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ニューロモデュレーション:脳卒中後慢性期の運動機能リハビリテーションとして行う小脳への脳深部刺激 ― 第I相試験

Nature Medicine 29, 9 doi: 10.1038/s41591-023-02507-0

脳卒中後の上肢機能障害は、依然として治療上の大きな課題であり、神経調節治療の取り組みの対象となっている。今回の非盲検非無作為化第I相試験においては、中等度から重度の上肢機能障害が持続(1~3年)している12人について、小脳歯状核に対する脳深部刺激と新たな身体リハビリテーションの実施を併用する治療を行い、障害部位と同側の皮質の機能的な再編成の促進を検討した。手術前後および刺激に関連した重篤な有害事象は観察されず、参加者は上肢のFugl-Meyer運動機能評価で中央値7点の改善を示した。遠位運動機能が部分的に残存している登録者は全員が、脳卒中からの経過時間に関係なく、臨床的に意義のある最小の変化値(minimal clinically important difference:MCID)を上回り、上肢のFugl-Meyer評価で中央値15点の改善を示した。こうした確かな運動機能向上が、皮質の再編成と直接相関していることは、障害部位と同側の皮質の代謝上昇によって証明された。今回得られた知見は、小脳歯状核への脳深部刺激療法の安全性および実現可能性を裏付けており、またこの治療法は、機能障害になってから時間が経過していても、神経可塑性を調節して機能を回復させる有望なツールであることから、より大規模な臨床試験が必要であると考える。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT02835443。

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