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血管恒常性:Plk1は有糸分裂後の平滑筋細胞の収縮を調節し、血管恒常性に必要である

Nature Medicine 23, 8 doi: 10.1038/nm.4364

PLK1(Polo-like kinase 1)は細胞分裂に必須の調節因子であり、最近ではがん治療の標的として臨床評価が行われつつある。今回我々は、Plk1が心臓血管恒常性の維持に予想外の機能を果たすことを報告する。マウスでのPlk1ハプロ不全は細胞増殖に明らかな異常を生じることはなかったが、動脈に構造変化を引き起こし、これが大動脈破裂と死亡につながることが多かった。血管平滑筋細胞(VSMC)特異的にPlk1を除去すると、in vivoで動脈の柔軟性が失われ、低血圧症が発症し、アンギオテンシンIIに対する動脈の応答が損なわれた。機構としては、Plk1は有糸分裂に依存しない様式で、VSMCでのRhoAのアンギオテンシンII依存的活性化とアクトミオシンの動態を調節することが分かった。この調節はPlk1のキナーゼ活性に依存しており、アンギオテンシンIIを投与したマウスにPlk1の低分子阻害剤を与えると、動脈の健全性が低下し、動脈瘤や大動脈破裂のリスクが上昇した。従って我々は、Plk1活性の部分的低下(細胞分裂を阻害しない程度の)は大動脈恒常性を損なうと考えている。今回の知見は、がん治療のためのPLK1阻害を狙った最近の手法に重要な意味を持つ。

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