Brief Communication

リンチ症候群:免疫チェックポイント阻害療法を受けたリンチ症候群患者に見られる腫瘍のリスク

Nature Medicine 29, 10 doi: 10.1038/s41591-023-02544-9

転移性で限局性のミスマッチ修復異常(dMMR)の腫瘍は、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)に対する感受性が極めて高い。リンチ症候群(LS)の患者に対して、ICBがdMMRの悪性腫瘍や前がん状態の腫瘍の発生を予防できるかどうかは明らかでない。がんに罹患したLS患者で、1サイクル以上のICB治療を受けた172人のうちの21人(12%)は、ICBを受けた後に悪性腫瘍を生じ、その悪性腫瘍の91%(29/32)はdMMRであり、発生までの期間の中央値は21カ月(四分位範囲、6〜38)であった。ICB治療を受けた患者で、その後サーベイランスの大腸内視鏡検査を受けた61人のうちの24人(39%)は、前がん状態のポリープを有していた。ICB前の期間と、対応するICB後の経過観察期間で比較した場合、全体の腫瘍発生率に変化はなかったが、サブグループ解析によって、ICB後の内臓腫瘍の発生率は減少していることが観察された。これらのデータは、LS関連腫瘍のICB治療が新たな腫瘍発生のリスクを低減しないことを示唆しており、LS特異的なサーベイランス戦略が続けられるべきであることが示された。これらの結果は、免疫学的予防戦略に示唆を与えるとともに、dMMR腫瘍の免疫生物学的知見を提供するものである。

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