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心機能障害:駆出率が改善された心不全でのダパグリフロジンの影響 ― DELIVER試験の事前指定解析

Nature Medicine 28, 12 doi: 10.1038/s41591-022-02102-9

心収縮機能異常の指標である駆出率(EF)の低下した心不全症例は、適切に治療すればその駆出率が改善する場合が多い。駆出率の改善した心不全(HFimpEF)に分類される心不全症例数は増え続けているが、そのような症例の臨床管理について得られるデータは限られている。その大きな理由は、このようなHFimpEF症例はイベント発生率が高いために、心不全に関係するイベントをエンドポイントとした先行試験から除外されているからである。DELIVER試験の事前指定解析(NCT03619213)では、症候性心不全で左室駆出率が40%超の合計6263人の参加者のうち、1151人(18%)がHFimpEF(駆出率が40%以下から40%超に改善した患者と定義される)に分類された。選択基準に合致した症例は、毎日10 mgのダパグリフロジン投与群またはプラセボ投与群に無作為に割り当てられ、試験の主要評価項目は、心血管死または心不全悪化(心不全による入院または緊急外来)の複合とした。HFimpEFの参加者は、駆出率が一貫して40%以上の参加者と同等のイベント発生率を示した。HFimpEF症例では、ダパグリフロジンは主要複合転帰(ハザード比〔HR〕= 0.74、95%信頼区間〔CI〕=0.56–0.9)、初回の心不全悪化事象(HR = 0.78、95% CI = 0.61–1.14)、心血管死(HR = 0.62、95%CI = 0.41–0.96)と総心不全事象の悪化(率比 = 0.68、95%CI = 0.50–0.94)を、駆出率が一貫して40%以上の症例と同程度に低下させた。これらの結果は、症候性のHFimpEF症例には、以前に策定されたガイドラインに基づく治療法にSGLT2(sodium/glucose cotransporter 2)阻害剤を追加することが有効であり、罹患率と死亡率をさらに低下できる可能性を示唆している。

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