトを用いずに、5-メチルシトシンおよび5-ヒドロキシメチルシトシンを塩基分解能で直接検出する

Bisulfite-free direct detection of 5-methylcytosine and 5-hydroxymethylcytosine at base resolution p.424

doi: 10.1038/s41587-019-0041-2

CRISPR RNA誘導型アデニン塩基エディターのゲノム規模の標的特異性

Genome-wide target specificity of CRISPR RNA-guided adenine base editors p.430

doi: 10.1038/s41587-019-0050-1

前脳オルガノイド内の位置的形質の指定

Specification of positional identity in forebrain organoids p.436

doi: 10.1038/s41587-019-0085-3

RNA転写物を鋳型にした相同組換えによるイネの正確な遺伝子置換

Precise gene replacement in rice by RNA transcript-templated homologous recombination p.445

doi: 10.1038/s41587-019-0065-7

Articles

Palantirによる単一細胞データの細胞運命決定確率の評価

Characterization of cell fate probabilities in single-cell data with Palantir p.451

doi: 10.1038/s41587-019-0068-4

単一細胞RNA塩基配列解読の時系列データから集団の動態を推定する

Inferring population dynamics from single-cell RNA-sequencing time series data p.461

doi: 10.1038/s41587-019-0088-0

TagGraphが大規模なタンデム質量分析データセットから膨大なタンパク質修飾の全体像を明らかにする

TagGraph reveals vast protein modification landscapes from large tandem mass spectrometry datasets p.469

doi: 10.1038/s41587-019-0067-5

「Journal home」へ戻る

プライバシーマーク制度