Editorial

併用療法を合理的に扱う

Nature Medicine 23, 10 doi: 10.1038/nm.4426

併用療法についての臨床試験で、現在登録されて実施中のものは米国だけで1万件を超え、その対象はがん、感染症、代謝性疾患、心血管疾患、自己免疫病から神経疾患まで多様である。そして、薬剤の検証可能な組み合わせについて行われる前臨床研究はさらに膨大な数となる。併用療法は単剤を個々に使用した場合よりも良い応答が得られれば成功と見なされる。薬剤の併用で重要な問題になるのは主に相乗効果で、これを評価するには、薬剤を併用した際と単剤を投与した際の評価だけでなく、以前に報告されている組み合わせとの比較も必要になり、このような複数の比較を1回の臨床試験に組み込むのは非常に難しく、試験は複雑なものとなることが多い。また、非小細胞肺がんのがん免疫療法薬について行われたMYSTIC試験のような特許薬が関わるものでは、規制、資金、ロジスティクスなどの問題も避けられない。しかし、薬剤の効果について、他の薬剤と併用した場合にどのような効果がどの程度見られるのかを評価することは、薬剤開発や疾患治療におけるルーティンになりつつある。併用療法の比較検証という難しい臨床試験が労力の無駄使いということにならないようにするには、前臨床試験段階での知見を評価するための明確な基準の設定や、最も有望な臨床試験候補を選び出すためのシステム生物学の手法をフルに使ったモデリングなどのインテリジェントな研究設計が有用となるだろう。そして、こうした研究は薬剤の相乗効果の生物学的機序の解明に関する知見にもつながるはずだ。

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