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治療:多発性骨髄腫に対するBCMAあるいはGPRC5D標的免疫療法における抗原回避機構

Nature Medicine 29, 9 doi: 10.1038/s41591-023-02491-5

B細胞成熟抗原(BCMA)の標的の喪失は、抗BCMAキメラ抗原受容体T細胞(CAR T)療法や二重特異性T細胞エンゲージャー(TCE)療法に対する多発性骨髄腫(MM)の抵抗性を誘導するまれな事象であると考えられている。新たなデータでは、Gタンパク質共役受容体のGPRC5D(Gタンパク質共役受容体ファミリーCのグループ5メンバーD)タンパク質の発現低下が、抗GPRC5D CAR T療法後の再発時に高頻度で起こることが報告されている。我々はMM抗原回避を促進する腫瘍内因性因子を調べるために、抗BCMA療法あるいは抗GPRC5D CAR T/TCE療法、またはそれらの併用治療を受けた30人の患者について、バルクおよび一細胞の全ゲノム塩基配列解読とコピー数多型解析を組み合わせて行った。2症例では、TCE/CAR T療法後のMM再発は、再発時にTNFRSF17座位に局所的な両対立遺伝子欠失を有するBCMA陰性クローンによって、あるいはTNFRSF17の両対立遺伝子喪失を有する既存のサブクローンの選択的な増殖によって引き起こされていた。別の5つの再発例では、細胞表面でBCMAタンパク質の発現が検出できるにもかかわらず、新たに検出されたBCMAの細胞外ドメインの非切断型ミスセンス変異やインフレーム変異が、抗BCMA TCE療法の効果を阻害した。本研究ではまた、体細胞性事象によって複数のサブクローンでGPRC5Dが喪失した収斂進化を示す2症例を含む、抗GPRC5D TCE療法後のGPRC5Dの両対立遺伝子変異を有するMM再発の4症例についても報告する。BCMAやGPRC5Dの陰性クローンあるいは変異クローンの免疫選択は、標的治療後の再発の重要な腫瘍内因性のドライバーである。BCMAの変異事象は、異なる抗BCMA療法に対して異なる感受性を付与することから、MMにおける標的免疫療法の最適な設計や選択には、腫瘍抗原全体像を考慮することが重要性であることが明らかとなった。

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