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神経再生:3K3A-活性化プロテインCはマウスで虚血後ニューロンのヒト神経幹細胞による修復を誘発する

Nature Medicine 22, 9 doi: 10.1038/nm.4154

活性化プロテインC(APC)は血液プロテアーゼで抗凝固活性や細胞シグナル伝達活性を持ち、こうした活性は、プロテアーゼ活性化受容体1(F2R、別名PAR1)やF2RL1(別名PAR3)の非カノニカルな切断を介した活性化によっている。APCの3つのLys残基(KKK191-193)がアラニンに置換された3K3A-APC(Lys191-193Ala)変異体のようなAPCの組換えバリアントや、正常な細胞シグナル伝達活性は維持されているがAPCに関連する出血リスクを低下させるように改変されて抗凝固活性が低下(> 90%)しているその他の変異体は、虚血性脳卒中、脳外傷、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、敗血症、心臓・腎臓・肝臓の虚血再潅流傷害、肺・腎臓・胃腸の炎症、糖尿病、全身への致死的放射線照射の前臨床モデルで有益な働きをすることが明らかになっている。3K3A-APCは、概念実証研究とヒトでの優れた安全性プロファイルに基づいて、虚血性脳卒中の神経保護薬として臨床試験に進んでいる。最近、3K3A-APCがin vitroでPAR1-PAR3-スフィンゴシン-1-リン酸受容体1-Akt経路を介して、ヒト神経幹・前駆細胞(NSC)によるニューロン産生を誘発することが示され、APCを用いる治療がヒト中枢神経系(CNS)の構造修復に使える可能性が示唆された。今回我々は、マウスでの虚血後かなりの時間が経ってからの3K3A-APC投与が、移植ヒトNSCによるニューロン産生を誘発し、神経回路の回復を促進し、機能的回復を改善することを報告する。従って、生着したNSCからのニューロン動員の3K3A-APCによる増強は、脳卒中やそれに関連する神経学的疾患の治療のための新しい手法になるかもしれない。

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