Research Highlights

分子間コントラスト:顕微鏡が作る見かけの画像

Nature Nanotechnology 2014, 1214 doi: 10.1038/nnano.2014.301

原子間力顕微鏡(AFM)のティップにCO分子を付着させることによって、数々の優れた知見がこの装置を用いて最近得られている。例えば、これを用いて、吸着した有機分子内部の個々の原子や結合が解像されたり、異なる種類の化学結合が区別されたりしている。さらに、この手法によって吸着種の間の水素結合を画像化できることも報告されている。しかし、アールト大学(フィンランド)とユトレヒト大学(オランダ)のP LiljerothとI Swartたちは今回、そうした分子間コントラストは実際にはアーティファクトである可能性を示唆している。

Liljerothたちは、金表面に吸着したビス(パラピリジル)アセチレン(BPPA)分子を調べた。この分子は、金表面で自己集合して四量体を作り、分子末端のピリジン環の窒素原子と水素原子の間の水素結合によって安定化される。さらに、こうした構造が形成されることで、向かい合った2つの分子の窒素原子が、それらの間に結合が全く存在しないのに極めて接近して配置されるようにもなる。末端にCOを付けたティップを用いて得られたこの四量体のAFM画像には、水素結合が存在するはずの領域に明らかな分子間結合が見られるが、水素結合が存在しないはずの2つの窒素原子の間の領域にも分子間結合が見られる。

Liljerothたちは、観察されたコントラストは、主にAFMティップ上のCO分子が曲がった結果であり、2つの分子間のポテンシャルエネルギー面の形状を捉える効果であると示唆している。この説明は、P Jelínekたちの理論的研究(Phys. Rev. B 90, 085421; 2014)とも一致している。

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