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アルツハイマー病:軽度アルツハイマー病における老化細胞除去療法 ─ 第1相実行可能性試験

Nature Medicine 29, 10 doi: 10.1038/s41591-023-02543-w

細胞老化はアルツハイマー病(AD)の発症機序に関わる。今回、概念実証のための非盲検第I相臨床試験で、初期段階の症候性AD患者を対象に、ダサチニブ(D)+ケルセチン(Q)の経口投与による老化細胞除去療法について、中枢神経系(CNS)浸透性、安全性、実行可能性、有効性を評価した。5人の参加者(平均年齢は76 + 5歳、40%が女性)が12週間のパイロット研究を完了した。血中のD値とQ値は全ての参加者で上昇した(Dは12.7~73.5 ng ml−1、Qは3.29~26.3 ng ml−1の範囲)。D値は、4人の参加者(80%)の脳脊髄液(CSF)中で検出され(0.281~0.536 ng ml−1)、その対血漿中濃度比は0.422~0.919%であった。一方、QはCSF中では検出されなかった。この治療の忍容性は良好で、早期の中止はなかった。認知機能および神経画像の副次評価項目については、ベースライン時と治療後で有意な差異が見られず、良好な安全性プロファイルがさらに裏付けられた。インターロイキン6(IL-6)とグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)のCSFレベルは上昇し(IL-6についてt(4)= 3.913、P = 0.008、GFAPについてt(4)= 3.354、P = 0.028)、また、老化に関連するサイトカインやケモカインは減少する傾向があり、Aβ42値は上昇する傾向があった(t(4)= −2.338、P = 0.079)。まとめると、DのCNSへの浸透が観察され、AD患者での安全性、忍容性、実行可能性を裏付ける結果が得られた。バイオマーカーのデータから、老化細胞除去の効果についての機構的な手掛かりが得られ、これは、完全な検出力を持つプラセボ対照試験で確認する必要がある。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT04063124。

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