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大腸がん:ヒト誘導多能性幹細胞から作られた大腸オルガノイドを使った大腸がんモデル作製と薬剤評価

Nature Medicine 23, 7 doi: 10.1038/nm.4355

我々はヒト大腸疾患のモデル作製を目的として、分化させたヒト胚性幹細胞(hESC)や誘導多能性幹細胞(iPSC)から大腸オルガノイド(CO)を作出する実効的なプロトコルを開発した。遺伝子プロファイリングおよび免疫組織化学的な大規模プロファイリングによって、誘導されたCOは大腸的な性質を示し、小腸的ではないこと、幹細胞や有限増殖細胞、杯細胞や内分泌細胞などの予想される範囲内の分化細胞を含んでいることが明らかになった。我々はこの手法を用いて、WNTシグナル経路調節因子のAPCをコードする遺伝子に生殖細胞系列変異を持つ家族性大腸腺腫症患者に由来するiPSC(FAP-iPSC)を使って、WNT活性の亢進と上皮細胞増殖亢進を示すCOを作製し、これを薬剤評価のプラットフォームとした。強力な2種類の化合物であるXAV939とラパマイシンは、このFAP-COで細胞増殖を低下させたが、野生型COでも細胞増殖に影響を示したので、治療での使用は制限されることが分かった。対照的に、リボソームに結合して翻訳で「リードスルー」を引き起こす活性を持つ抗生物質ジェネティシンは、異常なWNT活性を効率よく標的とし、APC変異型FAP-CO特異的に正常な増殖を回復させることが分かった。今回の研究結果は、ヒトCOを作製する有効性の高い方法を示しており、こうしたCOは疾患モデル作製や大腸疾患用の新薬開発に使用できるだろう。

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