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糖尿病:細胞老化を標的にした糖尿病黄斑浮腫の新規治療法:前臨床および第1相試験の結果

Nature Medicine 30, 2 doi: 10.1038/s41591-024-02802-4

失明の恐れがある糖尿病黄斑浮腫(DME)などの糖尿病合併症では、血管内皮バリア機能の低下が重要な特徴の1つである。DMEに対する現在の標準的な治療は、頻繁な硝子体注射を必要とする上、大部分の患者においては有効性に乏しい。本論文において我々は、DMEの病態の主要な特徴は網膜内に老化細胞が蓄積することで引き起こされるという科学的根拠を示し、DME患者に対して老化細胞除去療法を世界で初めて行った。我々は、細胞培養モデルを用いて、持続的な高血糖によって血管内皮細胞に細胞老化が引き起こされ、バリア機能の低下を伴う経内皮細胞結合の乱れが生じ、微小炎症が誘導されることを示した。また、DMEのマウスモデルで老化細胞を薬理学的に除去すると、糖尿病によって誘導される網膜血管からの漏出を減少させ、網膜機能を温存した。次に我々は、抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)療法が既に有益でないと判断された進行期のDME患者において、老化細胞除去作用のある低分子BCL-xL阻害剤UBX1325(フォセルトクラックス)の第1相単回投与用量漸増安全性試験を行った。主要評価項目であるUBX1325の安全性と忍容性の評価は達成された。以上のように、BCL-xL阻害剤を用いて糖尿病患者の網膜における老化細胞を治療標的とすることは、DMEに対して長期に持続する疾患介入であることが示唆された。この仮説は、より大規模な臨床試験において検証される必要があるだろう。ClinicalTrials.gov識別番号: NCT04537884。

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