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腸内細菌相:健康な乳児は食物アレルギーを防止する腸内細菌を持つ

Nature Medicine 25, 3 doi: 10.1038/s41591-018-0324-z

西洋化した社会では、生命を脅かすこともある食物アレルギーが世代ごとに著しく増加してきている。有病率のこのような上昇を説明する仮説の1つは、抗生物質の誤用、食餌の変化、帝王切開出産や人工乳哺育の割合の上昇などの21世紀のライフスタイルが腸内細菌群集を変化させたというものである。出生直後の変化はことに有害となる可能性がある。我々は、共生細菌がヒトで食物アレルギーを調節する仕組みの解明を進めるために、健康な乳児、あるいは牛乳アレルギー(CMA)の乳児由来の糞便を無菌マウスに移植し定着させた。健康な乳児由来の細菌を定着させた無菌マウスでは、牛乳アレルゲンに対するアナフィラキシー反応が防止されたが、CMAの乳児由来の細菌を定着させた無菌マウスでは防止されないことが分かった。ヒトドナー、および細菌相を定着させたマウスの両方で、健康集団とCMA集団は細菌組成の違いによって区別できた。健康な乳児由来の細菌を定着させたマウスとCMAの乳児由来の細菌を定着させたマウスでは共に、回腸上皮で独特のトランスクリプトームシグネチャーが見られた。健康な乳児由来の細菌を定着させたマウス、あるいはCMAの乳児由来の細菌を定着させたマウスの回腸で発現が上昇している遺伝子と回腸細菌の間に見られる相関から、クロストリジウム種であるAnaerostipes caccaeが食物へのアレルギー反応を防止することが突き止められた。我々の知見は、食餌性抗原に対するアレルギー反応の調節に腸内細菌が重要な役割を持つことを実証したもので、細菌群集を調節する介入は食物アレルギーの治療に関係してくる可能性がある。

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