小胞内ATPの放出障害がグルコース代謝に影響を及ぼし、インスリン感受性を上昇させる
Impairment of vesicular ATP release affects glucose metabolism and increases insulin sensitivity
2014年10月21日 Scientific Reports 4 : 6689 doi: 10.1038/srep06689
神経内分泌細胞は、分泌顆粒にATPを蓄積し、ホルモンと共にATPを放出するが、このATPの放出が、プリン作動性化学伝達と呼ばれる過程で、さまざまな細胞応答の引き金になる可能性がある。小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)は、ATPの小胞内蓄積や放出に関与することが示されているが、in vivoにおけるその生理的意義はほとんど理解されていない。今回、Vnutノックアウト(Vnut−/−)マウスにおいて、副腎のクロム親和性顆粒やランゲルハンス島のインスリン顆粒におけるVNUTの機能喪失が、いくつかの重要な効果を引き起こすことがわ分かった。Vnut−/−マウスのクロム親和性顆粒においては、小胞内のATP蓄積や脱分極依存性のATP放出が見られなかった。また、Vnut−/−マウスでは、膵β細胞のグルコース応答性ATP放出も見られなかったが、グルコース応答性インスリン分泌は、野生型組織よりも大幅に上昇していた。Vnut−/−マウスは、インスリン感受性の上昇により、絶食時の耐糖能が改善され、血液中グルコース濃度の低下を示した。これらの結果は、in vivoにおける神経内分泌細胞でのATPの小胞内蓄積および放出にVNUTが不可欠な役割を担っていることを実証し、小胞内ATPおよび/あるいはその分解産物がカテコールアミンやインスリンの分泌のフィードバック調節因子として機能することで、血液中のグルコース恒常性を調節していることを示唆している。
坂本 昌平1, 宮地 孝明2, 日浅 未来3, 市川 玲子4, 植松 朗4, 岩槻 健4, 柴田 篤志1, 畝山 寿之4, 高柳 涼一1, 山本 章嗣5, 表 弘志3, 野村 政壽1 & 森山 芳則2,3
- 九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学
- 岡山大学 自然生命科学研究支援センター
- 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 生体膜機能生化学研究室
- 味の素株式会社 イノベーション研究所
- 長浜大学 バイオサイエンス研究科