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がん治療:進行肝細胞がんでのアテゾリズマブとベバシズマブの併用の臨床的奏効と抵抗性に相関する分子

Nature Medicine 28, 8 doi: 10.1038/s41591-022-01868-2

アテゾリズマブ(抗PD-L1薬)とベバシズマブ(抗VEGF薬)の併用療法は、切除不能な肝細胞がんの患者の新しい標準治療となっている。しかし、予測バイオマーカー候補や奏効と抵抗性の機構はまだ十分には解明されていない。本論文では、GO30140第1b相試験もしくはIMbrave150第3相試験に登録され、アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法、アテゾリズマブ単剤療法あるいはソラフェニブ(マルチキナーゼ阻害剤)による治療を受けた肝細胞がん(HCC)の患者358人から得られた腫瘍試料の統合的な分子解析の結果を報告する。既存の免疫(CD274の高発現、エフェクターT細胞のシグネチャーおよび腫瘍内CD8+ T細胞密度)は、併用療法による良好な臨床転帰と関連していた。臨床的有益性の低下は、エフェクターT細胞(Teff)に対する制御性T細胞(Treg)の割合の高さや、がん胎児遺伝子(GPC3AFP)の発現と関連していた。アテゾリズマブ単剤療法の転帰と比較した場合の併用療法による転帰の改善は、VEGF受容体2(KDR)の高発現、Tregシグネチャー、骨髄炎症シグネチャーと関連していた。これらの知見は、治療の前後の生検試料ペアの解析、in situ解析とin vivoマウスモデルによって立証された。我々の研究は、この併用療法と関連する重要な分子を明らかにしたもので、また抗VEGF薬が血管新生、Treg増殖、骨髄細胞による炎症を標的とすることで、抗PD-L1薬と相乗効果を発揮する可能性を明確に示している。

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