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院内感染:集中治療室におけるClostridioides difficileの保菌と感染についての時系列ゲノムサーベイランス

Nature Medicine 29, 10 doi: 10.1038/s41591-023-02549-4

Clostridioides difficileは、感染予防への取り組みが強化されているにもかかわらず、依然として米国における医療関連感染の主要な原因となっている。現在の予防対策は、C. difficileを保菌しているが無症状であり、潜伏感染者として他の患者に感染させる恐れがある人を見つけ出せないために限界がある。無症候性保菌者によるC. difficile感染拡大への関与について理解を深めるために、米国内の集中治療室(個室隔離病室)で9カ月にわたって、入室時および毎日の検体を培養してC. difficileの経時的変化を追跡するスクリーニングを実施し、また、回収された全ての分離株について全ゲノム塩基配列解読を行った。入室患者の9.3%で少なくとも1つの検体から毒素産生性のC. difficileが検出されるという高い保菌率であったにもかかわらず、交差感染によりC. difficileを獲得したのは、個室入室時に培養検体が陰性だった患者のわずか1%にすぎなかった。入室時に毒素産生性のC. difficileを保有していた患者が他の患者を感染させるリスクは最小限のレベルであったが、これらの患者が医療機関でC. difficile感染症を発症するリスクは、非保菌者に比べて24倍高かった。これらの知見を総合すると、現在の感染予防対策がC. difficileの院内交差感染を予防するのに有効であること、そして病院におけるC. difficile感染をさらに減らすには、無症候性保菌から感染への移行の過程に特化した介入が必要であることが示唆された。

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