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うつ病:ヒトのうつ病における性特異的な転写シグネチャー

Nature Medicine 23, 9 doi: 10.1038/nm.4386

大うつ病性障害(MDD)は世界中で疾病負荷の主な原因となっている。MDDの罹病率、症状、治療の全てが性による大きな差異を示唆しているが、このような性的二型性の基盤となる分子機序についてはほとんど解明されていない。本論文では、発現差異解析と遺伝子共発現ネットワーク解析を組み合わせて、MDDに関連する男女の転写プロファイルについての包括的な特性解析を6つの脳領域にわたって行った。我々が得たヒトの転写プロファイルを、慢性変動ストレス刺激下にあるマウスモデルのプロファイルと重ね合わせ、収束する経路を利用して男性および女性でのストレス感受性表出の基盤となる分子機構および生理学的機構を明らかにした。今回の結果によって、MDDで起こる転写パターンの重要な再編成が明らかになり、これは男女間での重なりが限られていて、こうした影響はうつ病状態のヒトとストレス下のマウスの両方で見られた。我々はMDDの基盤となる性特異的遺伝子ネットワークの重要な調節因子群を明らかにし、それらの性特異的な影響がストレス感受性のメディエーターであることを確認した。例えば、マウスの雌特異的なハブ遺伝子Dusp6の前頭前皮質での発現低下は、ERKシグナル伝達および錐体ニューロンの興奮性亢進によって女性のストレス感受性を模倣するが、男性のそれは模倣しない。Dusp6のこのような発現低下はまた、うつ状態の女性の前頭前皮質で起こる転写パターンリモデリングを再現した。まとめると今回の知見は、MDDにおける転写レベルの顕著な性的二型性を明らかにしていて、この疾患に対する性特異的な治療法研究の重要性をはっきり示している。

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