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嚢胞性繊維症:チモシンα1は嚢胞性繊維症の単一分子治療薬の有望な候補である

Nature Medicine 23, 5 doi: 10.1038/nm.4305

嚢胞性繊維症(CF)は、嚢胞性繊維症膜貫通調節因子(CFTR)をコードしている遺伝子に変異が生じて塩素イオンチャネル機能が損なわれることが原因である。最も広く見られる変異のp.Phe508delの場合は、誤って折りたたまれたCFTRタンパク質が生成する。この変異型タンパク質にはチャネル活性が残存しているが、タンパク質は成熟する前に分解されてしまう。CFの発症機序は本来的に複雑であって、塩素イオン透過の障害や肺の持続的な炎症などが含まれる。そのため、有効性の高いCF治療には複数の薬剤の使用が必要となる。CFに対してはこれまで、多面的な有効性を示す単剤はなかった。チモシンα1(Tα1)は天然に存在するポリペプチドの1つで、アジュバントや免疫療法薬として臨床使用されて、優れた安全性が報告されている。今回我々は、Tα1がCFマウスだけでなく、p.Phe508del変異を持つ患者由来の細胞でも、複数の組織で異常を修正できることを報告する。Tα1は、CFの総合的症状に対して望ましい影響を及ぼす2つの性質、すなわち炎症の軽減と、CFTRの成熟促進と安定性や活性の増強という性質を併せ持つ。このために、Tα1はCFに対して有効性の高い単一分子治療薬となる可能性が高いと考えられる。

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